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自分探しはまだ続く 石垣島の美容室で


美容室でのオーダーが昔から苦手だった。専門用語もわからないし、雑誌の切り抜きを見せるのも恥ずかしい。そもそも、モデルの顔と私の顔は違うんだから、同じヘアスタイルにしても印象は全然違う。結局、髪を切ってみないとどうなるかわからない博打感。

さらにロング、ボブ、ショート、パーマ、カラーと組み合わせが無限にあり「このヘアスタイルやってみたい…!」と思うことがあまりなかった。昔から優柔不断。何事も「やってみないとわからないじゃん」という気持ちがある。

「少しすっきりしたくて」みたいな曖昧なオーダーをして、本当にちょっとすっきりする、ということを繰り返していた。


振り返ると小学生のころからショートヘアが多かった。小学4年生のとき、夏休みの間にベリーショートにしたら、周りの評判がすこぶるよかった。それ以降、少し伸びると「切ってスッキリしたい!」という気持ちがむくむくと出てきて、切ると「ショート似合うね」と言われる、の繰り返し。

就職先は黒髪でまとめ髪にする必要があり、まとめる技術を持ち合わせていない私はショート一択。パーマもかけずに、ストンとしたショートかボブヘアが多かった。服装もヒールは履くけどパンツばかり。どちらかというとかっこいい系のファッションが好みだった。お気に入りだったけど、ちょっとつまらないな、とも思っていた。

芸能人がヘアスタイルを変えたら急に垢ぬけて目を引くことがある。自分にもとびきり輝くヘアスタイルがあるんじゃないか。アイドルをよく見ていたから、ヘアスタイルひとつで印象がとてつもなく変わる人たちを見て、憧れていた。

子どもが生まれ、お金の使いどころを考えるうちに、自分の美容への優先順位はどんどん下がり、「私の髪を切るのにお金かけるくらいなら絵本を買う!」みたいな考えになっていった。それでも心のどこかで、コテで髪を巻くことやパーマで雰囲気を変えることへの憧れがあった。

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仕事を辞めて、3人目の子どもが生まれて少し経ったころだっただろうか。

「私は私のやりたいことに時間を使いたい」
「おしゃれしたい」
「もっと輝きたい!自分のテンションの上がるヘアスタイルがあるはず…!」

と、モーレツに自覚した。子どものことばかり考えていた反動か、急に自分へのベクトルが向いたのだと思う。

子どもがいると「ずっとロングだったけど邪魔だからショートにしよう」というパターンが多いけれど、その逆。

「伸ばしてパーマやコテを使いこなしたい…!」

少し脅迫じみたくらいの「自分探し」への欲がわきあがった。


髪を伸ばしながら、パーソナルカラー診断や骨格診断を受けて自分を知ることに努めた。パーソナルカラーは一度無料で見てもらったときはウィンター、2度目に有料のところではスプリング。骨格診断はウェーブ。診断の世界は知れば知るほど私には沼で、使いこなしきれなかったのが正直なところ。

ヘアライターのさとゆみさん(佐藤友美さん)の著書「女の運命は髪で変わる」を読み、「なりたい自分」をイメージしてからヘアスタイルを考えるという視点をもらう。髪を大切にすることは他のどの部分をケアする以上に、見た目への影響が大きいということも知った。


さとゆみさんの本や記事を読み、モテ髪師大悟さんなど、発信に力を入れている美容師さんのことを知り、また読む。読む……。

実際に大悟さんが経営する表参道の店舗にまで行った。大悟さんは予約がほぼ取れない美容師さんなので、ほかのスタッフの方にお願いした。インスタでモデルさんのヘアカットをした写真を挙げているような方に綺麗にトリートメントをしてもらい、ふわっとパーマをかけてもらった。鏡を見ると、自分までふわっとした気持ちになる。

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物語のような劇的な変化があったわけではないけれど、髪型と服装を意識すると、体重は変わらないのに「痩せた?」と聞かれることが増えた。それまで着なかったレースやスカートを身につけるようになり、ワクワクした。

それでも、大元の「どんな自分でありたいか」が欠けていたからだろうか。上手な美容師さんに切ってもらっても、なんだかしっくりこない感じがまとわりついていた。渡辺直美さんや仲里依紗さんのような、「確固たる個性」への憧れがあるのかもしれない。頭でっかちなのか、飽き性なのか。


そして2019年に離島へ来て、おしゃれの優先順位がまた下がった。毎日すっぴん、楽な格好万歳!そして島の方たちの価値観や大切にするものにふれたことで「自分が垢抜けたい」「似合うかどうか」ではなく「自分の好きなヘアスタイルをしてみたい」という似ているようで、少し違う考えが浮かんだ。前者は他人軸で、後者は自分軸だ。

石垣島には思った以上に多くの美容室がある。いくつかの美容室に行ったところ、どの美容室もヘアケアやカラー剤にこだわっていて、東京や神戸など各地から移住してきた美容師の方が多くクオリティも変わらない、と思う。美容師さんの本や記事を一時期読んでいたおかげで、少し用語に詳しくなり、転勤族の美容室選びに役立っている。今までの迷走や行動も意味はあったかな。

それでも、なかなか1箇所に決めきれずいくつかの美容院を転々としていた。

先日、カットとカラーをしてもらった美容師さん。若くて、陽キャ!!!っていう感じの、明るくよく話す方だった。2か月前に勢いと思いつきで石垣島へ移住してきたのだとあっけらかんと話す。一人でリゾートホテルへ行くくらい、好奇心のままに動く方。

優柔不断な私が「あまり決めてなくて…」と伝えると、迷いなく
「カラー僕が選んで良いですか?」と言った。
「あ、はい!お願いします」あわてて答える。
カラーが仕上がったあとに、どんな色の組み合わせを混ぜたのか話してくれる。丁寧なカウンセリングも良いけれど、こんな風にサクサクと進めてくれるのは、気持ちが良いし楽だった。

「せっかく綺麗になったので巻きますね!」とサササッとコテで巻いてくれ、大人っぽいくびれのあるセミロングに仕上がった。ふわふわした髪を見ていると、最後に
「ハイライトって入れた事ありますか?」と聞かれた。

派手なカラーやハイライト、インナーカラーなんかにも憧れている。
「わあ、ハイライト興味あったんです!!」と伝えると
「うん、入れたら動きが出て、またイメージ変わりますよ。可愛いと思います。」と言ってくれた。自分から言わなくても、プラスの提案をしてもらえるのがこんなにも嬉しいなんて。

美容室はひとつずつ小さな挑戦をして、新しい自分を見つけに行く場所なのかもしれない。「やってみなきゃわからない」「一つずつ行動」髪の毛だけじゃなくて、仕事や趣味でも同じだな。

次はたぶん、ハイライトを入れに美容室へ行く。

久しぶりにバッサリショートにするのも良いかもね。

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