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わが町の本屋さん

わが町の本屋さんになくなってもらっちゃあ困るのよ。
少なくとも10年近くそう考えて、本を買うのは極力わが町の本屋さんを利用している。

わが町は東京の北の外れにあるこじんまりとした市だ。多摩六都の中でも地味めで寂れた感が否めない、高齢化がだいぶ進んでいる町である。それでも、昭和40年代には大規模な公営団地が建設されて、小学校が10校もあるほど栄えた時代もあった。まあ……農地が多いので、その頃でも他の町の皆様には寂れていると言われていたのだけれでも……。それはさておき、栄えていた時代には市内には本屋さんが何軒もあった。私が暮らす、駅から離れた地域でも2~3軒はあって、家の近所で本屋のはしごが可能だった。それが今や徒歩圏内では本屋ゼロ。それどころか市全体でも駅前の西友が入っているビルの4階にある1軒だけになってしまった。元々は駅の反対側に2階建ての本店と要所要所に支店がある、わが町本屋勢力図の頂点に立つ存在だったのだが(そんな勢力図は存在しないわ)、徐々に支店が消えていき、本店と駅前ビルの2店舗でやっていた時期を経て、何年前だったか、本店を畳んでしまわれて、駅前ビルの1店舗に集約された。本店は2階がまるっとマンガフロアで、大変充実していた(シレッとBLコーナーもあったからね)。他ジャンルの1階より人が少なくて、心置きなくマンガの物色に没頭できたあの頃が懐かしい。
都心に出ると大型書店があって、なんといってもそれはとても便利なものだからついついそちらに流れていた頃もあったけれど、わが町の本屋さんがその1軒だけになってからは、紙の本を買うなら極力地元の書店! と決めている。最新のものなら割と多岐にわたって扱っているし、ないものは取り寄せてもらえばいいだけ。わが町唯一の本屋さんに消えてもらっては困るのだ。便利な通販があろうが、電子書籍があろうが、身近に本屋さんがあるという事実。これが大事なのだ。

先週、「町の本屋を国が支援することになった」というニュースを知った。

URLを貼るために検索した際、去年の9月に書店業界の1部が政府に支援を要請したという記事も見つけたので、書店サイドの働きかけがきっかけであったのかもしれないとも知ったわけなのだが、それはそれとして。

「読書イベントやカフェギャラリーの運営など、個性ある取り組みを後押しする方策を検討する」いきなりこの飛躍をしたのはなぜなのだろう
言い換えると、書店運営の根本の次と思われる事案を後押しすることが町の本屋さんの支援になると、なぜ考えたのだろう?

イベント開催やカフェを併設できるのは、現時点で体力がある書店なのではないのか。消えゆく危機に瀕しているのは、イベントができる可能性を持つ書店ではなく、小さな町の小さな個人書店なのではないのだろうか。だとしたら、後押しすべきはイベントやカフェではなく、もっと根本的な問題の解決なのではないのか。建物自体の修繕など店舗維持に必要なこととか。イベント開催以前に問題があるからなくなってしまうのだと1客に過ぎない私でも思い至れるのだけれども、いかがでしょうか、偉い方々? 体力ないのにカフェなんてやっちゃったらもっと大変な事態に陥りそうとも考えてしまう。
私としては、わが町の本屋さんに求めるのは今のままできるだけずっとそこにいてほしいだけだ。コロナ禍もありがたかった。SNSで話題になった書籍をすぐに扱ってくれたし、店員さんたちが本好きで、知識や情報を駆使しながら入荷してくれているんだなとわかったから。ここ2年ほどは、都心の大型書店で良さげな書籍の情報を収集してから、わが町の本屋さんで物色して扱いがなかったら取り寄せてもらったりもする。都会の本屋は私がお財布開かなくても、大丈夫だもんね。たぶん。
学者だった亡き父が、今は亡き近所の書店で頼んでいたほど本を注文するまでには至らないだろうけど、私は私にできる限りわが町の本屋さんで本を買い続けたい。
そう思っている!!!!

ちなみに、わが町唯一の本屋さんの向かいは図書館。駅チカの便利さから狭いながらも利用率は高いらしい。実際私も、予約した図書はいつもここで受け取っている。徒歩圏内にも図書館はあるので、休みの日はそこに行ったりもしていた。わが町には6つの図書館があって、取り寄せ予約システムが充実しているから、市内の図書館すべての所蔵図書を検索して予約して、自分い都合の良い図書館で借りることができる。図書館的にも充実した町なのだ。
町なのだ。町なのだが。そうだったのだが。

いつの間にやら指定管理が入ることに決まったそうで、週明けから移行作業のために2週間全ての図書館が休館となる。6ヶ所あった図書館は駅前図書館を中心とした3館になり、閉館となった図書館は蔵書倉庫となんらかで利用できる施設に変換されるらしい。どの民間業者が入るのかは明らかにされていない。指定管理に移行することは、市報や市のHPにも事前の告知はなく、図書館での予定の掲示や問題視した市会議員の問題提議でごくごく最近になって知ることになった。毎月届く市議会議員たよりをちゃんと隅々まで読んでいたら、もっと前にわかったのだろうか。
わが町の図書館も優しくて優秀な、満足しかない図書館だった。予約図書の移動もだいぶ早くて信頼できた。今もいらっしゃる司書さんたちが変わらずいてくれるなら、今までのサービスと変わりがないのなら、正直に言うと指定管理でもなんでもいいというのが本音だ。でも指定管理云々ではいい話を聞いたことがない。だから不安だ。使い勝手の良いままでいてほしい、今さらわがままを言うようだけど。

本屋さんも図書館も、生活保護でいうところの「健康で文化的な最低限度の生活」の「文化的」の要素を支えてくれる重要な存在だと思うのだ。お金がないときに本や新聞を読むなら図書館へゴ―! だし、大好きで堪らない本はちょっとずつお金を貯めてでも買いたい、他に余分なお金を使いたくないから市内にある本屋さんがいい。

今後も注視すべき案件。
もし万が一、私はベストセラー作家になるようなことがあったら、駅前本屋と駅前図書館の中心でサイン会を開いてどちらにもウィンウィンのイベントを開催する。たった今決めました。
……って! なんの話?!

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