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劇団鹿殺し【キルミーアゲイン'21】 感想文

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劇団鹿殺し公式Twitterより

以下、引用先明記で引用させていただいたり、画像お借りしています。

概要

キルミーアゲイン'21
東京公演 紀伊國屋ホール
公演期間 2021年9月30日〜10月10日

大阪公演 大阪IMPホール
公演期間 2021年10月15日〜10月17日

https://shika564.com/killme2021/


キルミーアゲインを見た(どうしても舞台の中の劇評と同じこの切り口で始めたかったの)。
初回はただただ圧倒されてジェットコースターのような起承転結についていくだけで精一杯だった。とんでもないものを見てしまったなと思った。
2回、3回と観劇を重ねるごとに、結末を知っているからこそ分かる伏線が見えてきて、人魚コスプレ(人魚コスプレ?)に気を取られすぎているけど、話がかなり複雑かつ上手く回収されていることに気が付いた。
平日19時開演、休憩なし2時間15分、場所は新宿、というわたし的好条件も重なり、なおかつ直前でも劇団サイトから買えば身一つで行って受付でチケットを受け取れるという手軽さもあって、新宿の人魚に会いに行ってきます、と観劇の回数を際限なく増やした。

大阪の大千秋楽、これで最後だと思って観たはずなのに、いまだに全然気持ちの整理がつかないのでだらだらとここに感想を書いていきます。


・あらすじ
人魚伝説が残る、どこかの村。
村にダム建設の話が立ち上がる中、東京から一人の男が帰ってきた。
ダム建設反対を村人に訴えようと、元演劇部員だった男たちが人魚伝説をモチーフに新たな舞台を作ろうとするが、17年前の悲劇が再びちらついて…


・真田くんは17年ぶりに東京から村に帰ってくる男、藪中役。そう、ほぼほぼ主役。客演ってもっと3、4番手くらいかと思ってたけど、まさかの主人公。藪中が高校時代の同級生・河本(丸尾さん)に村に呼び戻される形で舞台は始まるけど、実は呼び戻されたというより東京から逃げ帰ってきた藪中。話が進む中で明らかになるけど、逃げ癖があり、行き詰まるたびに逃げて、おまけに嘘つきな男。
……だけど藪中、あらゆるところでモテている。勝手に辞めちゃったのになんだかんだで吹奏楽部のみんなは藪中のことを気にしているし、高校時代に同級生女子から告白される描写もある、現在パートでも藪中を村に呼び戻した河本はまた17年前みたいに一緒につるめるのが楽しそうだし(これはのちのちそれ以上にいろんな感情が吐露されるけど)、東京で借金押し付けられた後輩の山根(梅ちゃん)も最初こそ怒ってたけどわざわざ藪中を迎えに村に戻ってきちゃうし、17年前藪中に助けられたやまめちゃん(チョビさん)も現在パートで再開しても変わらず懐いている。みーんな藪中のことが好き。もうモッテモテ。その役柄が浮いて見えるんじゃなくて、ほんとに好かれているのが違和感ない役作りで、藪中は舞台の上でとても愛されていた(このへんはチョビさんの演出がうまかったのかな)。

あーこんな役を演じる真田くんが観たかったんだな、と見終わった後に初めて気がついた。ここがこのnoteの大サビです。

・舞台は現在パート、現在パートの中の劇中劇、17年前の高校生時代の過去パート、を行ったり来たりと進む。17年前と現在を同じ役で出演しているのは、藪中、河本(丸尾さん)、山根(梅ちゃん)、1学年先輩の大蔵(小林しんいちさん)、不思議な女の子やまめちゃん(チョビさん)の5人だけ。ハケずにそのまま現在と過去を行ったり来たりする演出は、丸尾さんが演出してくれた『27』でもあった手法で(キルミーアゲインは演出チョビさんで27とは違うけど)、なるほどこれが鹿殺しの舞台なのね、と。
とにかくずっと舞台上にいるから演者は水分補給もままならないはずで心配だけど、そのスピード感がたまらなくいい。現在から過去へ、過去から現在へ戻ったと思ったら劇中劇、ピンポン球が予測できない軌道で飛び回るようにあらゆる方向へ物語は進んでいく。

『27』では上着を変えるだけで過去(父親の若い頃)と現在(の27歳の自分)を1人二役していたけど、今回はさらに劇中劇もあってとにかく目まぐるしく変わる。過去パートでこの役やってた人、現在パートではこの役やってるけど実はこれ血が繋がってるからこの人がやり分けてるのか、みたいなのが多くて、2回目、3回目、と回を重ねるうちに少しづつ気付けたし、台本にもいっぱいヒントがあってとにかく「脚本と配役の妙」が面白かった。
そして出演者が多いのに、全員キャラが濃くて分かりやすい!現在パートも!過去パートも!おまえもおまえもおまえもおまえも!!みんな可愛い!!(突然の河本のセリフ)ってなる。出演者まるっと愛おしくなる舞台だった。


・劇中劇は、村に伝わる人魚伝説をベースに、人魚を助けた田舎侍がなぜか竜宮城にたどりつき、田舎侍と人魚の末裔のたくさんの人魚たちが村おこしのためにアイドルになる!というストーリーで、最終的にほぼ全員人魚コスプレで歌い踊ります。
劇中劇は全て藪中が脚本を書いているという設定だけど、正気か藪中!と思うとんちきさ。
冒頭から唯一人魚役を割り当てられている山根がなんの違和感も嫌悪感もなく人魚になりきっているし、演じている梅ちゃんも舞台期間に自分のツイッターに人魚姿で自撮りを載せていてプロ魂がすごかった


大蔵のダメ出しのセリフで「踊れるやつと踊れないやつの差が大きすぎる!」と言ってるけど、ほんとそれ。なんで歌って踊るシーン作ったのwと思うくらいぎこちなくどたばたしてる人もいる(そこが面白いんだけど)。
なぜか2番まで歌うから1曲1曲が長いし、フォーメーションもよく見たらかなり動いてる。フリも細かい。そしてもちろん生歌。結果、動くだけで精一杯の大人たちの声がほとんどマイクに入ってなくて真田くんの声がかなりはっきり聴こえるしふつーに上手!
お稽古中、「バネってる!(35歳の藪中が踊ってるにしてはバキバキ踊りすぎ)」という今まで言われたことないダメ出しされてたって言ってたけど、改めて真田くんって歌って踊れる人なんだなって…え、すごい…
平手ちゃん役の藪中、すごいすごい良かったよ…圧倒的センターだった…

人魚はなんか…身体!!!!!!っていう視覚情報がすごすぎて…もはやよく覚えてません……
ぱみゅぱみゅみたいなかつらは東京と大阪で変わったけど、どちらのお人魚ちゃんも可愛かったよ…
個人的には「うろこを脱いでキスしよう」のフォーメーションが好き。藪中はワカメとペアで、もはや人魚もワカメもうろこ生えてないやんっていうの含めて好き。振り付けもかつてわたしたちが通った道、タッキー&翼感があって馴染みがありすぎた。劇中劇のシーン、DVD届いたらねちねちと細かい感想が書きたい…

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マイナビニュース様


・印象深いといえば、人魚もそうなんだけど最後の卒業式の場面。
17年前にできなかった卒業式をしようって、もう劇中劇なのか現実なのか分からない中、過去パートと現在パートのメンバー総出演で卒業式をする。
逃げてばかりだった藪中や、過去に縛られたせいにして本当は自分で動き出す一歩が踏み出せなかった河本、ほかのみんなもそれぞれ17年前のできごとに罪悪感を抱えたり後悔しているけど、それでも全部抱えて生きていこうよ、って歌詞と全力のフレーフレーのエールに毎回泣いてしまった。

この場面で藪中は吹奏楽部員だった時の担当楽器の太鼓をたたくけど、すごく全力ですごく楽しそうで、あぁ、藪中は全然太鼓のこと嫌いになってなかったって誰が見てもそう思うような演奏だった。あの太鼓20キロくらいあるらしくて舞台終盤にやるにはさぞかし大変だろうけど良い場面だったなぁ。
舞台の最初にキルミーアゲインというタイトルの曲で「死んだように生きる」と歌っていたけど、アンサーソングとしての卒業式ソングが最高に良かったです。
卒業式のシーンだけではなく、タテタカコさんの曲もチョビさんの歌声も心に響く素敵な曲ばかりだった!

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ステージナタリー様


・2016年の初演キルミーアゲインの情報を少しだけ仕入れて観劇して、観終わった今、再び初演の情報を漁ってたんだけど、

藪中:大東駿介
河本:オレノグラフィティ
大蔵:丸尾丸一郎
山根:細貝圭
市川たにし:河野まさと
及川やまめ:菜月チョビ

ということで、そもそも出演者がガラっと変わっている中で大蔵→河本になった丸尾さん。開幕直前のニコ生だったかゲキナビだったかで「今回はユウマと絡みたいから役変わった」って話してたけど、観劇してみて初演キャストを調べてみて、あぁなるほど…と腑に落ちた。
河本は17年前の事件にとらわれて(そして事件のせいにして)17年間ずっと村にいて、藪中を村に呼んでやっと止まっていた時計が動き出す役。藪中の狡さや逃げ癖を知っていながらそれでも藪中とわちゃついてる時の河本はすごい楽しそうだった。
『27』はとにかく真田くんが一人で頑張らなくちゃいけなくて(そういう役だった)観ていてしんどかったけど、今回は「みんなで!」という雰囲気があって楽しかったな、あの『27』から今回抜擢して呼んでもらえて本当によかったな…

それから、劇団鹿殺しの20周年記念公演とあって、連日あきらかに演劇関係者がいっぱい観に来ていたのも印象的で。藪中の役、本当に良かったから次に繋がるようにと願わずにはいられない。
それにしても初演は、河野まさとさんがたにし役だったなんて、え、あの三五が!?と興味が湧くので、同じように興味がわいた方は劇団のページが残っていたので貼っておくのでどうぞ。
http://shika564.com/15th/

あと検索してて出てきたけどやっぱり【劇団村さ来】が撒いてるチラシは、2016年は客席へ渡してたらしい…ですよねー、欲しかったなぁチラシ……


・最後に。
東京公演千秋楽、大阪の大千秋楽ともにチョビさんが「みんなのアイドル!真田佑馬!」と紹介してくれたことについて。
前世から復活して以来、前世の意味での「アイドル」はもう使うことがないし、真田くん自身も「アイドルでもアーティストでもない、僕と言うジャンル」と言ってたけど、

――「あなたの肩書は何ですか?」と聞かれたら、何と答えますか?
「僕」です。アイドルと言われても「アイドルじゃない」って言うし、アーティストと言われても「アーティストじゃない。僕です」と言います。

真田佑馬(7ORDER)インタビュー「心が止まるような経験もしたけれど、人生なんとかなる。振り返った時に笑える人生でいたい」
TOWN WORK マガジン


チョビさんがこう呼んでくれたこと、わたしはとても嬉しかった。劇団のみなさんに受け入れられて愛された日々だったのかな。
劇中で、人間臭くずるいところがある藪中だけどなぜかみんなが彼を好きなところ、観ているこちらも、え、なんでこんなやつが好かれるんだと思うことなく、とても魅力的な藪中だったこと。丸尾さんがニコ生で真田くんのことを「普段普通の男なんだけど、舞台に立つとかっこいい」と言ってくれたこと。そういうの全部含めてみんなのアイドルという言葉になったのかなと解釈したけどどうでしょう。

真田くんって、7ORDERにいたら「みんなのアイドル」というポジションではないんだけど、7ORDERにいるからこそキラキラした衣装やキラキラした歌を歌えていると思っていて。もし今ごろ真田くんがソロ活動していたらがっつりストレートプレイしてる舞台俳優さんか、アコギ持ってぽろぽろ奏でてるアーティストになっていたんじゃないかなって(たぶん作風も7ORDERとは違いそう)、
そしてそういう真田くんもいいんだけどまだユニットで活動してほしかった、キラキラしてるところが見ていたかったわたしにとって、7ORDERという未来は10000000%上出来な未来で、かつこんな風に客演している舞台上で愛されている姿が見られたのは想定していなかった幸せな未来でした。チョビさんも丸尾さんも劇団鹿殺しさんも本当にありがとうございました。


・紀伊国屋ホールの入り口を入るとお花の匂いが分かるくらい、今回かなりたくさんお花が届いてて。全体の7~8割ぐらいが真田くん宛だった。開演1週間くらい前に流れた公演詳細情報でもお花OKと書いてあったし、開演直前のニコ生でもお花贈ってもらえるならどんなお花がいいですか?という質問がとりあげられたりと、OKムードはあったものの、ここまで来るかと思うくらいお花が届いていた。
20周年記念の劇団宛のお花より目立ってしまっていたし、バルーンはどうなんだとか舞台の作風とそぐわないのではとか勝手に真田担内でもなんか勃発していたりもした。

かくいうわたしも、悩みながらもお花を贈った。自己満足の極みだけど、安くはないお金を使って、観劇ではなくお花で気持ちを現すその楽しさも知った。
もしかしたら、そんなお花が殺到してしまった皮肉も含めての「アイドル」だったのかなぁと思わないでもないけど、好意の方が大きかったと思いたい。

まだまだキルミーアゲインとお別れするのが寂しい。もっとキルミーアゲインの話がしたい。でもいつかまた真田くんが鹿殺しやほかのメンバーと共演する時のために、今回のことはちゃんと書いておこうとまとめました。
実はまだパンフレットも台本もきちんと読めていないので、また消化出来たら別のnoteを書くかも。

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