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ニック・ランド『暗黒の啓蒙書』【基礎教養部】[20230730]

はじめに

今月は、匿名希望氏の選んだ本を読む月だった。ということで、記事タイトルの本を読んだわけだが、すごく読みにくく感じた。

本の序文は面白そうに書いてあって興味が湧いたが、いざ読み進めてみると、よくわからないところがほとんどだった。僕の人種問題に関する知識?その他諸々の教養?が乏しいというのもあるし、そもそも訳文がアレな感じだったので、読みにくかったのだろう。(僕のnote記事も大概であるが)

僕も個人的に生きにくさを少しでも感じている身としては、資本主義や民主主義はクソな部分があると思っているが、正直ランドの暗黒啓蒙にはイマイチ魅力を感じなかった。

もういっそのこと、この記事を書くのも断念したいほどだったが、本の中から気になったテーマを取り上げよう。

生物工学的な地平へのアプローチ(PART 4f)について

人種問題がどうのと言っている本で、生物工学っぽい話をするのであれば、やはり「生まれか育ちか(Nature or Nurture)」をゲノム編集などの生物工学の技術を使って解決するみたいな話題が挙がってくるだろうという僕の予想は見事に的中した。入試英語でも頻繁に関連テーマが出題されていたし、僕としてはこの本で唯一入りやすい話題だと思った。

4章全体としては、執筆当時にアメリカを騒がせていたダービーシャー事件が取り上げられていた。これはジョン・ダービーシャーというジャーナリストが、科学的人種主義を含む新反動主義的な分離主義を主張する記事を公開してしまい、保守派の大手論説誌をクビになったという事件である。

新反動主義とは、すなわち暗黒啓蒙のことで、暗黒啓蒙の説明は、Hiroto氏の記事を読むのが分かりやすくていいのでそちらを読むことを勧めよう(埋め込みあり)。分離主義というのは、「国内における民族的、宗教的、人種的な少数派が中央からの分離独立を目指すこと」(wikipediaより)である。

人種問題を解決する最終的な手段として、ダービーシャーが遺伝子操作でそもそも人類とは異なる新たな種を生み出すことを提唱したらしい。この生み出された新たな種をランドは「怪物」と呼ぶ。まったくその通りであり、はちゃめちゃすぎる解決手段だと僕も思う。人種が問題なら、人種そのものを無くしてしまえばいいのだ。

要するに、いつしか自然の摂理を破壊できるようになってしまった科学の力で、古くからある人種問題をも、破壊してしまおうというのである。

この「怪物」を生み出すことができる領域は、まさに生物工学的な地平である。生物工学的な地平とは、一つの個体群とそれが持つテクノロジーとが見分けのつかないものになるような領域のことである。つまり、個体群が何であるかは、個体群が何をしているか(これは遺伝子情報によって完全に決定)によって個性づけられるような領域のことである。近代科学の発展は、技術の発展(要は機械の改良)と同じであるので、このような地平にいつか達し、人間の力で怪物も作り出せるようになる。

ランドは、この怪物になること、あるいはまったく新たな種を形成することをもって、人種に関する弁証法の外へと向かうことを呼びかけている。人種の混交によって問題が解決されることはないというのが、まさに分離主義の立場での言い分であり、確かに皆の子供が遺伝子操作によって、顔に触手の生えた種(フェイス・テンタクルス)になってしまえば人種問題がどうのとは言わなくなると思うが、本当に「弁証法の外へ向かう」ことになっているのかは疑問に思った。
しかし、こうならざるを得ない未来も訪れるのではないかという一抹の不安が僕にも確かによぎった。もう既に、一部の人間は遺伝子テクノロジーを駆使し、新たな遺伝子を生み出すことによって、人間自身の改良が行なわれているだろうし、そのような技術が全世界に普及されるとき、人類という種自体の進化は凄まじい速度で進み、ダービーシャーの提唱したような未来が実現するかもしれないと思ったからである。

おわりに

反省すると、あまり良い記事が書けなかった(失笑)

こういう本との出会いも含めて、複数人で各人が決めた本を読むという経験が重要なのだろう。次に活かしたい。


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