私は遊廓を取材したいです。活動費のサポートをお願いします。
はじめに
2010年前後から、かつて国内全域に偏在した娼街(遊廓、赤線など)の取材を続けています。昭和33年に全国(沖縄県を除く)で施行された『売春防止法』から半世紀以上が経ち、現在では建物や文献といった記録はもとより、当時を知る人々も鬼籍に入りつつあり、記憶もまた急速に失われつつあります。
こうした時代背景から「遊廓の歴史が失われる」といった言葉も散見されます。一方で、Amazonで検索すれば、遊廓に関連する様々な新旧の書籍が提案されてきます。決して大量ではありませんが新刊も一定の間隔でリリースされています。
その意味では、遊廓の歴史が失われるどころか、量的にはむしろ蓄積されて、増えてさえいます。私は量ではなく、質的な喪失すなわち「変質」が問題の本質であると考えています。
「売春(性売買)」というテーマであるだけに、歴史的価値が軽視されたり、センシティブなことを理由に歴史そのものが不可視化されてきました。あるいはその刺激性から、美化や残酷話といった体で消費されています。
私はこれまで遊廓を始めとする娼街にまつわる様々な歴史を残すため、取材活動を続け、これまでおよそ500箇所前後の娼街を訪ね歩いてきました。(取材活動とは別に、2016年には遊廓専門の出版社カストリ出版を創業〈2017年にCCC株式会社から出資を受け、法人成り〉)
当記事は、取材活動費のサポートをお願いするため、現在のテーマや、これまでのコストの使途、成果などをご紹介するものです。
現在の取材テーマ
現在は以下のテーマで取材しています。
北前船と遊女
遊女の墓
テーマ『北前船と遊女』では、北前船寄港地にあった遊廓や、そこで従事した遊女の歴史を調べると同時に、地元における言説の扱いを取材しています。
2017年、文化庁が設ける文化遺産保護制度である『日本遺産』に、北前船の歴史文化「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間〜北前船寄港地・船主集落〜」が登録されました。
当制度の説明には保護を目的とすると同時に「観光資源として積極的に国内外へ発信する」とあり、歴史や文化財の活用を目指す制度でもあります。当noteでは、「観光言説に飲み込まれた遊廓の歴史は実態をかけ離れて美化されたり、反対に悲哀化されたり、あるいは判断を放棄して不可視化される」ことを伝えてきました。
したがって『日本遺産』に認定された(認定を目指す)地域では、遊廓にまつわる歴史の扱いが劇的に変質していくものと私は予想しています。
観光言説に飲み込まれる前の遊廓の口碑を拾い上げ、また既に飲み込まれた後では、遊廓の歴史はどのように地域社会に記述されているのか、これを調べます。
次いでテーマ『遊女の墓』は、遊女と俗称された様々な形態の娼婦(私は娼婦では無く、性奴隷であったと認識しています)すなわち飯盛女、私娼、娼妓、酌婦などのために造られた墓石や供養碑を調べています。
遊女という存在や集団は別にして、各遊女個人については、ごく一部を除いて、大半はまったくの無名な存在です。一方で、歴史的に無名なはずの遊女に、当時の人々は墓を造って弔い、以後は地域住民に守られ(あるいは忘れられて)残されてきました。
近年「技芸に優れた遊女」「遊女は娼婦ではなく芸能人」といった言辞を見掛けます。これを私は好意的な意味での「再評価」と看做すことができません。
下層社会に寄り添っているようで、実際には反対に、下層にさらなる区分を設け、そのほとんどを占めていた「技芸に優れない遊女」「単なる娼婦扱いされた女性」の不可視化を一層加速させるからです。
何ら学問的資質や芸能的資質を持たずに没した娼婦については、社会は関心を払う価値がないのでしょうか?
現在も取材の途上ですが、これまでの所感では、墓のある遊女は必ずしも諸芸に秀でた遊女とは限りません。墓が残る遊女の生前の姿を伝える挿話に少なくないものに、自分と同じ境遇や、さらに弱い立場の人たちを助けたというものがあります。
格差社会が叫ばれて久しく、弱者はさらに弱い弱者を虐げる抑圧移譲を生み出す現代。時代を遡れば抑圧移譲はより強固なものだったことでしょう。翻って、こうした現代社会のありようと遊女の挿話はなにを意味しているのでしょうか?
現代の〝遊女持ち上げ〟は、その実、娼婦蔑視の裏返しであり、これまで遊廓の歴史を忌避してきたことで、遊女(の立場に追い込まれた女性)への同情を失ったことが招いた結果であると推察します。こうした現代特有の歴史観・売春観を、遊女の墓を通して浮き彫りにしたいと考えています。
取材費
上記2テーマで調査を開始した令和3年度から現在に至る取材費を公開します。「旅行交通費」は電車代や宿泊代、「車両費」はレンタカー代、ガソリン代、高速道路料金が主な使途になります。「足」「枕」がコストの主を占めています。
令和3年度(2021年4月〜2022年3月)
旅費交通費:636,001円
車両費:138,977円
合計:774,978円
令和4年度(2022年4月〜現在)
旅費交通費:385,104円
車両費:137,963円
合計:523,067円
※勘定科目ごとに算出
※新聞図書費(複写代、資料購入費)、通信費、交際費(取材先への贈り物)、雑費(博物館等の入館料)、飲食費などは割愛。
※令和4年度分は随時更新
取材履歴
上記2テーマで取材を始めた令和3年以降の訪問地リスト。
令和3年度
2021年3月:山梨県甲府市
同5月:静岡県伊東市
同8月:北海道羽幌町、(以下すべて北海道)芦別市、留萌市、増毛町、浜益、石狩市、小樽市、余市町、古平町、神恵内村、泊村、岩内町、磯谷町、歌棄、寿都町、せたな町、関内、江差町、松前町、福島町、函館市、浦河町、えりも町、釧路市、厚岸町、根室市、別海町(野付半島)
同9月:北海道函館市、青森県鯵ヶ沢町、同深浦町、同外ヶ浜町(龍飛崎)
同10月:福島県会津若松市、同坂下町、静岡県浜松市二俣町
同11月:北海道江差町、広島県呉市御手洗、同大崎上島町木江、同鮴崎、同呉市音戸町、同竹原市竹原町、同忠海、同府中市、同三次市、同尾道市因島土生町、同家老渡、愛媛県松山市安居島、岡山県倉敷市下津井、同玉野市日比
2022年1月:愛知県名古屋市
令和4年度
同4月:静岡県焼津市、同静岡市、山形県山形市、同上山市、蔵王町
同5月:福島県南会津町、同桑折町、京都府京都市五番町、大阪府大阪市飛田新地、同貝塚市、同馬場、同秬谷、和歌山県串本町
同6月:福岡県福岡市、同北九州市門司区、大分県中津市山国町、同九重町、同佐伯市木浦鉱山、宮崎県延岡市
同7月:神奈川県三浦市
同8月:静岡県浜松市気賀、愛知県豊川市御油、三重県尾鷲市、同引本、鳥取県境港市、同松江市美保関町、島根県出雲市宇龍、広島県三次市、広島県広島市
同9月:長野県軽井沢町追分、同小諸市、同佐久市岩村田、群馬県太田市新田木崎町、同高崎市倉賀野町、同新町、群馬県安中市岩井板鼻
同10月:新潟県新潟市、同佐渡市両津湊、同多田、同小木町、同相川、栃木県下野市小金井、同宇都宮市雀の宮
同11月:福島県柳津町軽井沢、同湯八木沢、同会津坂下町塔寺、同高寺舟渡、同福島市、同二本松市、長野県軽井沢町追分、富山県富山市、石川県輪島市、同門前町暮坂、同定広、同黒島町、同福浦港、石川県小松市、同串茶屋町、福井県あわら市、同坂井市三国町、岩手県盛岡市、同津志田、同宮古市、秋田県横手市、同湯沢市、同院内銀山、
成果物
これまで取材を始めて以降、以下の成果物があります。主なものを取り上げます。
書籍(自著)
『紅灯の街区』(私製本、2015年)
『遊廓』(新潮社、2020年6月29日)
『赤線本』(イーストプレス、2020年11月15日)監修、解説執筆
書評
『産経新聞』2018年4月15日付『みちのく仙台常盤町 小田原遊廓随想録』(執筆・木村衣有子)
『週刊新潮』2019年10月24日『戦後のあだ花 カストリ雑誌』(執筆・都築響一)
『波』2020年7月『遊廓』(執筆・井上章一)
『サンデー毎日』2021年2月7日号『赤線本』(執筆・村松友視)
掲載(執筆、紹介、インタビューなど)
新聞(一般紙)
『秋田魁新聞』2015年3月11日付「遊郭の歴史、文化学ぶ」
『毎日新聞』2016年10月9日付「余録」
『毎日新聞』2016年9月26日付「性風俗史よみがえる」
『秋田魁新聞』2016年12月25日付「県内遊郭の記憶 後世に」
『東京新聞』2017年3月13日付「のれんの先は欲望の跡」
『朝日新聞』2017年3月14日付「列島をあるく イマトキ本屋事情」
『読売新聞』2017年5月11日付「復刻本、貴重な文献で注目 遊郭の世界 専門書店」
『毎日新聞』夕刊 2018年12月21日付「優楽帳」
『毎日新聞』夕刊 2020年1月27日付 「吉原 大衆の裏面史眠る街」
『読売新聞』夕刊 2021年6月25日付「旧遊廓 姿変え後世に」
『毎日新聞』2021年4月1日付「遊廓って?子供に聞かれたらどうすれば」
『読売新聞』2017年掲載日不明「とれんど 紙で歴史を紡ぐ」(執筆・論説委員 西井淳)
新聞(レジャー紙その他)
『東京スポーツ』2016年9月6日付「後世に残せる遊里の本を作りたい」
『日刊ゲンダイ』2016年9月17日付「本屋はワンダーランドだ」
『文化通信BB』2017年1月30日増刊「インディペンデントな遊郭専門〝版元兼小売り〟長岡義幸の街の本屋を見て歩く」
『夕刊フジ』2017年10月31日付「おとなの社会見学」
『日刊ゲンダイ』2018年2月18日付「キーワードの正体」
『新文化』2018年 9月27日号「遊郭赤線 ニッチな分野で存在感」
週刊誌
『週刊新潮』2016年12月18日号「若者が集う『吉原』新名所をゆく」
『週刊ポスト』2017年1月16日号「『昭和のSEX』を懐かしむ遊郭専門書店のベストセラーとは?」
『週刊エコノミスト』2017年3月21日「問答有用」
『週刊毎日』2018年6月22日「暖簾にひじ鉄」(執筆・内館牧子)
『小説新潮』2017年6月号「遊廓の外」執筆・渡辺豪
『週刊新潮』2021年2月18日「創刊65年特集」
『週刊新潮』2018年10月18日号「遊廓ツアー」
『サンデー毎日』2018年5月27日 「『山谷・吉原』散歩がじわり人気『花街マニア』が垂涎の遊廓書店も」
『週刊文春』2018年5月3日号「昭和のエロスに耽る女性たち」
『フラッシュ』2018年5月22日号「フィールドワーク吉原とフーゾクの歴史学」
雑誌
『ブルータス』2017年1月1日15日合併号「危険な本屋大賞」
『散歩の達人』2016年11月号「日本唯一の遊郭専門書店 吉原の地に誕生」
『東京人』2016年12月号号「Close up TOKYO」
『クイックジャパン』2016年11月1日「失われゆく遊廓跡の中から」
『NUMBER 1 SHINBUN』2016年11月号「Red-light reading matter」
『おとなの週末』2016年11月号「東京タイムトリップ 第14回 吉原」
『an・an』2017年3月1日号「夜の盛り場は文化の発信地」
『an・an』2017年3月8日号 「ニューオープン続々。いま吉原がアツい!」
『散歩の達人』2017年4月号 「夫婦で歩く吉原」
『ポパイ』2017年5月号(撮影場所提供)
『UOMO』2017年8月号「雑談」(山本康一郎と対談)
『TVブロス』2017年8月26日号「おしえて何故ならしりたがりだから」(執筆・片桐仁)
『VOGUE』(2017年8月号)
『ポパイ』(2017年9月号)
『Unplugged』2017年9月号)
『芸術新潮』2017年10月号「遊里史専門書店ただいま進化中」
『スタジオ・ボイス』2017年10月号「BOOK SELECTION」
『おとなの週末』2018年2月号「本屋めぐり」
『月刊ソフトオンデマンド』2018年3月号「エロスゴ異人録」
『ポパイ』2018年7月号(商品紹介)
「吉原の正解」『ブルータス』2020年7月15日
「客層の高年齢化が進む吉原は閑散」『東京人』2020年8月号
『ポパイ』2019年4月9日 お気に入りの店紹介
『散歩の達人』2019年4月号(店紹介)
『GRIND』Vol.92 2019年4月9日号
『ポパイ』2019年5月号(店紹介)
『性の健康』2018年9月20日号「シリーズ日本人と性 吉原を歩く女たち カストリ書房の革命」
『波』2018年10月27日「遊廓観光ダークツーリズムのすすめ」
単行本
『東京をバスで散歩』(京阪神エルマガジン社、2016年11月4日発行)
「東京こだわりブックショップ地図』(交通新聞社、2017年2月24日発行)
略歴
昭和52(1977)年、福島県生まれ。2015年、遊廓専門出版社・カストリ出版を創業。2016年、吉原遊廓跡に遊廓専門書店・カストリ書房、開店。2017年、CCC株式会社から出資を受け、法人成り。
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