ケルト_Irish

〘異聞・ケルト1〙猛犬と呼ばれし英雄

〖アルスターサイクル1〗

 
 
 
 ケルト神話は、基本的に口で伝承されて来たものだ。現在、伝わっているものは、ほとんどが後にヨーロッパなどでまとめられたもので、多分にその影響を受けた状態で残されている。つまり、伝言ゲーム感は否めない。

 文化然り、宗教然り、想像然り。

 そんなケルト神話における、アイルランド・アルスターサイクルに欠かせない、いや、神話そのものと言っていい英雄クーフーリンについて語ろうか。

 まるで見て来たように語る妄想像の世界を。

 私は個人的好み(←)で『クーフーリン』としているけど、

クー・フーリン
クー・フラン
クー・フリン
ク・ホリン
クー・クラン
キュクレイン

 などとも表記されている。

 とは言え、これはある出来事がキッカケで呼ばれるようになった呼び名で、産まれた時に付けられた名は『セタンタ』。

 少年時代のある事件がキッカケで、彼は『クーフーリン』と呼ばれることとなった。

 その事件を語る前に、まず、神話に残るクーフーリンの説明をしておこう。

 父親は太陽神ルー、母親はアルスター王コンホヴォルの妹デヒティネと言う半神半人として、セタンタは生を受けた。
(母デヒティレの再婚相手スアルティウ・マク・ロイヒが養父となっており、彼が実父であると言う説もあるほど。養父に大切にされていたようで、そのことを示すエピソードはいずれ紹介したいと思う)

 クーフーリンとなった彼は、御者ロイグが駆る、愛馬マハの灰色とサングレンの黒毛二頭立ての戦車に乗る戦士である。

 前述したと思うが、クーフーリンはとても美しい容貌で、髪は百本の宝石の糸で飾られ、胸には百個の金のブローチを付け、左右の目には7つの宝玉が輝いていた。

 だが、戦意が高まり興奮が頂点に達すると『ねじれの発作』を起こし、怪物のようになる。身体は皮膚の下で回転し、髪の毛は頭から逆立ち、1つの眼は頭にのめり込み、もう1つの眼は頬に突き出る。筋肉は巨大に膨れ上がり、英雄の光を頭から発する。ある時には大きな唸り声をあげ、土着の精霊のすべてが彼と一緒に怒号し、コナハトの戦士を恐怖に陥らせたという。

 追記しておくと、当時のアイルランドは五つの地方に別れており、アルスター物語は北方に位置するアルスターを中心としたものだ。上記にあるコナハトは、アイルランド島の北西部、アルスターから見ると南西部に隣接する地方で、コンノートとも呼ばれている。コナハトの東側にミース、ミースの南側にレンスター、一番南側にマンスター地方がある。

(まったくイメージ湧かないと思うので、ズルしてアンチョコの地図を載せておきます。汚い指はウォータマーク代わりwww ←必要ないくらい写し方がドイヒー)

画像1

[出典:『図解ケルト神話』池上良太著(新紀元社)]

 母がアルスター王の妹であるため、セタンタが産まれたのはアルスターの首都エヴィン・マハ。その南方に位置する現在のダンドーク周辺が、後にクーフーリンの領地となったムルテウネ平原である。

 さて、セタンタが『クーフーリン』と呼ばれるようになった話に戻そう。

 実父から受け継いだ血のなせる技か、セタンタは幼少の頃から人並外れた力を発揮した。

 彼が7歳の時である。

 コノア王(アルスター王コンホヴォルのこと)が鍛冶屋のクランの館に招かれた際、王はセタンタを誘った。その時、彼はハーリング(※注・アイルランドを中心に行なわれている屋外スポーツ)の最中であったため、終わってから行くと答えたのだが、王がそのことをクランに伝え忘れてしまったため、館には番犬が放たれてしまった。

 そうと知らず、後から一人でやって来たセタンタは、襲って来た番犬を絞め殺してしまったのである。

 猛犬として名高い自慢の番犬を失い嘆くクラン。伝え忘れたことを申し訳なく思う王。そして、番犬に勝る戦闘力を見せつけたものの、やはり申し訳なく思うセタンタ。

 恐らく、3人の間でこのような会話が繰り広げられたと思われる。

「クラン殿。知らなかったとは言え、申し訳ないことをした」
「いや、セタンタ。元はと言えば伝え忘れた私の責任だ。クラン、すまなかった」
「セタンタ様にお怪我がなかったことは幸いでした。しかし、当家には番犬の代わりが……」
「クラン殿。なれば、殺してしまった番犬の子を、おれが立派な番犬として育てる。仔犬が育つまでは、おれが代わりに番をしよう。それで容赦願えぬか?」
「それはありがたい。そう言うことであれば、ぜひ」

 こんな感じであろうか。

 申し出た通り、セタンタがこの犬の仔を育て、さらにその仔が育つまで番犬としてクランの家を守ることになった。

 また、このことを戒めとして『今後、決して犬の肉は食べない』と言うゲッシュを立てた。

 この事件をきっかけに、セタンタはクーフーリン、即ち『クランの猛犬』と呼ばれるようになったのである。

 補足であるが、上記の『ゲッシュ』とは『禁忌』のことで、当時、当たり前のように立てられていた。

 この禁忌を犯すことによって災厄や不利益を被ると言われており、『犯さるべき』ものとして認識されていたのだが、ゲッシュを守ったことにより、却って災難を被ることも少なからずあった。

 現にクーフーリン自身も、自ら立てたゲッシュにより、負の運命を負うことにもなるのである。

*****

 ……と、まあ、見てきたように書きましたがwww

 序盤、こんな感じなのですが、いくら現代とは違うとは言え、そして半分神の血を引くとは言え、ついでに神話とは言え、7歳の子どもが猛犬じゃなくても犬を絞め殺しただけでおったまげたそこの貴方。

 安心してください。私もおったまげましたwwwいや、ありえませんw

 ランドセル背負い始めて、黄色い帽子かぶって、母親に「車に気をつけて行くのよ。知らない人についてっちゃダメよ。寄り道しないで帰るのよ」と送り出される年齢ですやんwww

年齢間違えてるんじゃないか?
現代と計算方法違うんじゃないか?
もしかして、2年に一度しか歳を取らないんじゃないか? など(それでもおったまげるけど)

 しかしながら、ここでおったまげたままだと、この先にもこんなような白目出そうな謎設定がこれでもか、と言うくらい出て来るので、そこは流してお読みくださいw

 そもそも『ねじれの発作』の描写、読んでも頭の中にイメージ湧かないです。想像すら出来ませんwww

 次回に続きます。
 
 

~*~*~*~*~*~

〖参考文献/出典/引用〗
※昔の資料を引っ張り出すことが出来ず比較的新しめの資料群

◉井村君江 著: ちくま文庫
『ケルトの神話―女神と英雄と妖精と』
◉池上良太 著: 新紀元社
『図解 ケルト神話』

〖その他〗
◉遥か昔々に読んだタイトルも作者名も覚えていない数々の本やマンガの記憶のカケラたちと妄想像の山www
 
 
 
 
 
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?