全日本大学女子駅伝の展望

こんにちは、遊撃です。

今回は28(日)に開催が迫った第36回全日本大学女子駅伝対校選手権大会(杜の都駅伝)の予想をしていきたいと思います。

この駅伝は6区間38.0kmで争われます。それぞれの区間距離は以下の通り。

1区 6.4km
2区 5.6km
3区 6.8km
4区 4.8km
5区 9.2km
6区 5.2km

5区が一番距離が長いため、ここにエースを持ってくることが多くなっています。昨年も大東文化大の関谷夏希や東京農業大学の棟久由貴など、各校のエース選手がこの区間を走りました。

今年の予想に入る前に、昨年の結果を振り返ってみましょう。

優勝 名城大学   2時間5分15秒
2位 大東文化大学 2時間5分50秒
3位 立命館大学  2時間6分46秒
4位 大阪学院大学 2時間7分00秒
5位 関西大学   2時間7分04秒
6位 東京農業大学 2時間7分56秒
7位 日本体育大学 2時間8分12秒
8位 城西大学   2時間8分46秒

シード権を獲得した8校の順位とタイムはこのようになっています。

昨年、12年ぶり2回目の優勝を果たした名城大学は今年も戦力が充実している。青木和玉城かんな松浦佳南の4年生3本柱は健在。3人とも前回大会で区間上位のタイムを残しており、今回は区間賞が期待される。
昨年の大会でエース区間の5区を2位と快走した加世田梨花は、今年の日本インカレ10000mを制した。今や「学生最強」の呼び声も高い。今年も5区を走ることが予想される。
この4人に加え、今年はスーパールーキーが2人入学した。高松智美ムセンビ和田有菜だ。高松は大阪薫英女学院出身。高校駅伝では3年連続で留学生が集う2区を走り、1年4位、2年2位(日本人最高)、3年2位(日本人最高)と、圧巻の走りを見せた。今年は1年生ながら日本インカレの1500m、5000mを制した。持ち前のスピードに加え、スタミナも徐々についてきている。
和田は長野東出身。高校駅伝では1年生から3年連続でエース区間の1区を任され、2,3年と2年連続で区間賞を獲得。2年生の時は加世田(名城大、当時は成田高)を抑えての区間賞だった。今年1月の都道府県対抗駅伝でも、高松智美ムセンビを抑えて2区で区間賞を獲得している。スピードがあり、とにかく駅伝に強い。同じ長野東出身で、1年生から都大路を走った松澤もおり、この戦力の充実ぶりは他の追随を許さない。今年もダントツの優勝候補と言っていいだろう。
区間配置に関しては、3年連続で1区を任されている青木が今回も1区か。和田も1区のスペシャリストだが、1年5位、2年2位、3年2位と抜群の安定感を誇る青木がやはり有力。その和田は2区に回りそう。対応力のある松浦が3区で、スピード区間の4区に高松。5区加世田と6区玉城は昨年と同じ配置になりそう。改めて見てもこの充実ぶりは怖い。アクシデントがなければ、2位にかなりの差をつけての優勝も現実的だ。

大東文化大学は着実に力をつけてきている。初出場の時こそ途中棄権したが、その翌年から昨年まで6年連続でシード権を獲得。うち2位も4回あり、安定感は抜群だ。9月に行われた関東女子駅伝では、東農大に次いで2位に入っている。
チームを引っ張るのはエースの関谷夏希。1年生の頃からエース区間の5区を任され、一昨年は3位、昨年は区間2位の加世田(名城大)に30秒以上の差をつけて区間賞を獲得するなど、圧倒的な強さを見せた。今年の日本インカレ10000mでは、優勝した加世田(名城大)と約30秒差の6位だったが、持ちタイムでは加世田よりも上。今年も5区を任されることが濃厚で、力通りの走りができれば、彼女一人で30秒~1分の差は詰めることができる。だからこそ他の選手が粘りを見せたい。
4年生の元廣由美は昨年3区3位。同じく4年生の齋藤暁は昨年6区6位。この2人は安定して走れる力がある。注目したいのは1年生の鈴木優花だ。日本インカレでは5000mで5位に入っており、6月の学生個人選手権では5000mで優勝している。9月の関東女子駅伝でも最長区間の5区で区間賞を獲得している。走るたびに記録を伸ばしており、今後に期待したいランナーの一人だ。名城とは力の差があるが、十分優勝を狙えるだけの力はある。

近年、駅伝で負け知らずで、全日本も5連覇中だった立命館大学だが、一昨年に松山大学に覇権を譲ると、昨年は名城大学に完敗。黄金世代が抜け、ここ最近は駅伝だけでなく、トラックでも苦しい戦いが続いている。それでも実里・恵奈の加賀山姉妹やエース佐藤成葉には力があり、上位には絡んでくるだろう。ポイントになりそうなのは区間配置だ。昨年は1区の加賀山実里が11位と出遅れ、名城の後塵を拝す形となった。とはいえ、やはり経験がものをいう区間。今年も実里が1区を走りそうだ。日本インカレでは10000mで8位の結果を残している。
佐藤成葉はスピードタイプの選手で、この2年間は2,3区を走っている。今年も序盤で流れを作るために2区か3区での起用が濃厚だが、5区の可能性も否定できない。その5区の最有力は加賀山恵奈だ。日本インカレの10000mでは優勝した加世田と15秒差の4位と、力は見せた。長い距離をしっかりと走れるのも心強い。3年生の真部亜樹にはスピードがある。
4人がエントリーされている1年生にも注目したい。大阪薫英女学院出身の竹内ひかりは、2016年の高校駅伝優勝メンバー。アンカーとして優勝のゴールテープを切った。今年の都道府県対抗駅伝でも、6区2位と好走。宮崎の小林高校出身の吉薗栞は、今年1月の都道府県対抗駅伝で、高校生ながら社会人も走る1区を任された。区間賞を獲得した鍋島莉奈(JP日本郵政グループ)と14秒差の14位と大健闘。須磨学園出身の太田麻衣は日本インカレ1500mで10位とまずまずの結果を残している。スピードを生かせる区間での起用があるか。都大路出走経験のある常盤出身の坂尻有花もエントリーされている。優勝を目標にはしているが、現実的に3位以内を確保できるか、といったところ。

大阪学院大学はエース水口瞳の走りに注目だ。今年の日本インカレでは、優勝した加世田に次ぐ2位でフィニッシュ。5000mでも6位入賞を果たしている。1区か5区の中心区間を走ることが予想されるが、スピード・スタミナともに力を持っており、区間上位で走ることが期待できる。

昨年は5位に入った関西大学だが、これまで2年連続でシード権を獲得したことはない。初めての連続シード権に向けてカギになるのは森紗也佳の走りだ。昨年は関西インカレ10000mで2位になるなど成長を見せたが、今季はなかなか自分の走りができていない。彼女の走りがチームのシード権獲得を左右しそうだ。

東京農業大学が面白い存在になりそう。9月に行われた関東女子駅伝では全員が区間4位以内で走り、2位の大東文化大に1分以上の差をつけて優勝している。
10000mで学生唯一31分台のベストタイムを持っている棟久由貴がエースだが、日本インカレは欠場。状態が心配されたが、関東女子駅伝では3区を走り、大東文化大の関谷に次ぐ区間2位で走った。出走に対する不安はなさそうだ。3年連続で5区での起用が予想される。
棟久以外にも、日本インカレで5000m4位・10000m7位に入り、昨年は3区2位の佐藤有希、日本インカレ1500m5位とスピードのある駅伝主将の保坂野恋花、5000mで15分台のベストを持っている清水萌衣乃、3年連続で杜の都を経験している4年生の原田紗枝、関東女子駅伝の4区で区間賞を獲得した1年生の柴原佑紀ら、力のあるランナーがそろっている。名城を脅かすとすれば大東文化大か東京農業大のどちらかか。今大会注目したい学校の一つだ。

日本体育大学はエースの細田あいが抜け、今年は厳しい戦いになりそう。注目したいのは1年生の岡島楓だ。旭川龍谷出身で、3年連続で都大路を走った経験がある。今シーズンは、日本インカレ5000mで10位(1年生では名城大の高松と大東文化大の鈴木に次ぐ3番目)、関東女子駅伝でも2区4位と結果を残している。今後の軸になっていくと思われる選手だけに、今回どんな走りをするのか楽しみだ。

城西大学の注目はなんといっても上田未奈。2016年のアジアジュニア1500mで銀メダルを獲得するなど、実績は申し分ない。今年の日本インカレでは1500mは6位、5000mは12位と悔しい結果になったが、関東女子駅伝では最終6区を走り区間賞を獲得している。ここまでの3年間は1区、2区、4区と来ており、どこを走るのかも楽しみだ。個人的には1区を走ってほしい。

一昨年の覇者松山大学は、連覇を狙った昨年、7年連続で守ってきたシード権を落とした。今年はエントリーされた10人のうち、1年生が6人と若いチーム。シード権を再びつかむことが目標となりそうだ。
エースの緒方美咲は、優勝した一昨年は2区で区間賞を獲得したが、昨年は1区で悔しい思いをした。5000m・10000mともに学生トップクラスのタイムを持っており、彼女の走りがシード復権のカギを握る。主将の藤原あかねも昨年の悔しさを知っている。主要区間で4年生の意地を見せたい。注目は成長著しい3年生の岡田佳子だ。今年は日本インカレ3000mSCで初優勝。元々中距離が得意な選手だが、長い距離にも対応できるようになってきた。その日本インカレ3000mSCは、松山大学勢が表彰台を独占。2位の西山未奈美と3位の大内もかの2人の1年生もエントリーされており、出走すれば注目したい。

かつては初優勝から4連覇を達成した京都産業大学は、昨年シード落ち。その悔しさを糧に、今季は大きな成長がみられている。9月に行われた関西女子駅伝では、立命館大学を下して優勝。1区橋本奈津、4区安井香苗(1年)、最終6区棚池穂乃香の3人が区間賞を獲得。全員が区間5位以内に入る安定感も見せた。
4年生のエース棚池穂乃香は、今年の関西インカレ5000m・10000mで2冠を達成するなど、学生トップクラスの力を持っている。2年前に1年生ながら1区区間賞と衝撃のデビューを見せ、今季は日本インカレ1500mで2位に入った橋本奈津(3年)も調子がいい。昨年は2区22位と失速してしまっただけに、期するものもあるはずだ。3年生の信岡桃英にも力があり、関西女子駅伝では立命館大の佐藤成葉に次ぐ区間2位の走りを見せた。橋本が1区でうまく流れを作ることができれば、シード権獲得が見えてくる。

その他にも今年の日本インカレ10000m5位の東北福祉大学須藤ひかる(2年)や、2年連続で1区を任されている東洋大学白川恵理菜(3年)、日本インカレ1500m3位とスピードのある鹿屋体育大学日隈彩美(3年)など、注目選手が多数。いずれの選手の走りにも注目したい。

詳しい順位予想はまた区間エントリーが発表されてから考えることにしたいが、現状では

優勝 名城大学
2位 東京農業大学
3位 大東文化大学
4位 京都産業大学
5位 立命館大学
6位 大阪学院大学
7位 松山大学
8位 東洋大学

と予想する。名城は1区で出遅れない限りまず優勝するかと。というより、この選手層で優勝できなければヤバい。東京農業大学と大東文化大学がどこまで名城に迫れるか、というところに注目したい。

シード権争いもかなり混戦になりそう。1区での出遅れや、各区間での大幅なブレーキがあれば、その時点でシード争いから脱落したと考えていい。その意味では、全員が安定して走れる学校がシード権に近そう。

号砲は28(日)の12:10。栄光のゴールテープを切るのはどこだ。

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