ハードルを下げる頭の良さ

なにか事業を起こすみたいな話の時に、現代はIT起業が有名だから、ハーバードでMBAを、とか、東大在学中に起業とかそういう話題がもてはやされる。

でも、ほんとはそんな事全然重要じゃないんだなと、実際うっかり事業を起こしてしまってわかった。

頭の良さは重要なんだけど、それは学校の成績がいいという意味の頭の良さじゃない。

頭の良さにはいろんなパターンがあるっていう事を、やっとこさ理解した。

起業時に、経営者として重要なポイントは、「クオリティの低さに目をつぶってでも実物を作る事」であり「クオリティが低くても売る肝の太さ」であり、「その後確実にクオリティをあげつづけていく体力」だったりする。

ニッチにはまるいいアイディアがあれば、確かにうまくいく確率は上がるだろう。今までにない画期的な問題解決法を開発したら、それもいけそうな気がする。そういうものを生み出す頭の良さは、もちろん重要だ。
けど、それらがどれほどイケてるものでも、机上の空論にすぎない。
それを、現実に引っ張り出す時、それは必ず弱点があったり、クオリティが実用に耐えない程度しかない事は当たり前にある。

そこで「勉強のできる頭のいい人」は、クオリティをあげる事に力を注ぐ事が多いのかもしれない。
だってそのほうがうまくいく確率は上がるし、ダメになる確率は下がる。

でも、わたしが実際にやってみてわかったのは、経営者としてはどれだけクオリティが低くても、まず商品化してしまう事の重要性だった。

最初はすべて確率に過ぎない。

という事は、どんなに素晴らしいものでも机上の空論でしかない。

そうだったら、確率じゃなくて、実際の数値を出さないと、話は進まない。

でも、勉強っていうのは机上の空論をいかにうまく組み立てるのかというものなので、確率をあげるほうを頑張ってしまう事はありがち過ぎる。
机上の空論でうまくいかなくては、現実でもうまくいかない、というのは一理ある。でもそれもしょせんバーチャルな話じゃないか。

起業時、一番大事なことは、クオリティが低くても商品として作り出してしまう事だと思う。そして、売れる・売れないは市場に聴くしかない。
しかしそこで大失敗するのも困るので、取り返しがつく範囲で小さく始める。
これを小さくはじめて失敗をたくさんするべき、みたいなことを言う向きが結構いるんだけど、失敗をするために実行するんじゃないって事だけは肝に銘じたい。成功するために、よりよいものをつくるために、クオリティを高めるために、ハードルを下げて販売するんだけど。

頭の良さが仇になるのは、この「クオリティを高めれば売れる」という机上の空論がバーチャルなものだとわからなくなってしまっているという時だ。

ここで重要な頭の良さは、本当にクオリティをあげるのが目的なら、販売しながらでも目的は達成できる、というルート変更ができるという事だと思う。
高いハードルを飛び越える頭のよさではなく、ハードルを下げる頭の良さ。
多分それが大事なんじゃないかと思う。

でも、それは今までの頭の良さの基準にはないものなので、単なるズルじゃないかとか思いがちなんだけど、そうじゃないって事に気づいて、感情の折り合いもすんなりできる人じゃないと、たぶんできない。

起業するタイミングで必要な頭の良さはそういう事だけど、その後のうまくやっていくための頭の良さはまた違ってくるし、そういうところで学校での頭の良さみたいなのが生きてくるわけだから、頭がいいに越したことはない。

でも、最初の最初は、やっぱり、成績のよさに裏付けられた頭の良さはあんまり役に立たないし、それがなくてもできるっていうのはありがたい事だったりする。

(おわり)

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