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『さがしもの』 読書がやめられない人ってこういう人

読書の魅力を再認識させてくれそうな本は、つい目に留まります。今日ご紹介する角田光代さんの『さがしもの』という本もその一つ。帯に上白石萌音さんの写真と推薦文があって、思わず手に取ってしまった。

読書の魅力は、この本がすべて教えてくれました。心の灯火となる一行が、きっと見つかります。

9つの短編とあとがきエッセイに解説。目次がわざと行頭をずらしてハートっぽくしているところから心をつかまれた。
その中から3つご紹介します。

旅する本

学生の時に古本屋で売った一冊の本と旅先の古本屋で2度も出会う。しかも1度目はカトマンズ、2度目はアイルランドの学生街で。どういう訳か本と一緒に旅をする作品。

本はまたもや意味をかえているように思えた。(中略)単語のひとつひとつが慎重に選び抜かれ、文章にはぎりぎりまでそぎ落とされた簡潔なうつくしさがあり、物語を読まずとも言葉を目で追うだけでしっとりと心地よい気分になれた。

さがしもの

死期が近い祖母から本を探せといわれて一生懸命探すが間に合わなかった。祖母が亡くなった後も探し続け、数年後に復刻版を見つける作品。死に際になぜその本を読みたかったのか・・

おばあちゃんがなぜあの本をさがしていたのか、わたしは知った気がしている。(中略)絵画のように切り取られた若き日の自分を見てみたかったにちがいない。画家が活字で切り取った、永遠にそこにあり続ける十代の自分と、家族と家を。


初バレンタイン

初恋の人にチョコの代わりに自分の人生を変えた本を贈った話。素直にチョコを贈った方が良いのか、でも本を贈りたいという葛藤が描かれた作品。

読み終えて、神さまありがとうとまず思った。神さま、この本が世界に存在することに感謝します、と。(中略)この本に出会うか出会わないかで私もだいぶ違っただろう、と思うことがある。

月日は流れ、結婚をする5人目の恋人の本棚で同じ本を発見する。どうやらその恋人も初恋の相手から本を貰ったという偶然。

***

偶然すぎやしないか?でもそんな偶然も本ならあるかもしれない。そんな偶然とわたしもいつか出会えるかな。

この本に出会うか出会わないかで私もだいぶ違っただろう、と思うことがある。

この気持ちは感じたことがある、それも何度も。きっとこれからも何度でもある。だから読書はやめられない。


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