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〘異聞・ケルト7〙英雄への道のり5

〖アルスターサイクル7〗
 
 

 
 さてさて、クーフーリンの状況を七転八倒させるものを説明しておこう。最初にチラリと名前の出た『モリガン』を覚えているだろうか?

 彼女は、破壊、殺戳、戦いの勝利をもたらす、いわゆる『戦争の女神』。支配や権力を神の姿として具現化した存在と考えられ、予知と魔術で戦いの勝敗を支配すると言われている。

 彼女の詳しい記述にはこうある。

 大抵は美しい女の姿で現れるが、時に恐ろしい老婆の姿をしていることもある。
 戦闘時には2本の矛槍を両手に持ち、背が高く膝まである灰色の長髪を備え、鎧と灰色のマントを羽織り、真っ赤なドレスを着た美しい女傑の姿をして、2頭の真っ赤なウマに牽かれた戦車に乗って戦場に出現する。黒いカラスの姿で戦場に出現することも多い。彼女に目を付けられ、愛を受け入れたり交わったりした男は、その援助を得る事ができた。
 モリガンは妹のヴァハ、ネヴァンと行動を共にするといわれ、三柱を総称してモリグナと呼ぶ。

 クーフーリンに目をつけた(怖ーい💧)モリガンは『クアルンゲの牛捕り』の際に登場するのだが、面倒なのでここでは一人しか出さないと宣言しておくw

 ある時、美女の姿で現れたモリガンがクーフーリンを誘惑した。もちろん、あんまり好みのタイプじゃなくても、とりあえず彼女の愛を受け入れれば、与えられるのは『勝利』だ。
(戦いが終わるまでは逆鱗に触れない必要あるけどw)

 だが、彼はそれをはねつけてしまう。

「今は戦いの時。愛の為の時間ではないのだ」

 ……と断った挙句、援助してやろうと申し出た彼女に、

「女の力は無用」

 ……と言い放って一蹴した。

 ……って。

ちがーだろー!

おまえ、戦いの最中に逢引しまくってただろーー!!

しかも、美女仕様の勝利の女神モリガン様やでーーー!!!
 

 ……と、突っ込みまくりたい私の気持ちをおわかり戴けるだろうかw

 むろん、振り向かれなかったことに対するモリガンの怒りは凄まじかった。そりゃ、そうだろう。

 援助を欲しがる男こそいれ、断られたことなんてない。自分から無下にしたことはあっても、無下にされたことなんてない。

女神のプライド、ズタボロ

 
 怒りまくって正体を明かしたモリガンは、邪魔してやるとクーフーリンを脅したw

 まず、鰻の姿でクーフーリンの足を取り(おい?)、次は狼となって渡渉場に牛を殺到させ(おいおい?)、最後は群れの先頭の雌牛となって突進した(おいおいおい?)。

 ……なんだろう? 猛り狂った戦女神のわりに、ワリとやってること可愛くね?w しかも、これらを警告した上で行なった💧

 もはや、お人好し(神だけど)通り越してバカなん?w

 もちろん、クーフーリンはそれらを跳ね除けた。返り討ちに遭ったモリガンは、脚を切り落とされ、さらに目を潰された。

戦女神が半神半人に負けるなよw

 
 ……と、更に突っ込みたいw

 ちなみに、負傷したモリガンに言い放った決め台詞は得意のアレだ。

「おれは女は殺さぬ」

(いやいや、モリガンはん脚切り落とされて目を潰されてんねんで?w)

 けれど、お察しの通り、ケルトの神々&人々の心情は摩訶不思議。モリガンの中には『クーフーリン♡』みたいな気持ちが芽生えるというねw 価値観的に『強い男』至上主義なんやろか? いや、大事な要素と言えば言えなくもないけど、脚切り落とされて目を潰されてますからね? 女神だから新しく脚生えたかも知んないけどw

 とにかく、現代人には想定外の事態には目を瞑り、モリガンはクーフーリンの前に乳搾りをする老婆として現れた(どーゆうシチュエーションなんだろう?w)。身体には、動物の姿の時(鰻とか狼とか雌牛ね)にクーフーリンから受けた傷が残っていた。バレバレやねんな。

 老婆はクーフーリンに3杯のミルクを与えた。彼が1杯受け取るごとに祝福すると、老婆の傷が一つずつ癒やされて行く。

 もう、モリガンは完全に、

クーフーリン♡ラヴ!

 
 になっていたw

 一転して彼の擁護に回ったモリガンの加護で敵を打ち破るクーフーリン。まあ、たぶん、モリガンの加護なんてなくても勝ったと思うけど。

 何しろ彼は、罠を仕掛け、投石器で狙撃を行ない、野営地に夜襲を敢行し、敵から1日あたり百人もの戦死者を出したと言う。
(誤射などはあったが、基本的には殺す価値があると認めた者だけを殺した)

 しかし、これでアルスターが完全に勝利した訳ではなく、戦争が終わる気配はなかった。モリガンの加護に、果たして効き目があったのかは怪しいw

 ある時、戦いを終えたクーフーリンは怪我を負っていた。彼の元を訪れた光神ルーグは、自分が父であることを明かし、息子を3日3晩眠らせて癒やしの技を施した。

 ところが、クーフーリンが眠っている間に援軍に来たアルスターの若者一団が、コナハト軍に殺されてしまった。

 目覚めたクーフーリンはショックを受け、自らの意思とは関係なく、あの恐るべき『ねじれの発作』に襲われた。敵も味方も分からない怪物に変貌した彼は、コナハトの野営地を強襲し、殺された一団の6倍もの敵を虐殺したのである。

 この恐るべき事件の後も一騎打ちは続くが、そもそもこれは、クーフーリンの力を恐れたコナハト側からの提案だった。

 休戦の調整がつかないコナハト側は焦り始め、アルスター王と袂を分かち、コナハトの客将となっていたフェルグス・マク・ロイヒの「毎日、一人の戦士を出してクーフーリンと一騎打ちを行なう」という条件を提示した。フェルグスというのは、クーフーリンの養父スタルアウの兄弟で、つまりクーフーリンにとっては叔父である。

 この条件は、マハの呪いが解けるのを待っていたクーフーリン側には都合がよく、コナハト側もその意図を見抜いてはいたが、背に腹は代えられなかった。

 コナハト軍が弱いのか、クーフーリンが強過ぎるのかw

 コナハト軍は次々に戦士を一騎打ちの場に送り出し、時にメイヴは協定を破って複数人をけしかけもしたが、ほとんどが生きて帰って来ることはなかった。 

 コナハト軍が弱いのか……以下同文。

 また、叔父フェルグスの説得で、クーフーリンは次回はフェルグス側が降伏する、という条件で降伏することに合意した。

 だが、結局、クーフーリンはフェルグスや親友フェルディアドと戦うことになるのである。

 つづきます。
 
 

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〖参考文献/出典/引用〗
※昔の資料を引っ張り出すことが出来ず比較的新しめの資料群

◉井村君江 著: ちくま文庫
『ケルトの神話―女神と英雄と妖精と』
◉池上良太 著: 新紀元社
『図解 ケルト神話』

〖その他〗
◉遥か昔々に読んだタイトルも作者名も覚えていない数々の本やマンガの記憶のカケラたちと妄想像の山www
 
 
 
 
 
 

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