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ござさんソロコンサート「ござの日2023」感想文(昼の部・夜の部他)

はじめに

 2023年5月27日 「ござの日 2023」 。木の温もりの中に音が優しく包まれる葛飾シンフォニーヒルズ モーツァルトホール。
 この日は、一般発売日に先駆けて『ござ式 ピアノ演奏裏ワザの極意』(YAMAHA)(通称 #ござ式 )も発売される記念すべきライブで、わたしは昼の部・夜の部ともに参観してきたので、遅くなりましたがそのレポートです。

 念のため付け加えますと、これはライブに行ったことでマウントをとっているアカウントではありません。それぞれのご都合によって、ライブ参観できないこともままある昨今、こういうツールで臨場感を共有していこうという意味でレポートを書いている個人的趣味のアカウントになっています。特に今回は、ござさんのライブでは珍しくライブ配信がなかったため、少しでも現地の空気感をお伝えすることに腐心しました。行った方も行けなかった方にも、ござさんの魅力が少しでも伝わりますようにと願っています。
 ただし残念なことに、わたしは音楽関係者でもなく絶対音感もない、ピアニスト・ござさんを単推ししている一般人です。音楽的知識もないので、方々に間違い等があるかと思われます。その際には優しくご教授いただけますと幸いです。

ロビーのようす

 2023年5月27日 #ござの日 。ライブ当日であるとともに、ござさんが数年にわたって温め続けてきた『ござ式 ピアノ演奏裏ワザの極意』(YAMAHA)の発売も併せて行われるという、重ね重ねの「ござの日」。出版を見据えてライブを5月末に設定したのかもしれず、ファンとしても誇らしい日。
 ご本(これ言い得て妙すぎてずっと使ってる)について言えば、当日昼前にござさんご本人から動画があがった。丁寧にサインされていたのを見て、こんなに丁寧に書かなくてもいいのに…と心配するほどだった。サインしすぎでござさんが腱鞘炎にならないか心配しつつ、やっぱり欲しいファン心理🙄
会場1時間前にすでに100人超えの行列。ファンの期待度が垣間見えます。某絵師様と並んで会場入りすると、フラワースタンドがずらり。いい香りがして華やかで、ござさんへのファンの愛情たっぷりな雰囲気でした。

Twitterのリンクを貼って動画が見られるようにしていましたが、リンクではなく静止画にしました(2023.7)
ご本のデザインに寄せた色遣い、ござさんカラーの緑。バルーン。お祝いの気持ちが溢れています。

 ロビー活動(笑)を終えホールに入ると、ホール内はざわめき少なめ。小さい声もよく響くホールだからみなさま遠慮気味にさざめいている。
 板の上には、スタインウェイD274のみ。
 照明はナマ(色がついてない)。今回もスピーカーを通さずに生の音だけで勝負するんだ、というござさんの静かな情熱をひしと感じるステージ組みになっている。

モーツァルトホール。木の温もりの中にスタインウェイ。美しい。

 このスタインウェイ、現行モデルよりも評価が高いよう(とのネット情報)で、もちろん音楽素人のわたしにはわからないが、少なくともござさんとは相性抜群。圧倒的な低音域の突き上げ感があって、気持ちよさそうに弾いてらしたのが幸せ感の源だった…     
 ちなみにわたしの座席は昼も夜も下手側🙂くじ運が絶望的に悪いのか、大体いつも真ん中より後方の下手側。今回も手元は見えそうにないけれど、幸い鏡面に映る手はオペラグラスを使って確認できる位置。夜の部はほぼ中央だったため、音響については最高の座席だった。

☟暗闇メモ再掲。サイズ感こんな感じ。

暗闇でライブ聴きながら手元で描いたので汚くて恐縮ですが、サイズ感を覚えておきたくて描いたもの。参考までに。

昼の部


 昼の部は13時会場、14時スタート。
 1ベルは「鐘」の音。これで実は「そして鐘が鳴る」演奏するんじゃ…と期待したことを付け加えておこう。演奏はされなかったけどいつでもお待ちしてます!(誰)
 さて影アナはスタッフさんの肉声でアットホームな雰囲気。観客500〜550くらい?幸せを共有した人数。
 定刻より少し遅れて、ござさん登場。わあっという歓声とともに満場の拍手でお出迎え。
(…とTwitterで書いたあと、20230605「ライブありがとうございました&本発売開始!」Youtube配信にて、「メイク等すべて終わってあとでベルトつけようねって言っていてトイレに行った後、初めてのベルトを着用しようとしたら痩せすぎていてベルト穴が合わず、ベルトを切っていた」「でもそういう不確定要素でメンタルを揺さぶられることもないくらい準備していた」という、めんこいようなかっこいいような心配なようなエピソードが披露された。…痩せたもんね…ちゃんと食べて元気にお過ごしいただきたいもの。)

 そんなベルトを含めた?お衣装については、ゆうかげも参加させていただいたERAちゃんキャスで詳しくどうぞ!☟

 ここからセトリ順に個人的な感想を書いていくが、丸数字で曲順を示していく。それぞれ長かったり短かかったりの差はあるがご了承を。

①宝島

「宝島」軽やかに指ならし。ちょっとペンタトニック風味な慣らしから、いつのまにか始まったのはジャジーな「宝島」!ござさんの夏曲でOPにふさわしい🥹
  ライブでも何回か弾いてるけど、和音を変え、洗練度がupしてる。ウォーキングベースもカコイイし、はねるリズムが軽やかでジャジー。ピアノ一本とは思えない音の厚みで、ぜいたくな「宝島」。そういえばピアノだけで聴くのはねぴらぼ1以来?…
  ござさん1曲目はいつも88鍵すべてに挨拶するように左右に動く曲を弾いてる気がする。そんな晴れやかな音。

  話は逸れるが、上記キャスの中で、ERAちゃんが「宝島久しぶり。温存してたのかな」とおっしゃっていたけど、ござさんご自身が振り返り配信の中で「宝島作曲者の和泉さんが亡くなったこともあって、追悼になるから然るべきときまで温存していた」という趣旨の話をされていて、これには目を開かされた。
 介護職の経験から、お年で亡くなられることに対して必要以上に湿っぽく応対することのないように見えるござさんだけれど、折に触れ「音楽で」追悼することはなさってきた。チック・コリア氏然り、京都で「まちがいさがし」でなく坂本龍一氏の曲を弾いたこと然り(後述)… ずっと愛聴し演奏し続けてきた「宝島」についても深い思いがあったんだなあ…と今更ながら思った。
 ござさんはいつも潔癖なほどフラットで、公平性を保つ努力をしている気がする。特別に誰か・何かに対してだけ肩入れし、偏向を指摘されることがない。これまでも、大声で追悼のための演奏を宣言することはなかったけれど、チック・コリア氏のときも坂本龍一氏のときも「しかるべき時」を見定めて追悼演奏をしてきたんだ!という点に、あらためてグッときた。ピアニストなのでピアノで語る。その徹底した姿勢がわたしはやっぱり好きだ。

(MC1)「あ、あ、あ」☺️こんばんはと挨拶しそうになり「こん…にちは!」
 行列ができてるみたいで…と照れながらご本販売への御礼(なのだ、あれは)。
 4〜5年前は解説動画をよく上げていたことや、月ピ連載などをまとめた自分なりの弾き方を本にしたこと、構想1年くらい、ちまちま2年執筆…というようなことをメモなしでお話。本の執筆も含め【自分のピアニストとしての歴史を振り返るライブ】という説明に、もはや涙腺が緩みまくる🥹
 何度か、「ピアノがうまい愉快な方たちと一緒に弾かせていただいた」ねぴらぼのことを引き合いに出したのも印象的。ねぴらぼは、ござ史では外せないよね🥹と思っていたら次の曲紹介「secret base」! わーん😭

②secret base〜君がくれたもの〜

 「secret base」。ござさんにとってきっと大切な曲で、アルバム「EnVision」にも所収。ござさんのピアニスト人生を象徴する最高の選曲で、ござさんの深々と長い礼がそれを物語っているかのよう。
 美しい夏の日を思わせるあのイントロまでキラキラ増し!good tensionを保ちながらジャジーでセクシー!アレンジもいい意味での緊張感も、ねぴらぼ1に近かったけど、あのとき以上のとんでもない音数に仕上げてきてる。
 しかも音数多いのにキレの良いペダルワークと強弱のおかげで一音一音聴き取れるし、なんなら会場のおかげで爪が鍵盤に当たる音まで耳が拾える最高の音響!葛飾シンフォニーヒルズ様ありがとうございます!
 MCで3曲紹介したから、クラシックコンサートなら拍手は遠慮するところだけれど、1曲1曲のあまりの素晴らしい演奏に、会場中思わず大きな拍手が!その一回一回を愛おしむように、ござさんは曲おわりにいちいち立ち上がりお辞儀してくださった。
 いろいろ思う人はいるだろうけど、あれはござさんの誠意だし、そうやって主客が感動を共有することこそライブの醍醐味🥹

③アネモネ

 「アネモネ」。キャスでも言ったように、前回はせっかくの音が幕に吸われて残念だった。それがモーツァルトホールは信じられないほどの微弱音まで聴こえる会場だから、スピーカーを通さない生アネモネの、どこまでも美しく可憐な音を充分堪能🥹アルバム通り…でもアルバム以上🥹
 そしてこれもキャスで言ったけど、まだ「アネモネ」の名前すらないエンディングSEだったころから、ござさんはあのオリジナル曲を愛して使用していたし、わたしたちもあのメロディに馴染んでいた…
 そう思うと、「ピアニスト人生の振り返り」たるライブ構成の、演出の完璧さよ!

④葛飾ラプソディ

 「葛飾ラプソディ」耳に馴染んだござさんの葛飾。バンド編成もいいけど、ソロも全然物足りなさを感じず、突き抜けた明るさと豪快さがある。あのメリハリの効き具合は、もちろん世界に冠たるスタインウェイの美点でだろうけど、それを「引き出す」ピアニストの腕なんだろう…
 ところで有識者のかた、JAZZYな弾き方前と変わりましたか?打鍵のインパクトは強いけどERAちゃんが言ってた通り、指離れが最低限の減衰を支えるくらいで早くて軽い。無理なく軽やかだった。音圧をコントロールして、メリハリついてるのは今までも同じだけど、滑るように打鍵し、鍵が上がる反動でふわっと指が上がる感じ。スポーツで言うインパクトとテイクバックの変化?知らんけど。筋肉も変化してる気が…
 腱鞘炎の予防のため変えたかも…という考察に根拠なし。でも軽やかなのに音圧はすごいのには工夫があるはずと確信した。

 MC。直前まですごいピアノ弾いてた人の、不器用な水分補給の愛おしさ。水をそ…っと置いて確認ののち「大丈夫ですねっ」という間。もう動いてるだけで最高。
 アルバム曲を続けたので「月日が経つのは早い。アルバムを出して2年」との振り返りののち「次は最近の活動にちなんだ曲から」と紹介。

⑤まちがいさがし

 「まちがいさがし」を京都で弾かなかったのは、やはり教授の訃報があったからかもしれないと思って聴いていた。「本邦初公開」と紹介して弾き始めたそれがまたメロディアスでとんでもなく美しかったので。ひどく弱い理由だけれどここまで完成させた美しい曲を弾かなかったとしたら、そうとしか。
 ミドルから流れるように始まったAメロは、繰り返すほどにテンションが上がっていく。メロディの内声と和音の複雑な美しさにクロスする腕。まるで行き交い行き違う人々の営みのよう。Aメロ何度も繰り返していて、歌詞の意味を充分ご存知のござさんは心の中であの歌詞を繰り返しつぶやいていたんだろうなあと思うとほんとにエモい… アウトロまで美麗そのものだった。
 原曲、米津玄師verのイントロとか好きだしエフェクトもいいけど、ござさんのピアノは優しく美しく、傷つきそうな繊細さも弱さも含めて許してくれそうな慈愛に満ちていて、この曲好きだーと初めて思った。ござさんの手にかかると、それまで何でもなかった曲に恋することがあるが、そういう曲。

⑥Plastic Love

⑥「Plastic Love」これを弾いてる時の軽やかさときたら、爪が鍵盤にコツンと当たるくらいでサッと指離れしてるくらい。動画よりさらに軽やかだけど、2番では動画と違った右手に遊びもオクターブもad libもあってJAZZ味が強い。
 だからもちろんこれ以上ないくらい切なく美しい曲なのだけれど、弾きながら癒されているござさんの心地よさそうな雰囲気がなんとも優しく、こういう選曲のセンスが頭抜けているなあと思わされた1曲だった。MC「わりと大人しめな曲でした!」次は運動量の多い曲のフルに挑戦しました、とのござさんの紹介ののちなんと「TANK!」

⑦TANK!


弾く前に左手でタクトをとりリズム確認ののちいきなりあのかっこよフレーズ!音圧、音量、正確な早いリズム…全て完璧!記憶を手繰ってみても左手ベース音はオクターブ!(全部ではなかったけどどっちにしてもすごい)右手の金管パート部分(Saxソロプレイヤーの本田雅人さんのコピーだと20230603のYoutube振り返り配信でおっしゃっていた)のタンギングみたいなキレのよさはペダルワークなのかな?追加部分の右手もすごい(語彙力)!間奏のかっこよさ、ぜひあらためて動画にしてほしい!

 激しい曲のあとで息ゼエゼエのままMC。
「もう一曲はあとに残しておきます」「次の曲が考えられないくらい」「ちょっとロードするんでお待ちくださいね」「こんなこともあろうかと曲の頭文字を昨日覚えたんですけど、それも忘れちゃうんですね」「なんか弾きます!弾けば思い出すかも」
とまずピアノ弾くの、かわいすぎん…?指ならし後、無事曲順を思い出し、めでたしめでたしのござ語録だった。

⑧悲愴〜ござアレンジ

 「悲愴 JAZZver.」。両手がまるで別の生き物のように自在。
 左手が跳躍してる隙間を右手がすかさずうめたり、ウォーキングベースが入ったりと、前回のWinter Specialよりさらにスペシャルなアレンジになっていた。これはもちろん、前回充分に聴かせられなかったことへのリベンジだとわたしは解釈している。
 こともなげに弾く左手の跳躍がかっこよく、サビ、大サビと丁寧にテンポを落としていってラストを迎える、メリハリの効いた悲愴。右手の内声も前回と変えていてセンチメンタルで美しい。

⑨ジュ・トゥ・ヴ

 「ジュ・トゥ・ヴ」クラシカルでリズミカルなワルツ。こういうBGM的な演奏も耳に心地よい…こういう音詰め詰めじゃないゆったりしたワルツは左手の行き来が正確だからこそキマる。ロングトーンの中に包まれる幸せを感じた。

 続いてMC。あと2曲となりました、とござさんが言うと会場から慎ましやかに「えー」の声。「じゃあなんか…」と即興を弾いてくださることに。この辺りの自由度が、配信無しのライブの自由度なのかもしれない。

⑩Over the rainbow 、上を向いて歩こう

 「Over the rainbow」ござさんのこの曲が大好きで、前に何度も絵を描いてる。ジャジーでキラキラで、本当に雨上がりの風景を感じる。右手がすごくよくまわっていて、この即興から調子のよさが伺えた。
 歌詞にこういう部分がある。「虹の向こうの空は青く信じた夢はすべて現実のものとなる」これ、まさにござさんを示す歌詞じゃないか!一歩一歩ピアニストへの階段を登ってきたござさんの歩みに、年嵩のわたしは希望を見出してしまうのである。
 …にもかかわらず、まさかござさんは星に願いをを弾いてるおつもりだったとは(笑)おもしろすぎる! ☟過去絵再掲します!

「Over the rainbow」を弾く手 Goza’s Piano Channelのレトロな宣伝ポスターをイメージして。


 「Over the rainbow」に引き続き「上を向いて歩こう」も即興で。ござさんの久しぶりの上を向いて歩こう、ほんとに沁みた。涙がこぼれないようにって歌詞の前向きさは、ござさんの底なる明るさの通奏低音みたいだだ。ストライドの軽やかさ!大舞台での鮮やかな即興2曲に、会場は万雷の拍手で応えた。

 MC ご「最初は星に願いを弾きましたよね?」
観客「?」
ご「で、星つながりで見上げてごらん夜の星を弾きました」
観客「…?!」
ご「あれ?」
 ござさん、多分会場の反応よくご覧になって「あれ何弾いたんだ」とピアノに向かう。さすが第一言語ピアノのピアノ脳の人!
「あっ上を向いて歩こう弾いたのかぁ」 
 和やかに主客相和す、即興劇のようなホントのMC。隙のないMCでもいいのだが、わたしはこういう温かくてほんわかしたやりとりを大事に、小さな声を拾ってくれるところが好きなんだよな…

⑪ミックスナッツ

 後半戦の、ここでついに「MIXED NUTS」生演奏来たぁ!!ピアノに向かって、ちょっと集中する一瞬があり、怒涛の演奏のドラマがスタートする。
 キャスでも話した通り、あんなに完璧で素晴らしい動画があるのに、あれで満足してあれをなぞるに止まらないござさんの向上心が顔を出すような演奏には、もはや凄みさえある。コードネーム「ござ」の、他人に見せる顔のこの豊かさよ…
 サビ前の「幸せのテンプレートの上文字通り絵に描いたうわべの裏」のあのたたみかけるダイアトニックコードのとこなんか、動画よりずっと精度が高かったとメモしてる。どこまでも駆け上がる軽やかな指が神💘 短い隙間にすらグリッサンド入れるほど、音MIXED詰め放題超絶速弾き、疾走感添えの一皿だった…
 ござさんのMIXED NUTSはほかと比べようもないほど⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎でわたしの大好物です!

⑫清新の風

 ラストは「清新の風」。
 このライブの最初の2曲がねぴらぼ出身の曲だとすると、オリジナル曲でも人気の「清新の風」もやはりねぴらぼ出だ。この選曲の構成というか演出というかござさんの思いの丈が伝わるセトリ。
 最初の、付点音符(?って言うの?)が下がってくところがゆったりで、メリハリある演奏。CDよりややゆっくりのテンポで、あくまでも優しく曲を愛おしむ演奏で、何度も聴いているはずなのにうっとり。間奏は静かにシンプルに…そして徐々にボルテージが上がっていき、波をかき分け進みゆく帆船のように堂々としたエンディング!
 堪らず立ち上がると、前の座席でやっぱりうみいぬたんも立ち上がっていた。もちろん打ち合わせなしで、会場中から万雷の拍手が響き、ブラボーの小さな声が上がった。
 ござさんは常にも増して深々と向きを変え何度もお辞儀。湧き上がる拍手がファンとして本当に誇らしく、ござさんへの感謝しかなく思い切り拍手して自分が推しているピアニストを讃えた。

⑬Danny Boy

 encoreは恒例の「Danny boy」。再登場したござさんは、申し訳なさそうに指で1を示していた。「1曲だけですみません」の意味かと思う。
 キャスでも言った通り、これはライブ版「蛍の光」なんだと思う。さすがに蛍の光は弾けないけれど、観客に余計な期待を持たせず、スッキリ終わるための。そして指に馴染んでいて、大舞台でもad libできる曲。
 始まりはミドルでシンプルに美しく。少しジャジーに、そしてカントリー風に。どうとでも弾けるダニボだけど、これは初のアルバム「EnVision」のラストを飾る曲。ござさんのピアニスト人生を語るのに欠かせない要素の一つなのだと思う。

 これがわたしの見た「#ござの日 2023」昼の部。少し時間が経ったので、いろいろ間違っていたり記憶違いもあるかも知れませんが、あくまで個人の意見ですのでご容赦ください。

かなり前に描いた「Over the rainbow」わたしも大概しつこい性格だ(蠍座だから)。


夜の部

 ここから夜の部。
 ここまで散々書いてきたので、昼の部と違った点を中心に、ごく短くまとめてみる。

 昼の部で帰る方もいらしたけれど、多数のござさんファンは青砥に繰り出し休憩。わたしは、まるでカムパネルラを待つジョバンニのように、今聞いたばかりの演奏のことをずーっと考えており現世のことは何もできずにぼんやり人についていくだけ。ホントすみません。
 その間、絵を描く絵師さま、語り合う人々多数いたようです。同じござ式を手にした人々が、ござさんのソロコンについて爽やかな青空のもと語り合ってるの、この日の青砥はさながらリアル「ござ街」。

 ぼんやりしたまま再びロビーに入ると、#ござ式 に並ぶ長蛇の列。そうこうしているうちに「完売しましたー!」とスタッフ様の声がして、ロビーにいた方がたから、自然発生的に拍手が…!よかったねー!と誰彼なく声がして、本当に温かな「ござ街」。

スタオベ

 さて夜の部は通路すぐ後ろだけど比較的前方の座席。下手側で手は見えにくいけれどほぼ真ん中席なので、スタオベする気満々でメモ片手にござさんを待つ。
 時間となり、オンタイムでござさん登場。スタオベしたら、前のほうでやっぱりうみいぬたんも立ってました!…ってかござさん、髪が!ハーフアップ😍💘


暗闇でデッサン。汚い字はご愛嬌(ムーディーな雰囲気、風になりたいとメモが)

 きゃー!なのかわー!なのか、観客席から歓声が上がり、ござさんのはにかんだ笑顔がマスク越しにも伝わり、本当に感無量で着席。下手側(背中側)のわたしの席からは黒いシリコンゴムで結んでるように見えた。
 観客の密やかな期待のざわざわの中、ござさんいつものように右足を投げ出すようにキーボードベンチに座り指慣らし。

❶宝島+風になりたい

❶「宝島」指慣らし、昼とは違って夜のムーディーな雰囲気。指慣らし自由自在だなあと思っている間に始まった「宝島」が、全然昼と違うアレンジだったので思わず「えええ?」と声が洩れる。しかも「風になりたい」が混じってる!戻るの?と思うほど、恋人繋ぎのようにがっちり宝島に入り込んで、風になったり島に行ったりして転調、アルペジオを経て真ん中あたりメロディアスな夏物語の終演。聴いてる方もアドレナリン大放出の、大興奮アレンジ。
 これは座席の問題もあるかもしれない。わたしは昼の部よりは前方で、真ん中寄りの座席だったので、本当にピアノ筐体からの音を体のほぼ正面から受け止める座席だったから、よりリアルに音を感じられて大感激。

 1曲目から割れんばかりの大拍手が起きた。昼の部と明らかに違うサプライズ!
MC「昼も夜も見てくださっている方もいらっしゃるかもしれないので、途中変なこと入れようかなって弾いてる途中思いついたんですけど」
 弾いてる途中に思いつく???この大舞台で???
 …こういうところ、豪胆というか腹が座ってるなあと思う好きな一面だ。
 MCではここからの3曲を紹介しつつ「本を出版したんですけど、本日持ち込み分はすべて完売ということで、本当にありがとうございます」とお礼を述べたあと、ピアノの楽しさをかみ砕いて説明する本にしたいと考えていたことや、書きながら自分のやってきたことを振り返る機会になったと説明。
 彼は、いつでも自分で問いや目標を設定して、それに向けて努力できる人だ。初アルバム「EnVision」のブックレットには「和音によって伝わることは何だろう」と書いていて、その「解」としてあの複雑で美しい和音がある。彼が出した「解」に対して、わたしもファンとして応えることができたらいいなと常に考えてきた。
 ライブの度に、馬鹿みたいにこうやって感想文をしたためるのは、彼の立てた問いと出した「解」に対して誠実にありたいと思うからに他ならない。

Twitterリンクではなくスクリーンショットにしました(2023.7)

❷secret base+打ち上げ花火

 「シークレット・ベース」なぜシークレットベースは息詰まるような緊張があるんだろう。ござさん本人も観客もねぴらぼを思いだすからだろうか。
 ただその緊張感はgood tention である。演奏への期待である。その期待どおり、イントロからこの上なく美しく、けれど和音もメロディの内声も昼の部とは変えてきていてこれまたびっくり!
 そして間奏の素晴らしいアドリブのあと、短調の「打ち上げ花火」が混じるのにまた度肝を抜かれる。切なくもエモーショナルで、ジャズ特有の跳ねるリズムなんだけど、指に負担のかかるような叩き方ではなくて軽やかで優しい押さえで跳ねている…
 見どころしかないシークレットベースだった。そしてCDでお馴染みのアウトロへ…と思った瞬間に転調し、そのまま次の曲へ…

❸アネモネ

 「アネモネ」は切ない美しさに振り切った演奏だった。アネモネはいつも心に染みる。言葉は不要の、冬を超えてきた可憐な命の萌芽に対する喜び。
 ござ混ぜなし、混じりっけなしの純粋アネモネの美だけが咲き誇っていた。拍手ーー

❹葛飾ラプソディ+オーシャンゼリゼ

 「葛飾ラプソディ」昼の部はストライドの効いたかっこいいアレンジだったけれど、夜の部は少し大人っぽく「オーシャンゼリゼ」のシャンソン風味が混じったアレンジ。まるで両さんの下町の雰囲気と、おしゃれなパリジェンヌの雰囲気を行き来するような楽しさ満載のアレンジ。リズムも両方を行き来していて、間奏もシャンゼリゼ。生音で贅沢な最高のアドリブだと感じる。
 主旋律は内声すら変えて、ござさんご自身も心から楽しそうに弾いていらしたのが印象的。まさかこんなライブになるなんて…胸がいっぱいになった。

 MCも楽しそうに三方に丁寧に礼。脚が開いたままなのはご愛嬌。
 「いや〜自分でも何弾くかわかんないですね!」「配信の雰囲気でライブ感を楽しんでもらえたらうれしいです!」

❺まちがいさがし

 「まちがいさがし」昼の部よりしっとりしたナンバーになっていた。しっとりというより格調高いメロディアスなナンバーで、こんなに綺麗な曲だったんだというのを昼に続いて再認識。
 昼の部でまちがいさがしござver.に恋したはずが、夜の部でがっつり愛に変わった感じ。シンプルなスタートから、徐々に音量もテンションも装飾音も上がっていき、アウトロの美しさたるや…

❻Plastic Love+丸サ

 「Plastic Love」のアレンジも驚いたものの一つ。
 動画でも昼の部でもしっとり弾いていたけど、夜の部ではござ混ぜで「打ち上げ花火」が打ち上がったと思ったら間奏部分のアドリブにまさかの「丸サ」が!イメージとしては、実用的リズムパターン解説の「丸サ」が入ってきた感じで、戻れるの?戻るの?と思うほど。
 左足でリズムを刻んで、鉄壁のリズムを崩さずグルーヴ感溢れるアレンジに仕上がって本当にびっくり。サビ前だったか、右手と左手でカノン?追いかけっこになる仕掛け付き。即興なのかと考えると本当にすごかった!

 MC「いろいろ気づかれない程度に挟み込んでいますね」とござ混ぜについて言及。
 そして次のTANK!について「フル尺で練習しているのをバレちゃいけないと思いながら配信していた」と、ドキドキ感を語っていた。

❼TANK!

 「TANK!」これは昼の部でも散々書いたがともかく早い!トップスピードのまま駆け抜けていった印象。夜の部も折り返しだから、だいぶ体力も削られていると思われるが、つよつよの左手オクターブ、さらにクロスまで入って余裕を感じる。
 JAZZの弾き方について、腱鞘炎にならないよう叩きつけすぎないコントロールをしているという印象はここでも感じた。ペダルを細かく踏んでキレのいい管楽器表現をするのもやっぱりすごい。渾身の演奏だった。
 演奏が終わると、会場からどよめきと共に長く熱い拍手が湧いた。ござさん照れながらも本当に嬉しそう。

 MC「痩せたんです…摂るもの摂ってるんですけど、この曲のせいなんですよね」
 ゼエゼエしながら言っていることがすごい。
 「昼の部ではここでド忘れして、ちょっとピアノ弾いて思い出したんですけど、今度は忘れません笑」と言ったのちに「僕アレンジ悲愴」と紹介。

❽悲愴 ござさんアレンジ

 「僕アレンジ 悲愴」これは最初の一音で持って行かれた。Winter Specialとも昼の部とも違い、スローにスタートしながら左足でリズムを刻んでいる。足でリズムを刻むのは、その時想定したリズムを一定に保つためで、今までのコンサートではなかったことだ。十分に練習を積んで臨むコンサートは、リズムが体に染み付くまで練習していたはず。足でのリズム確認は、アドリブの証と捉えて良さそう。
 心地よいジャズの調べ。左手のウォーキングベースで聴かせたあとの、あれなんだろう?階段コード進行?で上がっていくとこ、いつも思うけどかっこいい。
 転調した後はキラキラクラシカルにまとめ上げ素晴らしかった。

❾ジュ・トゥ・ヴ

 「ジュ・トゥ・ヴ」ワルツのリズムに酔いしれるばかりの昼の部だったけど、夜の部はキレも良くて跳ねるリズムの可愛らしさにも心惹かれた。欲しい音がすべてあって、ござさんとこのスタインウェイD274との相性の良さを感じた1曲。

 水分補給後、MC。「よし!」というところを見ると、演奏への満足感があるような…
 「昼の部で弾き足りなくて即興で弾いたんですけど、自分は星に願いをと見上げてごらんを弾いたつもりだったんですよ」と昼の部のエピソードを披露。「これ怖い話なんですけどノープランで弾いて、袖に引っ込んだ後であれって気がついた」とおどけて見せる余裕があるMC。
 なんだかんだでござさんのお話はいつも楽しい。そして弾き始める即興が!

❿即興 Spain+情熱大陸

 夜の部の即興はなんと「Spain」!これ本当にかっこよかったんだけど、言葉だけではとてもあのかっこよさを伝えられる気がしない。まず右手だけであのイントロを弾き始めるんだけど、軽やかな右手の動きに音の数が合ってない(笑)脳がバグる。
 両手で弾くとさらにリズムが際立って、まぶすアルペジオのきらきら感が増してくる。クロスも出たなあと思う間に「情熱大陸」が密着したござ混ぜ。ござさんの裡にある熱く眩しい音への情熱が指先から溢れて、それはそれはお腹いっぱいの即興だった。

ここで多分MCが入ったと思うが、「Spain」の熱量にくらくらしてメモが取れなかった(スミマセン)…

⑪ミックスナッツ

 軽やかにキーボードベンチに座り…集中タイム。そしてお待たせ「MIXED  NUTS」!!!夜の部も容赦ない疾走感でトップスピードで駆け抜けたのだが、すごいのは全然スピードが落ちずもたつきもなく、全く集中が途切れずに演奏し切ったこと。直前が一人Spainだったのに…
 演奏後、拍手とブラボーの嵐で、ござさんは満足げな表情でたくさん三方にお辞儀をされていた。観客の満足の拍手は大きくうねって長く続いた。

⑫清新の風

 ラスト曲は「清新の風」。イントロのとき、少し弾くのを惜しむようなちょっと間を持たせた演奏だったのが印象的。終わりたくないな、いつまでも弾いていたいなあというござさんの気持ちを受け取ったように思うし、観客もいつまでも座ってござさんの演奏を聴いていない気持ちだった。
 出帆の背中を押してくれるような風、でもやがて演奏は膨らんでいき、間奏のアドリブから後ろアウトロまでちょっと聴いたことのないほどの壮大な風であった。

 弾き終わり、立ち上がったござさんを絶対にスタオベで送り出そうと決めていた。でもそう思った人はわたしだけではなく、わたしやうみいぬたんは早かったけど、間をおかずたくさんの人が立ち上がり盛大な拍手をござさんに向けた。
 アンコールを待つ拍手が鳴り止まなかったこともここに記しておく。

⑬Danny Boy

 encoreの拍手の中、出てきたござさんは、これまた申し訳なさそうに人差し指を1、と示して座ると、夜の部は正統派「Danny boy」。これ本当に胸に沁みるダニボだった。右手は優しくメロディを歌い左手はトレモロ。
 2周目は軽快に始まり、転調してカントリー風。もう一度転調して、最後は明るく高いところで歌い上げ、「ござの日2023」の締めくくりとなった。もちろん会場中万雷の拍手に包まれた。この時の感極まる感じは、浜離宮以来かもしれない。
 わたしはけっこう我慢していたんだけどついに「ござさーん、ありがとー」と叫んでしまいました。BBAなんですみません。ござさんも何か大きな感動を湛えた目で何度も何度もお辞儀し、それでも止まない拍手の中、両手をバイバイと振って、ぺこぺこしながら去っていったーー

「有料配信をしない」という選択をしたライブ

 さて、ここからはライブ全体のことになる。ERAちゃんのキャスでも言ったけど「ござの日2023」は、とてもエポックメイキングなライブだったと感じる。これまでのライブは吐くほど練習して完璧で圧倒的な演奏を観客に見せるというスタイルだったが、事務員Gさんのお書きになっていた「有料配信をしない」という選択によって、ござさんの演奏の幅が広がった(ござ混ぜあり、選曲の幅)ことはここに記しておきたい。
 アレンジ・ござ混ぜ自在のござさんにとって、混ぜちゃいけないという制限があるライブよりは、いつもの配信通りで少し気遣いが不要な分、気楽な部分はあったかもしれない。

 と言って決して練習をサボったり、手を抜いたりする人ではないから、吐くほどの練習の先に「自由に弾いていいよ」というステージがあるという選択肢も、あっていい。むろん、ござさんの活躍が広がっている現在、すでに全てを追いかけていけるわけではないし経済的な理由もあって、行きたくても行けないライブが増えてくることは否めない。そんなとき有料配信がないのはやっぱり落胆はするけれど…
 でも、事務員Gさんの書かれていることはとてもよくわかるライブだったのだ。下に少し引用する。

まず「やりたい曲」を書き出して、それらの権利を全部調べるのに時に数週間持っていかれる。「多分大丈夫」と思っていた曲が直前でNGになることもありました。せっかく練習していたのにこれにはガッカリですよね。
15曲の候補曲があるのに、いま練習が始められるのは4曲…という時もあります。本番日のギリギリまで待って「もうこれ以上待ったら、練習が間に合わない」と候補から捨てるケースも頻発しました。
「普段の生配信は自由に弾いてるのに?」というご質問を想定しておくと「それは無料配信だから」とか「Youtubeなどのプラットフォームは包括契約があるから」とか「個人なので黙認されているから」などのお答えになりますね。
もっと具体的にピアノ演奏者目線で言うと、アドリブが怖くなりました。例えばAという曲(許諾OK)を演奏してる最中に、自由な気持ちでBという曲(未許諾)を混ぜて弾いてしまうことは許されません。
「別の曲を弾かないように注意しながら弾く」というのは、かなりの自由が奪われるのです。

事務員Gさん「有料配信を『しない』という選択肢」のnoteより

おわりに〜ござさんの思いが形になったこと

 最後に、Twitterでは書けなかったことをnoteに記しておきたい。
 最初に書いたように、今回のライブは『ござ式 ピアノ演奏裏ワザの極意』(YAMAHA)(通称 #ござ式 )の出版日に合わせたライブ設定となっていた。これはわたしたちは後で分かったことだが、きっと会場による対面販売を念頭においてのプロモーションだったのだろう。
 しかも最初に書いたように、ござさんのサイン本を売るというファン垂涎のご本。たった今、「垂涎」と書いたが、本当に流れたのはうれし涙。直筆のサインなんて一生手に入らないと思っていた…ござさんありがとうございます(涙)

 でも、これまた会場に行けなかった方やいろいろな事情で買えなかった方もいると察したござさんのファンは、決してサイン本を手にしたことでマウントを取ったり威張ったりなどはせず、非常に常識的に密やかに、各々で楽しまれていた(ように思う)。
 したがってわたしも、ご本を汚さないようにそっと開いてニヤニヤするだけだったが、一方でまた「サインが見たい」「あの密やかに交わされている⚪︎種類とはなに」と思っていらっしゃる方の声も聞こえてくる。
 そこでこの、不調法に長い感想文である。こんな無駄に長い文字面の果てに、そっと添えておくのはまあ許容範囲ではなかろうか…悪意ある方はこんなジャングルの奥深くまでくることはないだろうし…
 というわけで、決して堂々と出回ることのなかったござさんのサインをおまけに置いておきます。

会場で友人の持っていたものと撮った(1冊しか買ってません)。金色のハンコが押してあって、わたしはメガネ。友人は鍵盤でした。一つ一つ手押しかと思うと涙が…白い紙は、サイン後挟まれたもの。これもござさんが挟んでくださったかと思うと捨てられません。…悪しからず。

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