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海外開発が描く日本『Last Time I Saw You』

そのゲームを見たとき、これは自分にとって大切な作品になると思う瞬間があります。

運命的予感。

月並みな言葉ですが、そんな感じでしょうか。

今回ご紹介するのは、ジュブナイルADV『Last Time I Saw You』です。僕のこれまでの人生経験や、今年ローカライズを担当した『恐怖の世界』とも、どこか重なるものを感じた作品です。

本作は80年代の日本を舞台とした謎の少女を追いかける少年「あゆみ」の物語を描いた2D探索ゲームで、現在30分ほどでクリアできるデモ版が公開されています。
(英語・日本語・スペイン語に対応)

本記事を投稿するにあたって『白昼夢の青写真』というSFアドベンチャーとどちらにするか悩んだのですが、考え抜いた末、もっと本作のことを色んな方に知ってもらいたいと思ったので、こちらを紹介することにしました。
30分程度のデモ版だけでも、可能性をビンビン感じたのです。
(一応言っておくんですが、お仕事では全く関わっていません)

本作の魅力ポイントは、何と言ってもこの「美麗なアートデザイン」と「日本の田舎町で呪いの真相を探る」という心惹かれるストーリーです。

海外開発
呪い
調査
80年代の日本…?

ぼやーっと何か見えてきた

『恐怖の世界』をプレイした人なら分かるんですが、要素だけ並べると笑っちゃうくらい色々似てて(もちろんゲーム性とかストーリーとか中身は全くの別物)、オカルトや呪い、あるいは海外開発が描く日本など、そういったゲームが好きな方には大変オススメのゲームとなっています。

ファム・ファタール(運命の女)
サロメの台詞

物語は、劇作家オスカー・ワイルドが書いた戯曲(演劇の台本)『サロメ』の一節から始まります。主題でもある『サロメ』という人物は、超ざっくり説明すると「男を破滅させる女」です。ワイルドのいた19世紀末は、妖女サロメのような「ファム・ファタール(運命の女)」という題材が流行っていました。男を惑わす、妖しげな女性っていいですよね。

ちなみに岩波文庫版ですと、(続きも含め)このように訳されています。

「恋の測りがたさにくらべれば、死の測りがたさなど、なにほどのことでもあるまいに。恋だけを、人は一途に想うてをればよいものを」

サロメ (岩波文庫)

この時点で、僕は「失恋」がテーマのゲームになるんじゃないかと予想しました。後々、非常に大事になってきそうなフレーズです。

何でいきなりコイツ熱くなりだしたん?と思われた方は、昨年「ゲームとことば」で投稿した、こちらを読んでいただければ分かるかもしれません。

夢の中に現れる謎の少女

プレイした後に調べたんですが、メインの開発者はスペインの方らしく、本作は『Night in the Woods』や『A Space for the Unbound』、『シェンムー』といったタイトルの影響を受けているそうです。海外の方がつくってるのに、日本への解像度が異常に高いゲームってスタジオが日本にあるパターンが多いんですけど、やはりと言うべきか、大阪に7年お住まいとのことでした。

「恐怖の世界」然り、僕は海外の方が描く日本が好きなのかもしれません。

ちょうど「白昼夢の青写真」とどっちを紹介するか悩んでたので、ビックリした

デモ版は本編のプロローグまでプレイ可能とのことなので、とりあえず最後までやってみようと思います。(ネタバレ注意)

目を覚ましたところで、主人公のあゆみ君があの夢について自問自答し始めます。

夢の中で出会った、あの女の子は誰なんだろう。
こっちは、君がどこで髪を切ってるのか気になる。

大きな台風がくるらしい

居間にいた親と話していると、この町に「大きな台風」がやって来るというニュースが。このお父さん、足臭そうだな…

町中、台風の話で持ちきり

外に出て町を調べていくと、不気味な神社や謎の祠が見つかり、どこか妖しげな雰囲気が漂い始めます。

このゲームの良いところは、怖い雰囲気を漂わせながらも、ちゃんと面白要素も入れてくるところですね。いくつかご紹介しましょう。

まずは、町でたい焼き屋を見た「あゆみ」君の台詞。

何で!?

きのこvsたけのこ戦争みたいなこと言ってる!?
どうして頭から……?

サイコだった

おかしいのは町だけじゃなかったのか…
何か癒やし要素とか無いのかな…?

!!!??!?!?!??
えっ!うわぁぁ!?まさか、"こっち側"が視えてるのか…!?
可愛い犬が出てくるゲームは神ゲー

犬を撫でる。ただ、それだけでいいのよ…

商店街に行くと、自販機の前で女の子達が何かコソコソ喋っていました。

何とは言わないけど「セロリ」みたいな名前のやつに引っかかると思う

やっぱ、この町の住人もどっかおかしいよね?
いや、まあちょっとはそういうところがあっても、変じゃないか…

突然、野球が始まるゲームは神ゲー

何日も同じ夢を見るうちに、あゆみはあの謎の少女のことが色んな意味で気になっていきます。

彼女が誰なのか、その正体は分からぬまま、台風がやってきます。
明らかに異常な量の雨が降ってきました。

さっきの友達と一緒に、たんぼ道を通って学校に向かっていきます。

全体を通して言えることなんですが、本作はビジュアルだけでなくテキストからも昭和の田舎町特有の情景・文化・風土が精緻に表現されているように感じます。

外の様子がおかしい

外は真っ暗になっていて、どこか不気味な雰囲気が漂っています。
こんだけ生徒が怯えてるのに、そのまま授業を続ける先生も先生よ。

異変を感じたあゆみ君は教室を出て、何が起きているのか探ろうとします。

怪異を倒すなら必需品です

そして、ロッカーからバットを見つけた純朴な少年が、不良顔負けの窓割りを披露してくれました。

外に出ると、「黒い何か」が校庭を飛び回っている。
現実世界に侵蝕する怪異。

この先、あゆみ君を待ち受ける結末とは、一体…?

2024年に本編リリース予定

今年の12月に、本作のキーアートが完成したと公式アカウントからアナウンスがありました。日本のアニメ映画のような集合絵で、あの可愛い柴犬だけではなく、尻尾が2本ある猫やカラス、狐なども映っています。本筋のストーリーラインに、妖怪や日本神話なども関わってくるのでしょうか。

昭和日本への愛をすごく感じるゲームで、これからが楽しみな一作です。

2023年「ゲームとことば」も、明日で最終日となります。

運命的予感というのは、そうそう訪れるものではないかもしれません。
こう言うとロマンチックですが、僕は結構な頻度で感じています笑
それほど、今年はたくさんのゲームを楽しめた年でした。
来年はどんな出会いがあるのだろうと、今からワクワクしています。

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