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音楽嫌いな俺の唯一の想い出の曲「大地讃頌」

音楽嫌いな俺にとって、
唯一の想い出の曲。
唯一歌った曲。その名も「大地讃頌」

それは忘れもしない秋。
朝の秋風が優しく俺を包み込んでいた。

今日も合唱コンクールの朝練。
俺にとっては口パクするだけの虚無な時間。

なんのために、俺はここにいるのだろう?

ははなる大地のあああーってなんだろう?
と自問自答する日々。

しかし、その日、事件は起こった。

男子がふざけ過ぎて、女子のリーダー格を泣かせたのだ。

「なんでみんなちゃんとしないのぉぉぉ!!うわぁぁあぁぁ!!!ひどぅぅぅよおおお!!」

男子たちは慌てふためいた。
一人の真面目な女子が大きな涙を溢して泣いている。
俺たちのせいで泣いている。

「わかったよ、悪かった。ちゃんと、ちゃんと歌うよ。みんなで金賞とろう。」

俺は人として屑かもしれない。ダメな人間かもしれない。でもひとつだけ誓っていることがある。
女は泣かせない。(もう泣いてるけど)
それがタマの呼吸創始者であり、タマ柱である俺の責務。

指揮者の男子が構えた。
俺たちは目を見回し、頷いた。
心がひとつになった瞬間だった。

指揮者の構える指揮棒が小さく動き始めた。

ははなーーーる
だいちーーーのーー
ふとーーーこーろーにーー
我らー(我らー)ひとのこーのー
よろこびーわーーあーーーるーー

だいちーーをーー
あいせーよーー
だいちーーーに
いーきーーるーーー

ひとのこらーーーー
ひとのこらーーーー

ひとのこたつちーーーーに

かんしゃーーせよーー

へいわなーーー大地ーを

静かなーー大地をーー

大地をーーほめーーよーー
たたえよーーー

つちをーーー

おんしょーーのーー
ゆたかーーな

ゆたかーーなーー
だーいーち

だーいーち

だーいーち

たたえよたたえよ
つちをーー

母なる大地の

あああああぁぁぁああっっ!

たたえよ大地を

ああああああぁぁぁっっっっ!!!

俺らは心を込めて歌った。
あの子の笑顔を取り戻したくて「あああ」のところだけ必死に歌った。
そしたらまた泣いた。

終わり

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