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青いメロディーが鳴っている

梅津晃大がついに戻ってきた。
いや、戻ってきて1ヶ月、ついに復活の白星を手に入れた。

梅津が1軍の舞台で華々しいデビューを飾った2019年。プロ初先発、初勝利を手にしたのは今日と同じ阪神戦、場所は本拠地・名古屋だった。ルーキーイヤーはプロ初登板から連続して3勝を含む4勝を挙げ、翌年以降に大きな期待感を残した。

ところが2020年から思うようにいかなかった。開幕ローテーション入りを果たし、勝利を手に入れたものの登板ごとの調子の波が大きく、どうも乗れない。

そして8月2日。10イニング0失点完投という衝撃と肘の痛みを残し、シーズンを終えた。

2021年は背番号を18に変更して臨むも、わずか3試合の登板に終わった。6月5日のオリックス戦に先発し、2回で5四球を与え、無安打ながら降板し2軍落ち。9月まで投げることができなかった。
若くしてボロボロの身体が限界を迎えた2022年のキャンプ。そしてトミージョン手術。それでも球団はオフに梅津を育成契約にせず、背番号18も剥奪しなかった。

全てはこの日のために

5月に2軍戦で復帰を果たすと、そこから徐々にペースを上げ6月の登板では2試合続けて106球、108球と球数を投げることもできた。その後軽い故障で離脱があったが、9月になり1軍のマウンドに戻ってきた。
故障明けの登板1試合での1軍昇格には疑問や不安の声も挙がっていたが、結果で黙らせた。6回を投げ1失点。自身のエラーで自責点にはならなかったもののこれが決勝点になり敗戦投手となってしまった。
だが、見る者全てを虜にする梅津のピッチングが帰ってきたことに私は嬉しさを抑えられなかった。

そして9月25日。台風の中止がなければこの日が本拠地最終戦だった。
マウンドに上がった背番号18は、過去の登板に比べるとストレートの球速は若干控えめで奪った空振りや三振も少なかった。しかし、終わってみれば8回107球1失点。カメラに映る梅津の姿はまさに今日の主役だった。全てはこの日のために、この景色を取り戻すためにあった。お立ち台で笑顔を見せる26歳にぐっと来てしまった。

アウトを取る過程が良かった

序盤2回までを終え、8人に対し初球をストライクゾーンに投げ込めたのは4人。だが3回以降、23人に対し15人に対して初球はストライクゾーンへと強いボールを投げ込んだ。しかも、初球ボールになった8人のうち7人に対しては次にストライクを取りカウントを戻している。

リーグで最も四球を稼いでいる球団相手に、リーグで最も四球を与えているチームの先発投手がお手本のようなストライク先行のピッチングをして投げ抜いた8イニング。

8回ともなると疲れも見えてくる。ましてや8回のマウンドに行くのは2020年の「あの日」以来3年ぶりだ。それでもイニング最速152キロのストレートを見せるなど、圧巻だった。

理想の姿は怪我をしない◯◯

トミージョン手術のリハビリ期間中に鍛え上げた身体は以前よりも大きく、どっしりとなった。その姿(投げ方を含めても)を大谷翔平に重ねる人も多かった。

だが、古い人間の私は梅津に違う選手を重ねた。それがホークス史上最高のエースとも呼ばれた斉藤和巳だ。
今日の梅津はマウンドに上がると球場の空気を支配し、躍動感あるフォームからアウトを重ねていった。その姿は全盛期の斉藤和巳そっくりだった。

惜しむらくは大怪我を負ってしまい早くして引退を余儀なくされてしまったが、梅津には同じ道を辿ってほしくはない。そのためにも来年はなるべくコンディションを整えて1年を投げきって欲しい。怪我をしない斉藤和巳になれれば…その先にあるものは、2013年の田中将大以来、セ・リーグでは2003年の井川慶以来の20勝投手を夢見れるはずだ。

梅津なら・・・きっとやってのけるはずだ。

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