#1〜ストームキャストとの遭遇〜

朝びらきの征戦で破壊された街、エクセルシスからやや南。
アンドールの地下にスケイヴンは潜み、根を張り、常に陰謀を企てている。
スクライアの若きウォーロック・エンジニア、スーキノックは、モールスキッターの古の意志を受け、ソンディアへと歩みを進めていた。
「オレがやがて荒廃卿になル、そう、そうだ!」
スーキノックと、彼が率いるスーキノック動物園メナジェリーは、その小さな胸に大きな野望を秘めていた。

アンドールの北、ドンセの名残…
「早く歩ケ、早ク、早ク!」
無人の荒野に、耳障りな声が響き渡った。
その声の主、スケイヴンネズミ人間の彼は、その名をスーキノックといった。
「我ガ主、そんなに走ラナくてモ、誰もいなイぞ」
汚らしく唾を飛ばす彼に、辟易したスクライア信奉者アコライトのフェルツウィッチが抗議の声を上げた。
彼らは数歩歩くごとにこのやりとりを続け、そのたびにスーキノックの偉そうな声を聞いてはストレスを溜めていた。
結果、アコライトたちは無言で歩きながら、スーキノックに対してその手に握る毒ガス爆弾ポインズンウィンドグローブを浴びせる機会を今か今かと待ち望んでいた。
「そう、否、否、我ラは手柄を立テ、あの巨大なる魔術師アークウォーロックを追い落トスのダ!」
しかし、スーキノックもエンジニアまで上り詰めただけあり、そう易々と隙を見せるわけもなく、アコライトたちの願望は妄想の中で完結することとなる。
ドンセの名残には太陽が燦々と照りつけ、アコライトたちや、歪み稲妻砲台ワープライトニング・キャノンを押すクルー達の体力を容赦なく奪っていく。
かじり穴を通って本拠地スケイヴンブライトに帰り、地底採掘歪み機ワープグラインダーを持つ部隊を借りた方が早いのでは?
アコライトの1匹ージルキンというーが、自分の天才的な発想に歓喜した時
「なんダ?!あれハ!」
そのすぐ前を歩いていたヘルキークが何かを見つけたようで、金切り声を張り上げた。
スーキノックはアコライトを嵐の如き戦斧ストームケージ・ハルバートで押し退けると、すぐさまゴーグルに付けられたレンズを回した。
ゴーグルに備え付けられた望遠機能が、すぐさまそれが敵のストームキャスト達であることを知らせてくる。
「敵、敵ダ!ダが、そコを離れル訳にはいかヌ」
スーキノックは辺りに声を張り上げ、モウルダーの調教師パックマスターから渡された鞭を腰から外し、その横を走るおぞましき怪物へと叩きつける。
イチゴウと名付けられたそれはヘルピット・アボミネイションと呼ばれ、幾多のスケイヴンを繋ぎ合わせて作られた生体兵器だ。
スーキノックの手勢は、このヘルピットアボミネイションが1頭、アコライトが5匹、ワープライトニングキャノンが1門で全てだった。
手柄をあげればスケイヴンブライトで全力の補充はできるだろう。
しかし、今の彼にはこれだけを動かすのが精一杯なのだ。
それが徹底的な階級社会であるスケイヴンの世界での彼の力だった。
「だガ、敵はこちラニ来ル!」
ヘルキークが恐慌に陥り、キィキィと悲鳴をあげた。
スーキノックは落ち着きを保ったまま、目的を思い出す。
この地には、未発掘の歪み石ワープストーンが埋まっている。
数ヶ月前にこの地を調査したウォーロック・エンジニアのリーチドッグはそう結論づけた。
スーキノックは密かにリーチドッグを暗殺すると、そのワープストーンを集めて手柄を上げて、あわよくばドンセの名残に眠るドログルクの遺産も手中に収めようと画策したのだ。
それだけのワープストーンがあれば、どれだけの出世ができるだろうか。
それを言えば周りのスケイヴンに手柄を取られかねない。
スーキノックの野望に満ちた欲望は、シグマーの神命を帯びたストームキャストたちによって現実の破滅への道を開いた。
しかし!
ここでストームキャストによって手勢が死んでも、採掘さえ済んで仕舞えばよい。
なんなら、部下達が差し違えて死ねば、自分の手柄を横取りするものもいないではないか!
「逃げルことは許サヌ、戦エ!」
一瞬の間にそう結論付けると、スーキノックは素早く下知を下す。
その時、スーキノックはそのロードセレスタントと目があった気がした。
それはエクセルシスを守れなかったストームキャストの憎悪の目であった。
(オレは何もしてなイ!悪いのハあの破壊者デストラクションの奴らだ)
心の中で責任を押し付けると、近くにある廃墟に隠れるように部下を動かす。
彼の部下達は、茹だるような暑さに不平を漏らしながらも移動を始めた。
地平の彼方では、ストームキャストたちがスケイヴンを食い破らんと疾走していたが、なんとか敵の機動部隊が辿り着く直前に廃墟の裏へとたどり着いた。
そして害獣の主ヴァーミンロードから教えられた偉大なる魔法でかじり穴を出現させた。

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