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☆ひとつぶやき小説風☆

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読んで字の如く。
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記事一覧

『氷焔4』
それは胸にくすぶる埋火が、焔の形を取り戻すも、燃え上がる姿そのままに氷に閉じ込められたかの如き。
心も身体も忘れていたのに、何かがどこかに触れた時だけ火柱を上げ、火傷の痕をむし返す。
それは熱さに焼かれた傷なのか、それとも冷たさに──?
答えは出ず、雑踏に立つだけ。

悠凜
4年前
16

『氷焔3』
通り過ぎる匂いに、不意に心が立ち止まる。何の匂いだったか咄嗟にはわからないのに、自分がその匂いを知っている事、だけは憶えているのだ。
纏う人の全て──不思議なことに、直接的、つまりは物理的なもの──ばかりが薄れ、触れることなど叶わない匂いの方が己に刻み込まれている。

悠凜
4年前
16

『氷焔2』
忘れたい理由はない。けれど、憶えていなければならない理由もない。
過ぎ去ったあの人の顔、声、あれほどに追い求めた後ろ姿さえ薄れた。手と身体のぬくもり、感触、そして何より、あの人自身の形さえ、次第に朧気になっているのに。深く深く刻み込んだ事さえ、いずれは風化して行く。

悠凜
4年前
17

『氷焔』
消え去る事はなくとも、薄れゆくのが自然だろう。
忘れたくて忘れられない事もあれば、忘れたくないのに忘れてしまう事もある。それは、その願いに対する執着の成せる意地悪なのか、はたまた優しさなのか──それは私にはわからない。
ただ、ふとした時に引き留めるものは確かにある。

悠凜
4年前
24

『もれなくついて来ます』
◯県在住好青年Y氏が体験した話。
6月某日。Y氏は帳内会のMさんと、某テーマについて語り合う事を約束。
7月当日。約束の場所でY氏は、現れたMさんの背後に…見た!
(…い、いる…!)
そう。背後に憑いていたのは、唐揚げみたいな名前のヤツだった。
~終~

悠凜
4年前
14

【土曜絵画】~螢灯火/ホタルトモスヒ〔タンカイガ〕~

      『ホタルトモスヒ』  螢が初夏の風物詩だと知った時は驚いた。何故って、お盆にしか…

悠凜
4年前
31

『若桜』 若い桜を見下ろす。君が産まれた頃に植えられた桜も、年毎、見事に花を吹雪かせる様になった。けれど昨年まで共に眺めた君は、今年は隣にいない。成長した君は、まるで花びらか綿毛の様に未来へ飛び立った。私より遥か上空にいるはずの母さんと話しながら、今年はひとり桜を眺めるとするよ。

『鬼虎日記2』
─青鬼が穿いてるパン2は、何とモノホンの『オニドゥカタイガー』ブランドなのであった。この虎柄パン2、一見して虎柄に見えない、ところがまたナウでヤングな若者にバカウケで、模造品は増える一方。そして、同じ柄の短パン2もあることから、重ね穿きがまたイケてるワケだ。(つづ

悠凜
5年前
22

『鬼虎日記』
今日もオニガシマ国では、赤鬼頭領の指揮の元、鬼たちが労働に勤しんでいた。最近、若い鬼たちの間で流行っているのが超有名老舗高級ブランド『オニドゥカタイガー』のパン2。むろん、若い鬼たちには手が出る代物ではなく、再利用品だったり模造品だったり。だが、若き副頭領─(つづく

悠凜
5年前
17

『戀衣』
気に入りの衣の如、心に纏い続けた戀衣。手放せずにいるうちに、絹のようだった感触はいつの間にか消え、代わりに感じるのはざらつき。その感触に驚いて払うと、肩から滑り落ちた衣が、知らぬ間に色褪せている事に気づいた。衣更えの頃合い──気づいた時、それは足下から空に散って行った。

悠凜
5年前
27

『降り積もる祈りに』
夜更け──。静寂を妨げるかのように吹き上げた冬の風に乗り、降り積もっていた雪がきらきらと舞う風花となった。それは天より使わされ、何処へともなく散って行く数多の祈りの粒。再び出逢い、折り重なり紡がれる粒たちは、天の川とも見まごうほどに耀く繊細な光の結晶となる。

悠凜
5年前
37

『冬孤立』
すっかり葉も落ち切った冬の日。ふと見上げた木は立ち枯れ寸前だった。その姿が、記憶の扉の向こうにいる人を思い出させる。己を鼓舞すると言えば聞こえはいいが、実は追い込んでいるも同然だった人。孤高─ひとり立ち、決して他に交わる事なく─孤独とも孤立ともつかず、ただ木立の様に。

悠凜
5年前
28

『真冬に流る天の川』
かつて、共に夜空を眺めた人が言った。「夏と冬の川……違いがわかる?」と。「向き?」と答えると「そうじゃない」と笑う。夏の川は魂をのせるものだよ、と。「じゃあ冬は?」と問うと、少し目を伏せて「祈りだ」と答えた。その人の祈りは、今、あそこを流れているのだろうか。

悠凜
5年前
37

『熱冷え12』 ソ・コ・ニ・イ・タ・ノ・ニ──唇が動き、体が傾いだ。己が冷めた分、相手の熱量は増していた事に今気づく。だがもう遅い。こうなるしかなかった。そのまま重なった体が、その熱量とは裏腹に冷たくなって行く。薄れ行く意識の中、涙に濡れた微笑みは今迄の何よりも愛おしかった。~終