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毎週ショートショート、立方体の思い出

これは本当にあった話です。

十三年前、私は母と亡き祖母の遺品整理をしていました。
解体する前の祖母の家は、物に溢れていました。残念ながら資産価値があるものは一向に見当たらず。私は朝からの作業でうんざり。もう嫌だ。応接間のソファに深く腰をおろしたその時でした。
『ちょっと!』
小さな箱を手に持った母が現れました。鼻息が荒い。
『これ、凄いものかも』
差し出したのは菖蒲柄の装飾が施された立方体の箱。しかも藍色の蓋に家紋らしき文様が。
『開けてみて』
『わかった!』
母から箱をうけとると、うきうきしながら蓋を開けた。母と私は同時に覗きこむ。中に入っていたのは….

同じ立方体の箱がキッチリと収まっていました。
『また?』
私は母に目で急かされて、一回り小さな箱を取り出した。再び蓋を開ける。

また箱

マジか。これはまさかの 箱マトリョーシカ。




箱×♾

足元には夥しい空の箱。掌の上には角砂糖位の大きさの箱。もう箱なんかみたくない。私は祈りながら蓋をあけた。覗き込む二人の目に映ったのは……

汚いサイコロ。

今、天国で笑っとるやろ? だけど、一緒に笑っているのは孫だけだよ。ばあちゃん。

これ以上は角が立つので、思い出話はそこまでに。




たらはかにさんの企画『立方体の思い出』に参加させて頂いてます。
〆切すぎちゃいましたが、ごめんなさい。

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