見出し画像

寺尾聡「Reflections」(1981)

今回は最近の私のお気に入りの寺尾聡(今頃???)。
寺尾聡と言えば、やっぱり「ルビーの指環」ですね。とにかく当時、歌謡番組に出まくっていた印象があります。
そして80年代初頭のJ-POPにおける金字塔。それが本作。

当時は俳優の寺尾聡が歌手?? と漠然と思っていたものですが、実は彼、グループサウンズのザ・サベージというバンドのベーシストだったんですね。でも恐らくそのときは曲を作っていた訳でもなく、1968年に俳優デビュー。以降俳優に徹していた彼ですが、1981年に本作を発表。
「ルビーの指環」を作った際に、彼は石原プロの小林専務に意見を求めたところ、あっけなく却下。ただし石原裕次郎が「いいんじゃない」と後押しをして、レコード化に漕ぎ付けたという逸話が残ってます。

画像1

本作は私も何度か聴きかえしているのですが、正直、その良さが分かってきたのは最近です、お恥ずかしい話(笑)。実際コレを聴いた私の娘は、彼の異様に低いボソボソ・ヴォーカルに苦笑しっぱなしでした。
で、このアルバムですが、ミソは寺尾聡withパラシュート、いやパラシュートwith寺尾聡、と申してもいいかもしれませんが、彼等が全面的に参加、洒落た演奏をしていること。もちろんパラシュートとは当時の腕利きスタジオミュージシャン達が結成したフュージョンバンドのことなのですが。

更に驚くべきことに全曲、寺尾聡が作曲。そしてアレンジは井上鑑です。
演奏メンバーは井上聡(Key)、松原正樹・今剛(G)、林立夫(Ds)、斉藤ノブ(Per)、田中章弘(B)等。

寺尾聡がヒットを飛ばした直後、ニューミュージックにおいては稲垣潤一が台頭してきますね。彼はもちろん井上鑑が全面的にアレンジを手掛けたアーチストで、本作で聴かれるサウンドと、非常に酷似しています。

まずは①「HABANA EXPRESS」。当時の映像があったんですね~。バックの演奏はパラシュート部隊でしょうか(私は彼等の顔をあまり認識していないのですが、恐らくそうなのでしょう)。
しかしこの1曲目から斬新で、刺激的です。曲もいいけど、やっぱりアレンジが秀逸。イントロ&エンディングを聴けば、よくお分かり頂けると思います。歌詞も曲も演奏もかっこいい!!!

②「渚のカンパリ・ソーダ」の映像もありました。上と同じときの演奏です。それにしても寺尾聡の袖を通さないジャケットの着方、笑っちゃいます。でも様になってますね。
この曲、ユーミンでいえば「ルージュの伝言」みたいな感じでしょうか。つまり寺尾流ロックンロールといったところ(コーラスがロックンロールしてます)。あ、この映像でメンバーがアップになりましたが、やっぱりパラシュート部隊ですね。貴重な映像です。
ユーミンはキャラメル・ママというバンドが付いてましたが、寺尾聡はパラシュート。最近の寺尾さんのインタビューで、自分がルビーの指輪でブレイクしたのは、彼等(パラシュートの面々)のお陰とも語っておりました。

一瞬「いい日旅立ち」???と思ってしまうようなメロディの③「二季物語」。これは2部構成になっていて、前段が「いい日旅たち」風のメロウなJ-POP演歌といったところでしょうか。
後段ではスカのリズムがちょっと加わったようなシャッフルビートで、同じメロディを奏でていきます。
7分強の楽曲。この時代においては珍しい楽曲です。メロディは普通ですから、やっぱりアレンジで聞かせてますね。

⑤「ルビーの指環」・・・、ルビーの指輪ではありません。今、聴くとギターがものすごいファンキーですね。
イントロで聞かせてしまうナンバー。ドラムのグルーヴ感が堪りません。
そして寺尾聡の低いヴォーカル、松本隆の詞の世界観、シティサウンド的な演奏。そのどれもが、このナンバーにぴったりの要素となった素晴らしい曲です。

最初のシングルカットは⑥「SHADOW CITY」でした。この曲、何がスゴイかって、いきなりハミングなんですよね。しかも最初のフレーズはすべてハミング。歌詞が出てくるのは1分以上過ぎてから・・・。ある意味斬新です。

ちなみにその斬新さは⑧「ダイヤルM」っていう曲でも味わえます。この曲も最初はハミング。そして電話のコール音・・・「お掛けになった電話番号は、現在使われておりません。・・・」(切電)、そしてそれに続く歌詞、
 ♪ 気紛れで、誘うようなつもりが 思いがけなぬ 答えさ ♪
歌詞を踏まえたこのアレンジも大胆不敵、斬新です。

これら大人のポップスに挟まれる形で私の大好きな曲、⑦「予期せぬ出来事」が収録されてます。
イントロはちょっと陰りがあるのですが、歌い初めからポップス調に。このメロウなポップスがいい感じです。
これもある意味、演奏がソリッドでカッコイイ。

最近またCMに使われていて注目されている1曲が⑩「出航 SAURAI」。当時は全くスルーしていた1曲ですが、なんかCMで使われているのを聴いて、ジーンとしてきました。やっぱりエバーグリーンな名曲なんですよね。サビは感動的ですらあります。この歳になって良さが分かってきました。

「Reflections」、全10曲、捨て曲なしの名盤。ただし寺尾聡のヴォーカルは好き嫌いが大きく分かれるかもしれません。フュージョンがお好きであれば文句なしの名盤と感じるでしょう。

寺尾聡はその後、数枚のアルバムを発表してますが、商業的には失敗に終わってます。でも音楽に対する姿勢は直向だったようで、そのスタンスの違いから石原プロを退社したようです。ベストテンに出演していた当時も、真面目な人という印象でしたからね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?