ベーシックインカム公約とAI〜*土下座教放浪記
「もはや日本は先進国ではない」。こういう論調が目立つ。象徴的なデータ(2018年、日本生産性本部調査)をみると—。
経済協力開発機構(OECD)加盟36ヵ国中、日本の1時間当たり労働生産性は21位だった。
勿論、主要先進7ヵ国(G7)ではこの半世紀、日本は最下位記録を更新し続けている。
社会的・経済的格差の拡大が、日本を「貧しい国」に変えたのかもしれない。国力の衰えを否応なしに感じる。
「ベーシックインカム=BI」という政策がある。格差是正の一つ。ベーシック(基礎、基本)とインカム(収入)を合わせた造語。
政府が国民一人一人に、最低限の生活に必要な現金を、定期的に支給する政策で日本では基本所得保障、最低生活保障などといわれる。
わが国には憲法第25条の「生存権」に基づき、国が、生活に困窮するすべての国民に最低限の生活を保障する生活保護制度があるが、ベーシックインカムはこれに若干関係する。
以下アバウトな数字だが、まず、年金支給の実態をみてみる。
厚生労働省データでは、国民年金の平均額は男性約5万9000円、女性約5万4000円(2019年現在)。
国民年金を含む厚生年金の平均額は男性約16万3000円、女性約10万4000円(2021年現在)と開きがある。
一方、生活保護の場合、夫婦2人世帯の受給額は約15万円〜18万円、単身者は約10万円~13万円(2020年現在)となっている。
生活保護は住民税、軽自動車税、固定資産税など税金、医療費、国保保険料、介護保険料などは免除、あるいは除外される。
一定額以下では、生活保護受給者の方が、年金生活者より上回るという実態的格差が生じているのだ。生活保護の実質的受給額が金額的に優遇されているという側面がある。
この逆立ち現象?には、歯を食いしばって生活保護を受けず頑張っている人々の不満のマグマが溜まっている。
それは相当なパワーだが、現状ではサイレントマジョリティー(声なき声)扱いと同じ状態。
ベーシックインカムのメリット、デメリットは別の機会に調べるとして、最近特にクローズアップされているのがAIとベーシックインカムとの関係だ。
AIが人間の知能を越え、ヒトの仕事をどんどん奪っていくのは当初2040年頃と考えられていた。
だがコロナで経済的情勢が変わり「10年早まる」という見方が強くなって、失業者増大とベーシックインカムの関係がにわかに浮上してきた。
ベーシックインカム研究の第一人者で経済学者の井上智洋氏(いのうえ・ともひろ=駒澤大学准教授)は「結論から言えばベーシックインカムは、ただお金を配る制度ではない。社会全体が豊かになり、すべての人が生きやすくなるための制度。しかし生活保護制度も残すべきだ」と話す。
生活保護と区別するため「ユニバーサル・ベーシックインカム=UBI」と呼ばれる場合もある。
既に世界の潮流は、実施している国、実験している国など様々だが、働く、働かないなどの論議と共に、国債など非常に困難視される財源問題をクリアできれば実現は不可能ではない。
では一体、支給額は幾らぐらいが妥当なのか。
最近、盛んに飛び交っているのが「月額7万円説」。
井上氏は「月7万円の場合、4人家族だと月28万円。『それで仕事を辞める人が少ないのではないか』と思わせる絶妙な金額だ」と言う。
日本では2021年の総選挙で日本維新の会がベーシックインカムを公約として掲げた。
その主張は「社会保障を統合してベーシックインカムとし、毎月6万円〜10万円を支給する」という内容。
次の大きな政治課題だろう。さあきょうも冷静忍耐寛容謙虚反省感謝。
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