ないなりに考えるのが大事

ちゃっかり、宝飾系方面に仕事が広がりそうになっている。

このド不景気時代にである。

わたし(たち)が作るものは、普通の銀座で買うようなものではないという事だけは最初から決まっている。
だってもう日本には銀座がある。ニューヨークには五番街が、パリにはヴァンドーム広場が。そこで売っているものはそこで買うべきだ。

ちなみに当店は、資本金もないし、融資も受けてない。ので、経済力もあまりない。

さらにいうと、現在日本国内だけでもオリジナルジュエリーブランドを立ち上げようとしている人は山ほどいて、ミンネやクリーマなどの手作り雑貨販売アプリのおかげでジュエリー作家が量産体制になっている。

ザ・レッドオーシャン!

赤潮大発生。

おまけに貴金属価格は高騰の一方で、素材を手に入れるのも素人さんには金額面でも負担になっている。

もひとつおまけに富裕層人口が減っている。富裕層の総資産はさらに吸い寄せられて増えていても、使う人が減っていれば一人当たりの使う物の数にはどうしても上限が出てくる。

かといって、中流家庭はもういない。
リッチ・プレミアム商品、特に宝飾関連はかつては「お子様に受け継いで使えるのでよいものを」とか言って売り続けていたけど、もう今更行き届いちゃって「一生もの」「子供に引き継いで」というセールストークに威力がない。
だいたい一生ものと思って買ったのにあっという間にデザインがダサくなる現実がここ50年に何回ありましたか!?

宝石の資産価値なんていうのも、もうねえ。
「このルビーは中古なんですけど、古い指輪とかから外して腕は貴金属として回収されるんですけど石は500円くらいで売られるんですよね」と。
なまじっか鉱石なので、加工が難しすぎて、よほどガラスのビーズのほうが高く売られていたりするわけです。

(逆にいうと、安い値段でもいい石を買う事もできるという事です。ただし、いわゆる資産価値が出るほどの大きいものではなくて、細かなものになりますが……細かくても、よいものが手に入るというのはやっぱりプロのルートがあってこそ)

つまりですね、お客さんがいない。

本当にいない。

いや、なんかこう、販売側と買う側の乖離がすごすぎて。
別にダイヤだのサファイヤだのを持っていなくても生きていけますからね。
すべての人がお客さんになることはないんです。
ただ、古代から人類史を振り返ってもジュエリーがない時代は存在せず、したがってジュエリーがなくなることは今後もないでしょう。
ジュエリーの世界も民主化したかのように見せて、ずっと身分制度が残っているのです。そのことを、お客さんは知らないし、お客さん側から売り手や作り手になった人も、実はよくわかっていないで始める事が多いんじゃないかなあと思います。
(物事が進んでいくと、いまだに貴族層がこの世界にあることを思い知る)

それなのに。
宝飾系に突っ込んでいっています。

しかもちゃんと最低でも数万円以上から、とりあえずは100万円くらいの商品を。
もちろん普通に国内で通販という訳にはいかないので(してもいいけど)、今の私のビジネスとはまったく違う形にならざるを得ない。
そもそもできるのかどうかも定まっていないのだけど、でも100万円の商品を作る機会なんてそうそう回ってこないし、そもそも私はジュエリーデザイナーでも職人でもないのに、そういう手配が回ってきたというのはもうめぐりあわせ。

私のところの強みは、いくつかあって
・ジュエリーの超ド級素材の産地に直通(確定)
・ジュエリー界の巨匠たちには思いつかないチープな発想(確定)
・ジュエリー以外の伝統工芸技術者を巻き込めるキーマン(確定)
・基礎的なジュエリー製作が可能(確定)
・海外富裕層の販売ルートが見込める(かもしれない)
あたりがあげられると思う。

まだ、なんにもわからないんだけど。

影も形もない状態なんだけど。

でも、ないなりに考えよう。
最初からなんでも完璧にできるわけじゃないし、こんなチャンスがなければこんなふうに考える事もなかったし、はじめて知った事もたくさんあったし、なにより最高に楽しい。
知識も経験も、お金もないけれど、そんなのは何の足かせにもならない。

100万円の商品なんか誰が買うの?
というけれど、それで適正価格の世界はまだまだある。
今まで2万円以下でなんとか!と考えてきたことのせせこましさを反省しました。
安く作ることで、社会全体の価値を削り棄ててしまっていたという側面があるのだ。自分たちは安くお客さんに買ってもらえてよかったねって感じだけど、それだけじゃダメなのだ。

とはいえ、今の商売ではそんな高いものは売れない。
買う人がいるかもしれないけど、アフターサポートとかむずかしいし。

そんな中で、ちゃんと価値をそのまま値段に落とし込むものを作れる機会がもらえるというのは、偶然にせよなんともありがたいチャンスだと思います。

「ダイヤモンドついてる箸でご飯が食べたい!」
「スタバの紙コップホルダーにもダイヤモンドつけよう!」
「あれとあれをこうしてファビュラス18禁♂モチーフだ!」
「インスタグラムに強制削除されたい!」

チープな発想はとどまるところを知りません。

つよく生きていきたい。