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かつての推しが一般人になった話。

ここ最近、芸人の解散が相次いでいる。

たくさんのスターが産まれた東京NSC第9期生の中でも多くのムゲンダイドームや神保町公演のMCを務めたくさんの若手に慕われていたゆったり感。
アニメやゲームなど2次元カルチャーも取り入れた唯一無二のネタや企画が光ったジュリエッタ。
賞レースで着実に結果を残し、辞退はしたもののM-1で2年連続敗者復活戦進出したコウテイ。
実力者集団大宮セブンの中でもまさに「大宮ラクーンの劇場番長」「劇場の守り神」として君臨したコマンダンテ。

こうして名前を上げていくだけでもひと組ひと組にしっかり思い出があるのがすごい。

そして解散理由やこれからの進路に関わらず、みんなが「解散しないで」とか「思い出をありがとう」と呟く。
誰かが解散する度、誰かが引退する度、誰かの青春が終わっていくのだ。



今でこそ仕事に家事に大忙し、劇場通いが唯一の趣味に近い人妻をやらせてもらってるがつい数年前までは自由奔放な世間知らずだった。

仕事もそこそこに定時になれば派手なメイクをして街へ繰り出す。
酒の強さが何よりのステイタス、と言わんばかりに強い酒をあおりまくる。
泥酔しながらもなんとか帰宅し、夜遊びで荒れた肌の上にファンデを塗りたくって、ズキズキする頭を擦りながら出勤する。

そんな、1秒先の未来すら考えられない時代に初めて「推し」が出来た。
確かにあの時、私の人生はその人を軸に回っていた。
あまりにも懸命に追っかけをしていたのでついにはその人の身内にまで認知されていた。

その人は私が追っかけを始めた数年後に第一線を離れ、裏方仕事になった。
そして、コロナの足音が忍び寄る頃、関東を離れてしまった。
その時も好きだったし、誕生日にはメッセージを送っていたけれどコロナで会いに行けないことが続き気持ちは離れてしまった。



そして、つい最近の出来事だった。

きっかけは分からないがふと、その人のことを思い出した。
Twitterを見ると更新は1か月前で止まっていた。

最後の更新は、昔からの夢を叶えるために故郷に帰る、という内容だった。
その発表を知ったのは奇しくも昔応援していたジュリエッタの解散発表があった日だった。

その時
「あぁ私の青春って終わったんだ。
私の推しはもう会うことの出来ない一般人になったんだ。」
と痛感させられた。


今でこそ素敵じゃないかを初めとした芸人のファンをしている。
夫公認(黙認?)の元、行けるライブはとりあえず行っている。

しかし、あの時、その人を応援していた時と決定的に違うのは、もう未来を考えながら生きていかなければならない年になった、ということだ。

結婚し、常に子供のことや家の事、仕事のことが頭の中を駆け巡っている。
正直、未来を考えるってあんまり楽しくない。
だから、逃避のためにライブに行く。
地雷系女子が安く酔えるからとストハイを飲むのと本質的なところは近い。
でも、安酒でバットトリップに近い状況を味わうより、もっと心身ともに健康的な「飛び方」だとは思う。
ライブの後は「また頑張ろっか」と思えてるから。

それでもあの頃のように心から目の前のことを楽しめてた自分はもう、どこにもいない。
これが良くも悪くも大人になった、ということなのかもしれない。

青春はこの瞬間も刻一刻と終わりへと向かっている。
悲しいことも、嬉しいことも終わらないことなんてない。
だから、人は動機がなんであろうとこの瞬間を楽しみ、味わうべきだと思う。

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