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『インナーワーク』解説

これは2003年に発売された『インナーワーク―あなたが、仕事が、そして会社が変わる。君は仕事をエンジョイできるか!』の解説です。
現在、絶版となっており入手困難になっています。


一度読んだ方はこのインナーワーク、分かり辛くなかったですか?

特に後半は、インナーゲームとは関係ないのでは?と思う内容になっています。
まずは書籍の目次です。

序文 ワーク・フリーへの旅立ち
第1章 内側からの変化の時代
第2章 巨大企業とのチャレンジ
第3章 集中力のメカニズム
第4章 実践インナーワーク
第5章 「仕事とは」の再定義
第6章 自動力「モビリティ」と順応
第7章 STOPツールの活用法
第8章 自分株式会社CEO
第9章 コーチング
第10章 内側からの野生の欲求
おわりに ENJOYのために


これまでのインナーゲームとの違い


第1章〜第4章までは、今までのインナーゲームシリーズと似て、スポーツで活用されたインナーゲームを仕事に生かす内容、もしくは生かした事例になっています。

セルフ1とセルフ2に分け、セルフ1の妨害を減らし、いかにセルフ2にやらせるのか。
そのために、どのような知覚を向け、セルフ1を別な所へ集中することで、妨害を最小限にする内容になっています。


問題は第5章からです。
ここからは、ほとんどセルフ1とセルフ2という話は出てこなくなります。

仕事は辛く嫌なものから、その考えは本当に正しいのか『仕事の定義を再定義する』

会社の環境に合わせて働く順応から、自身の欲求、仕事で達成したい目的に合わせた順応への変化『モビリティ』

慣習的ないつもやっていることから、自身の目的を意識した、本当に必要なやりたい仕事をする『STOPツール』


細かい内容は他にもありますが、第5章からは概ね上記3点の内容になっています。
一見すると、セルフ1とセルフ2で説明していたインナーゲームとは関係ないように思えます。

しかし実はインナーワークでは、第5章からが重要です。
なぜでしょうか?


もう一度インナーゲームを確認しよう


改めてインナーゲームについて解説しますが、セルフ1という内側の妨害を減らすことで、本来あるはずの能力セルフ2の力を発揮させるというのが、インナーゲームです。

テニス、ゴルフ、スキーといったスポーツでは、セルフ1の妨害を減らすために、スイングの良し悪しをジャッジする心を、ボールの回転や、ラケットの位置などに集中させ、判断する心をいかに抑えるのかが鍵でした。

自身の妨害する心を減らすことができれば、そのままセルフ2の発揮につながり成果が出る、というのがスポーツでのインナーゲームです。


インナーワークは少し違う


しかし、仕事はスポーツと少し異なります。
①、セルフ1の妨害は自分だけでない。
②、長期的な集中が必要になる。
③、動いているものへ知覚を向けられない。


仕事でのセルフ1には何がある?


①、セルフ1の妨害は自分だけでない。
インナーワークでも、基本的なことは今までのシリーズと変わりありません。

『セルフ1の妨害を減らして、セルフ2にやらせる。』

この大前提は、どのインナーゲームにも共通しており、ここを忘れてしまうと、このインナーワークの理解が難しくなります。

インナーワークでも、セルフ1の妨害を減らすのが鍵です。
スポーツでは自身のジャッジする心がセルフ1になっていましたが、仕事では3つのセルフ1があります。
それが、
1、自分自身
2、同僚・上司
3、企業風土

自分自身が妨害になるというのはスポーツと同じですが、仕事では上司の顔色を伺ったり、同僚とのライバル関係や仕事のやり方や考え方の違いという妨害があります。

また企業風土、うちの会社では昔からこうやっているや、会社の理念など、会社独自の考え方もセルフ1になります。


なぜなら、セルフ1とは、良い悪いとジャッジする心だけでなく、何かをしようとする時に、自身に向かってささやいてくるもの全てが妨害だからです。

上司の小言、協調性のない同僚、会社の理念や考え方は、これで正しいのか迷ったり、同僚に負けたくないと力んだり、会社のやり方に渋々従ったり、
必ずセルフ1の妨害になります。
すると、そのままセルフ2が妨害されます。

そうした自分を縛るセルフ1をなくし、本来のセルフ2の能力を発揮するのがインナーゲームです。
仕事では、このセルフ1の妨害となるものが数多く存在します。


ずっとセルフ2にやらせる


②、長期的な集中が必要になる。
これも仕事とスポーツでは異なります。
スポーツでは、練習での集中も大事ですが、競技の時間だけ集中していれば成果を出すことができます。

しかし、仕事では長い間の集中が必要になってきます。

重要な仕事に集中するのは当然ですが、逆に退屈でつまらないような仕事でも集中が必要になります。


仕事で知覚力を活かす


③、動いているものへ知覚を向けられない。
テニスでは、ボールやラケットなど動きのあるものへ知覚を向ければ、セルフ1の妨害を減らせました。
逆に、ゴルフボールなど動きのないものは、知覚が難しく集中が続けられませんでした。

動きがあるものの方が目で追いやすく、集中しやすい。

しかし仕事では、知覚を向ける対象が難しくなります。
単純に動いているものはないからです。

以上3点、
①、セルフ1の妨害は自分だけでない。
②、長期的な集中が必要になる。
③、動いているものへ知覚を向けられない。

が、仕事でのインナーゲームを難しくします。

これらの妨害を減らさないことには、セルフ2の力を発揮することはできません。


目次で読み解くインナーワーク


第1章〜第4章では、今までのインナーゲームの知覚力を仕事に応用しています。ですので、馴染みやすいです。

AT&Tでのテレオペレーターでインナーゲームを使った時には、相手の声から怒っているのかそうでないのか1〜10で判断し、こちらの声色を変化させて相手の感情にどのように変化があるのか知覚を向け、顧客満足、顧客対応時間を改善させました。

知覚を向けてセルフ1の妨害を減らせばセルフ2が発揮されて、”仕事でも成果につながる”ことが分かりました。


しかし、仕事ではそれだけではセルフ1の妨害が無くなりません。
①、セルフ1の妨害は自分だけでない。
②、長期的な集中が必要になる。
③、動いているものへ知覚を向けられない。
が、あるからです。

そこで、必要になるのが第5章からの内容になります。
仕事では、知覚を向けるだけではセルフ1が無くなりません。

何かに知覚を向けていたとしても、上司から理不尽な命令をされれば怒りたくなりますし、自分が正しいと思ったことと会社のやり方が異なればやる気が削がれます。
また、いつもやっている同じ作業は飽きますし、クレーム、悪口、評価、売上などセルフ1の妨害は止まりません。

こうしたセルフ1の妨害を減らすには、知覚を向けるだけでなく、なんのために仕事をしているのか目的を明確にし、常にそれを意識することが必要になります。
自身が納得して仕事ができれば、なんでこんな仕事するのか?なんでこんなやり方でするのか?というセルフ1を減らせます。

それは、自分を納得させる、ということではありません。
自身に強制させることはセルフ1です。それでは、セルフ2の能力は発揮できません。


仕事を『再定義する』とは?


仕事がやりたくないものだと思っていれば、セルフ1が出やすくなります。
こんなことやりたくない、めんどくさい、つまらない、仕事をどのように考えているかで、向き合い方が変わります。

なので、仕事の定義を『再定義』する必要があります。
ただ単にお金を稼ぐため、生活するため、といった仕事の捉え方を見直します。
なんでこの仕事をしているのか?、なんのためにしているのか?、今までの仕事を振返り、定義を再構築します。

仕事の定義が変われば、仕事が嫌々やっているものから変化します。

『モビリティ』とは?


セルフ1を減らすには、仕事の目標も大事になります。
目標と仕事がマッチしていれば、自身が納得して仕事ができます。

ただし目標とは、会社の目標ではありません。
売上を上げる、効率的に仕事をする、取引先と良好な関係を作るなど、社長や上司を満足させるものではありません。
あくまで自分の目標です。
自分が満足するための目標です。

インナーワークでは、『順応』と言っています。
自分を組織に合わせていく順応から、自分の目標と会社のあり方を合わせる順応です。

目標と仕事が順応すれば、仕事での満足度が変わります。
仕事では、常に成果が重視されますが、成果を出すには、『歓び』と『学習』が欠かせません。
単純に成果だけを目指すと、『歓び』や『学習』が阻害され伸び悩みます。
とくに今は、努力・根性が仕事の成果に繋がりません。

楽しく仕事ができるのかが企業価値になり、想像力を発揮できる会社がどんどん伸びています。

新しいIT技術、コロナウイルス、感性の変化により、時代の流れが急速に変化しています。
こうした変化に順応し、自分が満足しながら目標を達成するのが『モビリティ』です。

組織で生きていくための順応から、自身の欲求、仕事で達成したい目的に合わせ、会社のあり方、時代の変化に順応しながら対応していく力『モビリティ』。
セルフ1の妨害が減らせれば、セルフ2の力によって『モビリティ』が発揮できます。
私たちには、本来そうした力がある。というのがインナーゲームです。


『STOPツール』とは?


仕事でのインナーゲームは、知覚力を使ってセルフ1を減らすだけではセルフ2の能力が発揮できません。
セルフ1の妨害が、無数にあるからです。

内側の妨害になり得るセルフ1を、色々な角度から減らしていきます。

『STOPツール』もそのひとつです。
仕事の定義や、仕事の目標などは自身の大きな改革ですが、STOPツールは慣習的ないつもやっていることから、自身の目的を意識する時間を少しだけ確保する簡単な方法です。

今やっている仕事を止めて、今やっている仕事と目的がマッチしているか意識を持つことで、セルフ1の妨害を減らします。
つい慣習的にやっている仕事は、慣れているので余裕があり、セルフ1の妨害が出やすくなります。
余裕があると、周りもよく見え、相手の批判なども出やすくなります。

STOPツールは、そうしたセルフ1に支配されやすい状態から離れるための時間を少しだけ確保します。


なぜ仕事ではインナーゲームが難しいのか?


インナーワークの第5章からは、仕事ならではのセルフ1対策になっています。
仕事では、スポーツとは異なるセルフ1があるからです。

スポーツでは考えないことがより能力を発揮していたのに対して、仕事では考えることが必要です。
ときに考えることは、セルフ1の妨害を非常に受けやすい状態です。
考えることと、セルフ1は区別しなければなりません。

それには、今までのインナーゲームシリーズにもある、知覚力を使ってセルフ1を減らすのと、さらに仕事で発生しやすいセルフ1を減らす方法です。

知覚することはセルフ1を減らします。

インナーワークでは、さらにセルフ1が発生しやすい状況、環境への対策が重要です。
仕事への考え方、目的・目標、意識する、がセルフ1の妨害を、根本から解決します。

常にセルフ2を妨害するセルフ1は、内側(こころのなか)にあります。

このセルフ1を減らし、セルフ2にやらせるというのがインナーゲームで、それはインナーワークでも変わりありません。
ティモシー・ガルウェイの考えていることは一貫しています。

まとめ


この記事は、インナーワークを実際に仕事に生かしてもらうために書いています。
今までのインナーゲームは受け入れられたけど、新しい考えは受け入れ難い、これもセルフ1です。

インナーワークは、今までのインナーゲームを知り実践している方が、さらに仕事に活かすための中級〜上級の内容になっています。
書籍の価格が非常に高騰していますが、恐らくインナーゲームをしっかり理解せずに購入すると、これはインナーゲームなのか…?と、拍子抜けします。

しかし、書籍に書いてあるのはどれも『セルフ1を減らしセルフ2にやらせる』ための方法です。
これは間違いありません。

ティモシー・ガルウェイも言っていますが、インナーゲームを仕事に活かすには、コーチングを受けるというのも大事です。
私自身は、今までコーチングを受けたことはなく、独学でインナーゲームを学びましたが、早く体験させてくれるよいコーチがいれば、理解は早かったと思います。

インナーゲームの感覚を掴めれば、自身にそれを活用し、また部下への指導等にも活用できます。
インナーゲームは、方法を学ぶより、セルフ2感覚を体験する方が近道です。
なぜなら方法に縛られるのもまたセルフ1だからです。
こうやればセルフ1の妨害が減らせる、というものではありません。

何が良い方法かは、その人に合ったやり方を見つける必要があります。
上司との関係が問題になっている人もいれば、仕事のやり方や内容、成果へのプレッシャーなど、セルフ1の妨害は人それぞれ異なります。
だから、何がセルフ1になっているのか探さなければなりません。

自分で見つけることもできますが、心の中を探っていくのもセルフ1が出やすくなります。
相手が変わることを望む心を鎮め、自分で認めたくない事実を見つめるのは、自身で行うには強さが必要になります。
コーチに客観的に見てもらうと、セルフ1に縛られず見つけることを手助けしてくれ、痛みを和らげ、解決する糸口を見つける手助けをしてくれます。

しかし強制はしません。それはコーチではありません。
コーチが問題を指摘し解決策をさせるのは、命令された仕事を嫌々やることと変わりありません。
あくまで、コーチは手助けです。
何を問題とし、何を解決していくのか決めるのは、自分自身です。
そうでなければ、本当に納得してインナーゲームを仕事には生かせません。

あなたが、仕事が、そして会社が変わる。
君は仕事をエンジョイできるか!

インナーワークの表紙に書かれたキャッチフレーズですが、良い言葉です。
今の時代に身に付けたい内容です。

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