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ハッピーエンド風バッドエンドとバッドエンド風ハッピーエンド

今日は「まどかマギカ」の話をしたいんですよね。
まぁまぁちょっと待ってよ。読んでってよ。知らなくても興味深くなるようにするから。
あんま細かい話はしないから。そもそも大事なのはディテールではなくて、お話の構造なんですよ。普遍的な話。ね、お願い。


記憶が曖昧すぎるのでテレビシリーズの終わり方から整理します。

魔女と戦う魔法少女の話です。
かつ魔女の正体は実は元魔法少女で、そもそも魔法少女は遅かれ早かれ魔女になることが宿命づけられた存在だったのだ。こんな話でしたね。

・少女 ←契約→ インキュベーター 
     ↓       
   魔法少女      

・魔法少女 →退治→ 魔女

・魔法少女 → 最終的に魔女に変化

契約とはインキュベーターが少女の願いを叶える代わりに魔法少女として魔女と戦う、という内容ですね。
ストーリーはこれで間違いありません。

テレビシリーズの終わり方。
主人公のまどかが過去現在未来全ての魔法少女の救済を願い、自らが「円環の理」という魔女になった魔法少女を救済する""概念""に変身し、皆の魂を救済します。
その結果、まどかはほむら(もう1人の主人公)以外の全ての人間の記憶から消え去り、お話の途中で魔女になってしまった登場人物も「円環の理」の一部になってしまいました。
残されたほむらは1人魔法少女としてまどかが愛した人たちのため戦いを続ける。
こんな感じだったと思います。
ほむらが救おうとしたまどかはいなくなり、まどかの家族すらまどかを知らないというなんとも切ない終わり方ではありますが、皆が望んだ結果でもあり、なんかすっげぇ前向きな空気感で終わったと記憶しております。

・まどか ←契約→ インキュベーター

・契約の内容:魔法少女の救済

・まどか、「円環の理」に変身

・まどか現世からは消滅

・魔法少女みんな救われてハッピー!

・ほむら、魔法少女として戦いつづける


「まどかマギカ」にはその後を描いた劇場版、『劇場版まどかマギカ 叛逆の物語』があります。
今回話したいのはこの劇場版の終わり方についてです。

難解なストーリーでしたが、簡単に言うとテレビシリーズの最終回の後ほむらも魔女化したので、「円環の理」としてきちんとまどかが迎えに来た。
たぶん間違いありません。
インキュベーターの介入や、まどかの記憶の混濁などのおかげで映画一本分尺を持たせましたが、起きたことはシンプルでしたね。

しかしこれだけだと後日談に過ぎません。ほむらも魔法少女である以上魔女化は避けられない運命ですし、そんな魔法少女を救うためにまどかは「円環の理」になったわけですからね。話自体は後退も進展もしていない。長いエピローグ。

話題作ですからそれだけで終わる『まどマギ』ではない。

記憶を取り戻し「円環の理」としての役割を果たそうとするまどかでしたが、なんとほむらが黒幕風な雰囲気でまどかを捕捉し、果ては「悪魔」となり(詳しいことは知りません)、嫌がる皆をガン無視してスーパーパワーで世界を書き換えてしまいます。

ほむらはやっぱりまどかに側に居て欲しかったようです。

書き換えた後の世界がこちら。
まどかは「円環の理」から元の人間に引きずり戻され、記憶を改竄され……
周りの登場人物の死や魔女化はなかったことにされ……
皆は身勝手なほむらのやり方を糾弾
さらにインキュベーターはほむらやまどかの力にドン引きし、地球から手を引く……

ハッピーな空気で終わったテレビシリーズとは打って変わってメチャクチャ険悪な雰囲気で幕を閉じたのでした。


え?
これバッドエンドなん?

なんかほむらがまどかの願い、( これはつまり「円環の理」として魔法少女を救済することです )を台無しにした。みたいな雰囲気で終わりました。

んなアホな。上記のあらすじもどうにか「バッドエンド風」に書いたつもりなのに、どう表現してもいいことしか起きてない。
・まどかは人間として自分の人生を取り戻し、
・魔女化した人は元通りになり、
・死人も生き返り、
・その上「円環の理」はまどか抜きで維持されている。
・極めつけはインキュベーターが地球から去ったことです。そもそもこの地球外知的生命体と契約しないと魔法少女になれない、ひいては魔女になることもないわけですから、今後「魔女化」という悲劇は起きようがない。

にもかかわらずだ。観賞後の気分は非常によくない。円満になった見滝原魔法少女戦隊だったはずなのに、ほむらは実はメチャクチャな狂人だった、みたいな終わり方になった。

モヤモヤの原因はただ一点、まどかの自己犠牲を「なかったこと」にした、ということの様です。


テレビシリーズの終わり方と比較してみるとこんな感じです。

テレビシリーズの最終回:悪いことばかり起きてるけど皆の気持ちは前向き

劇場版の終わり方:良いことしか起きてないのに皆の気持ちは後ろ向き


これです。
いい意味で実に底意地の悪い作りになっています。
すごく気持ちの良いバッドエンドと
すごく後味の悪いハッピーエンド

みたいな対比になってるんですね。
すごくいいまとまり方だなと思った。劇場版が蛇足にもならず、エピローグにもならず
むしろあれだけ綺麗に終わったテレビシリーズを利用した、映画としてもシリーズとしても非常に面白い終わり方でした。


そんな『まどかマギカ』の続編がやる。
不安か?いやそうでもないですね。意外と素直に楽しみです。

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