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表紙とタイトルに騙されて読まないなんてもったいないラノベの話

さくら荘のペットな彼女』(さくらそうのペットなかのじょ)は、鴨志田一著の日本ライトノベルイラスト溝口ケージが担当している。2012年10月から2013年3月までテレビアニメが放送された[3]。2013年10月時点でシリーズ累計発行部数は180万部を記録している[4]

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この作品の主人公は男子高校生の神田空太。
さくら荘という学生寮に暮らしている。

この寮で暮らす生徒の共通点は、何か問題を起こして一般寮を追い出されていること、そして、夢や目標に向かって邁進していることだ。

例えば、ヒロイン(の一人)である椎名ましろは漫画家を目指している。

イギリスで有名な天才画家でありながら、日本の漫画が好きで、周囲の反対を押し切って日本に乗り込んできた。
漫画家としてデビューするために新人賞に応募する原稿を、毎日徹夜で書いている。
主人公の空太はその姿に影響を受け、なんとなく目を背けていた夢であるゲームクリエイターを本気で目指すこととなる。


ある日、応募した新人賞の結果を知らせる着信がましろの携帯に入った。
ましろが電話を終えてから、空太に結果を告げる。

 空太も美咲も、七匹の猫たちも、沈黙を守るましろを見ていた。
 ケータイを握ったましろの手がだらりと下がる。
「選考、外れたって」
 ましろの声が、やけに遠く聞こえた。異国の言葉を耳にしたような感覚。脳が言葉を理解してくれない。

『さくら荘のペットな彼女』鴨志田一

毎日徹夜して頑張っているのを見ていた仲間の漫画が、新人賞の一次選考から外されたことを聞かされた。そんなとき、自分ならどう思うだろうか。
空太の思いは、こうだった。

 なんなんだこれは。どうしてなんだ。なんで、こんな気持ちが胸の中にいる。
 落選した。ましろは、落選したんだ。
 通過すればいいと思っていた。賞を取れることを願っていた。なのに、今、自分は何を考えている。この体はどう反応した。
…(中略)…
 誰にも見られたくなかった。知られたくなかった。
 自分が、ましろの落選を聞いて、ほっとしたことなんて……。
…(中略)…
 自分はましろを応援していた。賞を取ってほしかった。あのがんばりが報われてほしいと思っていた。
 そうだと信じていた。
 なのに、さっきのあれはなんだったんだ。なんで、ましろの落選に安心したんだ。
 他人の不幸を喜ぶなんて、それも、ましろの落選に安堵するなんてどうかしている。どんだけ醜い人間だ。
「最悪だ……」
 顔を覆ってうな垂れる。泣きたい。消えてしまいたい。こんな自分を殺してしまいたい。
「何が最悪だって?」
 驚いて顔を上げると、隣のタイヤの上に仁が立っていた。

『さくら荘のペットな彼女』鴨志田一

安堵したのは、たぶん、ほんの一瞬なんだよね。わかる気がする。


この作品を読んでいると、高校生の主人公のまっすぐな心理の描写に心打たれることが多い。

この作品では、かなりはっきりと天才凡人が対比して描写される。
ライトノベルというジャンルの特性上、非現実的な要素を多少含むくらいの天才を作品に登場させることができる。

この作品では、かなりはっきりと天才凡人が対比して描写される。
凡人が天才の才能に苦しまされるばかりでなく、天才にも天才ゆえの孤独や苦悩が解像度高く描写される。

この作品では、かなりはっきりと天才凡人が対比して描写される。
天才と凡人が助け合って成長していくストーリーがわくわくして、何度も読み返したくなる。

この作品では、かなりはっきりと天才凡人が対比して描写される。
ラブコメには詳しくないけれど、圧倒的な天才ヒロインの人間離れした魅力と、圧倒的凡人ヒロインがぐちゃぐちゃになりながら進む姿勢に心打たれる。

今回引用したのは1巻のシーン

アニメはAbemaTVで視聴可能。今回引用したのは4話のシーン。


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