追憶～冷たい太陽、伸びる月～

• 探し求める者

• 第36話 2110年―踏み出す一歩①

「Pansy、この大陸では未だに男尊女卑主義の根強い国があります。ここでも女性の顔を覆う習性があるようなので、立場の逆転を装った方がよろしいかと」

「人間の歴史でもそう言われている。お前が口出しするほどじゃない」

　ならば、とOliveは返事を求めた。大陸境を越える前だからこその口調だった。

「布を出せ」

　Pansyは髪と口元を覆うと、Oliveの一歩後ろに立った。

「行くぞ、Pansy」

　Pansyは頷くばかりで、何も声に出さなかった。