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追憶~冷たい太陽、伸びる月~

  • 受け継ぐ者

  • 第49話 マシュマロに秘めた希望

 Pansyは呪文のように、医者を呼ぶな、と繰り返した。

「分かっているから……表示が隠蔽されて、たの」

 Pansyは、Lisyが落としたマシュマロの袋を指した。

「だったらどうして、毎日食べてたの? こんな……倒れるまで」

「この大陸、では……人間として食べられるものが、限られて。人間の、食生活を続け、たかった」

「言い訳はいいから、早くベッドに!」

 Pansyは弱々しくLisyの手を払った。

「それよりLisy……トビヒ族は私以外に、は……いない。いいね?」

「何を言っ」

「いいね?」

 Pansyの声は枯れていたうえに、喉を詰めたかのようだった。

 PansyはLisyに、他のトビヒ族への干渉を求めていなかった。

 代わりに、人間でありたいトビヒ族を人間として扱うことを強く望んでいた。そのうちの一体がPansyであり、Lisyはいつだってその渇望を叶えていた。体の仕組み以外は。

「だからって、こんな無茶はよくない」

「そんなことは、ない。思うように、生きられない、よりはマシよ」

「なら当然、解毒法だって知っているよね? さぁ、私は何をすればいいの?」

「絵を……アフリカに連れてって」

「絵じゃなくて、Pansyでしょ!」

「アフリカを感じさせて。私の、代わりに。あの方が、唯一褒めた……」

「Pansyも一緒よ! もちろん」

 Pansyの瞼が震えた。

「私はもう、何も望まない。Lisyはしっかり者だし……あとは、あの絵が現実、であれば」

 Pansyの指は震えていた。


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