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「ゼロで死ね」という本を突然渡された私はハンガリー行きの航空券を買った

ある日、私が職場のデスクで事務作業をしていると、職員のOさんから突然「ゼロで死ね」と書かれた本を手渡された。当然とてもびっくりした。Oさんは仕事のできる人で、普段あまり雑談をしない真面目な人だから尚更だ。おもむろに私のデスクに近寄ってきたOさんは、「この本は、YU-MIさんが感じてきた資本主義に対する違和感とも結びつく本なんじゃないかと思うんです」と言いながら、本を私に手渡した。

その本は、「DIE WITH ZERO ~ 人生が豊かになりすぎる究極のルール」という本だった。他人に興味のなさそうなOさんが私に本を薦めてくれるなんて!というキュンとした気持ちと、「人生が豊かになりすぎる究極のルール」というビジネス書感ただよう副題に対するちょっとした拒否感が同時に込み上げるのを感じながら、私は本を受け取った。

でもOさんがわざわざ薦めてくれたのだ、いくら副題が鼻についたとしても読まない選択肢はない。Oさんから本を受け取った数日後、私は何の気なしに「DIE WITH ZERO」を読みはじめた。そしたらめちゃめちゃいい本で、300ページ弱ある分厚い本だったけれど、その日のうちにノンストップで読み終えてしまった。

全体の要約は以下の要約サイトに譲るとして、このnoteでは私にとって一番印象に残った箇所についてだけ触れてみたい。

その箇所とは、人生をよりよいものにするには、「お金」「健康」「時間」という人生の3大要素のバランスをいかに取るかが大切だということ。特に、「多くの人は老後にやりたいことをやろうとしがちだが、老後は若い頃と比べると健康と体力が大幅に失われていることに気づく必要がある」という話が、胸に刺さった。

さまざまな経験を選ぶ際には、そのときの年齢と健康状態を考慮すべきだ。…端的に言えば、まだ健康で体力があるうちに、金を使ったほうがいい。…年を取れば、健康は低下し、物事への興味も薄れていく。性欲も減退するし、創造性も低下していく。かなりの高齢になり、衰弱してしまうと、できる活動は限られる。そうなったら、もう金は役に立たない。

引用:DIE WITH ZERO

その話が私にぶっ刺さったのは、私が自分の祖父母の姿をこの目で見ているからでもあると思う。私の家は健康長寿の家系で、祖父は現在96歳、祖母は90歳だ。二人とも杖も使わずに元気に歩くし、ボケてもいないが、やっぱり体力は年々落ちている。祖父は海外の絶景を特集したテレビ番組を観ながら「おじいちゃんも行ってみたいなあ」とつぶやき、祖母は「おばあちゃんはもう、やりたいことが何もない」とぼやく。二人とも、お金と時間は十分すぎるほどあるのに。

だから私は、「DIE WITH ZERO」を読み終えた数日後に、海外行きのチケットを買った。行き先はハンガリー。大学の時にお世話になった、いつでも人生を楽しんでいる先輩が働いている国だ。

「DIE WITH ZERO」のなかでは、バケットリスト(死ぬまでにしたいことリスト)を年齢ごとに区切って記す「タイムバケットリスト」を作ろう、とも語られている。私も実際にやってみたら、リストの項目ほとんどが、25歳~35歳の年代に偏っていた。例えば、両親とオーロラを観ること、ヨーロッパと南米をバックパックで旅すること、子どもを産むこと。タイムバケットリストを作ってみたことで、私が一生のうちにやっておきたいことのほとんどが、それなりに体力が必要なことだとわかった。

だから私は早速、ヨーロッパに旅に出ることにした。特にバックパック旅なんて、子供が産まれたりしたらしばらくできなくできなくなってしまうだろうから(幸か不幸か、その予定は今のところないのだけど笑)。

3年ぶりの海外旅行、初めてのヨーロッパである。今までアジアばかりを旅してきた私にとって、ヨーロッパ行きの航空券はちょっと腰が引けてしまうような値段だった。それで数日間悩みはしたものの、日にちが過ぎれば過ぎるほど航空券の値段は上がってしまうので、えいやと思い切って買ってやった。すると期待していなかった副次効果として、ちょっと贅沢をしたからこそ、もっと仕事頑張るぞ!というポジティブなエネルギーも湧いてきた。

しかも今回の旅では、ずっと行きたかったトルコを飛行機の乗り換え場所に選んだ。あえて乗り換え時間が13時間もあるフライトを選んだので、約半日間、念願のトルコも観光できる。想像するだけでよだれが出るほど楽しみだ。

ネット上で見つけた、信ぴょう性は極めて不確かな寿命診断テストによると、私の寿命はあと64年らしい。そのうち、自由に自分の時間が使えて、心身が健康でいられる期間は、いったいどれくらいだろう。残りの人生、思い切り楽しんで生きてやろうという野心を新たにすることができた、素敵な読書体験だった。Oさん、ありがとうございます。

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