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外国為替相場のファンダメンタルズ分析について

いわゆる「相場」を予測する手段は、大きく分けて2つに分類できます。

1つは、過去から現在までのチャート(ローソク足)の動向から相場を分析して予測するテクニカル分析。

もう1つは、投資対象となるもの自体や、それを取り巻く経済や社会のあらゆる諸条件・状況などから相場を予測するファンダメンタルズ分析です。

その上で、各国の政府およびその通貨当局、中央銀行などが発行する通貨(法定通貨)を取引(売買)の対象としていく外国為替相場においては、圧倒的に『ファンダメンタルズ分析』が有効となります。

外国為替相場において取引の対象となる通貨(法定通貨)の取引レートは、その通貨を発行する国家(発行主体)の動向に、決定的な影響を受ける傾向があるからです。

ファンダメンタルズ分析は、まさにそのような諸要因を分析するものに他なりません。

つまり、外国為替相場の予測においては、そのような諸要因を対象とするファンダメンタルズ分析が必要不可欠ということです。

外国為替相場の攻略には「ファンダメンタルズ分析」が不可欠。


ただ、外国為替相場を対象とする「投機(俗に言うFX)」を行っているトレーダーの多くは、どちらかと言うと「テクニカル分析」に比重を置いている人が多い傾向にあります。

ですが、そのようなFXトレーダーの大多数は、外国為替相場(FX)で勝つことができずに「負けている」のが実情です。

要するに「テクニカル分析」で、外国為替相場の動向を予測するものの、その予測がことごとく「上手くいっていない」ということです。

これはまさに外国為替相場が、チャートの動向などからテクニカル分析によって読み取れる売買の傾向、その偏りなどから、次の相場の動向が決まっている傾向には無いことを意味しています。

そして、その理由は外国為替相場において「取引」の対象となる通貨(法定通貨)の取引レートは、その「発行主体(その通貨を発行する国の政府や通貨当局、中央銀行など)の動向」に決定的な影響を受けていることに起因しています。

ゆえに、外国為替相場の予測においては、そのような要因を対象とするファンダメンタルズ分析が不可欠なのですが、外国為替相場の分析は、いわゆる「株式投資」を前提とするようなファンダメンタルズ分析とは全く勝手が異なるものになっています。

株式投資において、実際にファンダメンタルズ分析を行った上で、実際の投資対象とする銘柄を判断しているような投資家は少なくありませんが、

・どの企業が発行している株を買うか(売るか)
・どの国が発行している通貨を買うか(売るか)

これらは実際のところ、全く異なる分析要因が対象になるため、外国為替のファンダメンタルズ分析は、株式投資におけるファンダメンタルズ分析よりも、遥かに難易度が高い傾向にあります。

これはまさに「株で成功している(稼いでいる)」という人に比べて「FXで成功している(稼いでいる」という人が圧倒的に少ないことを裏付けていると思います。

外国為替では何を分析するべきなのか。


それこそ株式投資におけるファンダメンタルズ分析であれば、その「株」を発行している企業の現在価値(資産価値)や、その将来性(今後の業績の見通し)などを分析できるものとして、

・現在の資産状況(資産状況の推移)
・現在の業績(売上高・収支の推移)

このような確固たる分析材料が存在し、株式の売買を株式市場で行える上場企業であれば、その詳細が分かる資料(貸借対照表、損益計算書など)がそのまま公開されています。

ですが、外国為替における「通貨」においては、その発行主体である国家単位で、上記のようなものを把握し、それを算定すること自体が難しいものになっています。

そもそも「一国の資産状況」というもの自体が、国家所有の国営の土地や金融資産のみを対象とするのか、その国における民間の所有資産も含めて考えべきか、という問題が浮上します。

何より、株式会社が発行する「株」においては、その企業の所有権限の一部であり、そうであるからこそ、その企業の所有する資産は、実質的に株主のものという考え方が成り立ちます。

だからこそ、その企業の資産状況が分かれば、一株あたりの資産価値も算定できるわけです。

ですが、その国の政府や通貨当局、中央銀行などが発行している「通貨」を所有しているからと言って、その国の国有の土地や国営企業の一部を所有している事にはなりません。

そういった点においても、株式会社が発行する株の価値(株価)を算定する基準と、国家が発行する通貨の価値(為替レート)を算定する基準は、その根本的な視点が全く異なるということです。

GDP(国内総生産)や経常収支(貿易収支)は有効な判断材料になるのか。


ただ、企業で言うところの「業績」にあたるものを国家単位に置き換えるなら、以下のようなものが、企業で言うところの「業績」に該当するものになります。

・GDP(国民総生産)
・経常収支(貿易収支)

とは言え、外国為替相場の現実として、GDPが大きい国や、GDPが伸びている国、および経常収支が大きく黒字になっている国の通貨が必ずしも高くなる(通貨高になる)わけではありません。

企業が発行する「株価」においては、業績が大きく上向いている企業の株価が下がっていくということはまずありえません。

ですが、外国為替相場に関して言えば、この「業績」にあたる部分に関してさえも、そう単純なものではないということです。

加えて外国為替相場は「異なる通貨の交換レート」という点も、その分析を複雑なものにする要因となっています。

このように、株式相場との比較の上では「一筋縄ではいかない要因」が複雑に絡み合っています。

そうであるからこそ、自己資金を長期的に「運用」していくことを前提としている投資家においても、株式投資を行っている人に比べて、外国為替を投資の対象にしている人はそう多くはありません。

それこそ外国為替においては、FXによるデイトレードなどの短期的な「投機」を行っているトレーダーの方が多いのが実情ではないかと思います。

ただ、そのような「投機」を行っているトレーダーの多くは、外国為替相場では通用しにくい「テクニカル分析」を行っているため、その大多数の人がことごとく負け続けているわけです。

それこそ「FX」においては、有用性の薄い情報コンテンツ(ノウハウ・ツールなど)が巷に溢れているのが実情であり、そのほとんどが「テクニカル分析」を前提とする取引手法となっています。

このようなものにきっかけとして外国為替相場(FX)に参入する人も決して少なくは無いため、結果的に、FXで大きな損失を被ってしまう人が後を絶たないのだと思います。

「通貨」の投資需要と非投資需要。


例えば株式市場における「株の売買」においては、その全てが利益を追求した上で行われているものであり、その全てが「投資」や「投機」を前提とする売買となっています。

ですが、外国為替市場における「通貨の取引(売買)」は、必ずしも、その全てが「投資」や「投機」を前提とするわけではありません。

各国が発行している通貨には、その通貨そのものに「用途」があるため、純粋にその通貨を必要とする「需要」があるからです。

よって、外国為替市場で取引されている「通貨」は、投機や投資を前提とする需要(投資需要)に伴う売買だけではなく、それらとは異なる需要(非投資需要)に伴う売買も併せて行われています。

外国為替相場においては、そのような「投資需要に基づく通貨の売買(為替取引)」と「非投資需要に基づく通貨の売買(為替取引)」の両方を捉える必要があるということです。

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そのような「投資需要に基づく通貨の売買(為替取引)」と「非投資需要に基づく通貨の売買(為替取引)」は、主に以下のようなものに分類できます。

・入国者・出国者による通貨交換(非投資需要に基づく売買)
・貿易業者などの商取引による通貨交換(非投資需要に基づく売買)
・政府・中央銀行による為替介入(非投資需要に基づく売買)
・デイトレーダーなどによるFX会社を介した取引(投資需要に基づく売買)
・金利差収益、海外投資などを目的とした取引(投資需要に基づく売買)

上記については、以下の記事でそれぞれの詳細も含めた形で詳しく考察していますので、こちらの記事も併せて参考にしてください。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。


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