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すごすご帰る・ご試着日記

久しぶりのご試着日記です。

欲しいなと思っていた高価な腕時計を銀座の旗艦店に見に行った。
ところが。
新型ウイルスですっかりお買い物活動が停止している間に、それは廃番が決定していたことが、まさかの旗艦店の店員さんから聞くことになった。

数十万円クラスなので、買う方だってそれなりに気持ちってものがあるわけですよ。
今日は試着だけして、今年の自分の商売の山を越えたあたりで来年の購入品として……という気持ちだったのが

「もう日本には3個しかなくて……すべて商談中で……」
「えっ」
「お作りがなくなるという………」
「えっえっ?」
「はい、大変………っ申し訳ございません!……」
「えっ???日本では買えないということ??」
「というか、作らなくなる……」
「………えっ」

つまり、もうない。

中古には流れてくるだろうけれど。
そういうことじゃなくて………。

「大変、申し訳ございません」
韓国の男性アイドルみたいな顔の男性店員さんがきれいに整えた眉毛を寄せてマスクで隠れた顔で精一杯申し訳なさを表現してくるけれど、私はマスクの中で口をぱくぱくさせた後、「帰ります……」ということになった。

すごすご、という言葉がこれ以上似合う場面もないという感じで、すごすごと店を出た。

すごすごが歩いて地下鉄に乗る。

欲しいと思ったものがすぐに店頭から消えるタイプの人生だけど、さすがにあれは定番商品だと思っていた。もう少し、発売から10年くらいは売ってくれると思っていた。

ショック過ぎて、乗換駅で降りて、別のハイブランドのお店に行く。
バッグを見たいと思っていたサンローランだ。

サンローランは、なにか冷たすぎる感じがして、そこまで興味を持っていなかったのだけど、むしろ定番に黒のチェーンバッグ、ショルダーバッグとしては的確な存在なのではと思うようになり、ウェブサイトなどを見たけれどどれも同じように見えるのでお店で見たいと思っていた。
思っていたけれど、そのタイミングで大型商業施設は閉鎖されたりということで、すっかり忘れていたのだ。

すごすごのまま、「チェーンバッグみせてください」とお客のいないサンローランでいう。
新作中心に並んでいたので定番商品は置くから引っ張り出されてきた。

実際に持ってみると、まずは重さが気になった。
でも、いくつか出してもらった中では、ウェブサイトで見た時に一番微妙だと思ったものがとても雰囲気が良いことに気がついたりもした。
気にしていたチェーンの長さも(調整できない)、わりと小柄な体型の私でも大丈夫だった。

思ったよりずっといいな、と思った。

でも、最初に思い描いていたあれこれが、時代のスピードに全然ついていけてないことを見せつけられて、ショックが止まらない。
すごすごという言葉しか出てこない。

秋の服、しっかりしたニットなどを買いたいという思いもあるけれど、社会の動きと自分の気持ち、そして最初に思い描いていたルートがイマイチかみ合わないことでとてもショックを受けている。
6万円くらいするニット欲しいんだけど……今は良いものが選べないような気がして、気持ちがとても弱っている。
(もちろんお財布も、引っ越しによって思ったより出費が勝っているので、生半可な選択はできない)


欲しかったんだけど……憧れだけではだめだし……そもそもモノがあり続けるわけじゃないってことは当たり前なんだと………わかっていたのに。わかっていたのに。でも数十万円以上するものは例外のような気がしていた。

そんなことないのに。
わかっていたのに。
わかっていなかった。

今回のご試着日記は、試着さえできない不戦負けだった。
もっと早く覚悟ができていれば。
金ならあるのだ、あったのだ。貯金は減るけど。

これ以上ちょうどよい、しかもコンセプトからデザインまで「うん」と言えるようなものと出会えるだろうか。
中古を探す方がいいのか。わからない。

今日は、もうすごすごと家に戻る。
そして「ポイント5倍デーだから、ドラッグストアでマスク買わなくちゃ…」という事をもやもやと考える。

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