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2021年12月独演会の舞台裏

新型コロナウィルスのお陰で今までの高座環境がことごとく封じられてしまいました。

真打に昇進してから毎年6月と12月の2回、半蔵門にある国立演芸場で独演会を開催してきましが、

2020年の6月は中止で12月はなんとか開催出来て、2021年の6月もなんとか開催出来ましたが、いずれも間が良かっただけで中止でもおかしくない状況でした。

コロナ禍なので仕方がないのですが、なかなかお客様にお越しいただくのが難しい状況でもあります。

近年、落語ブーム、二つ目ブームとかで後輩が元気で寄席にもお客様を呼んでいるし、若手でも既に国立演芸場もいっぱいにする連中もおります。

そこへいくと私は芸歴こそ積んでいますけどお客様を呼ぶ力が無い。しかも自分の独演会でさえも集客力が無いという致命的な欠点を持っております。それでは真打では無かろうという真打論は取り敢えず置いておきます。

そうは言っても、若い頃は笑点の若手大喜利に出演したり、テレビの演芸番組に呼ばれたこともありますし、四十代で芸術祭で大賞受賞した事もありますがいずれも過去のこと。

当時の楽屋曰く『今がお前のピークだ!』と言われて…本当にそうだったし。

『大賞取っても何も変わりませんよ』とも言われて…本当に変わらなかったし。

変わった事と言えば、いや学生の頃から芸の肥やしだと思いお酒を飲みまくっていたのでめでたくアルコール依存症になってしまった事です。

楽屋の希望としてはそれでも飲み続ける事が芸人らしい生き方だと思ったのですが、もう少し落語が上手くなりたいとお酒を辞めたら…『以前より下手になったね』と言われてしまう始末です。

やはり無理はいけません。

努力が出来ない。それが許されるから落語家になったはずだったのに。覚えるのも人前で喋るのも苦手だから、お酒を飲んで酔っ払ってフラフラ落語家らしくしているのが三遊亭遊馬だったのだ!と思うと普通に落語が出来なくなってしまっていました。

そんな時にお上から興行につき助成金をもらえるというのを知りました。お上からお金をいただいてやるからにはそれなりの企画を出さねば申請が通りません。さてどうしょうかと考えました。自分が決してやらないことを考えた時に圓朝作品が頭の中に浮かびました。

三遊亭圓朝という人は近代落語の祖と言われており数々の名作を残しております。また数々の名人上手が出掛けておりますが三遊亭の亭号を持つ人で手掛けている人は少ないのではと思い…

私も三遊亭の端くれとして、残りの噺家人生をかけて圓朝作品を手掛けよう❗️中でも四大怪談噺『真景累ヶ淵』『牡丹灯籠』『鏡ヶ池操松影』『乳房榎』だけ手掛けてみよう❗️と思うだけは勝手なので思ってみたでした。

早速圓朝全集のうち怪談噺の巻を取り寄せてまずは『真景累ヶ淵』の速記を読んでみたのですが噺が長いし、読みきれないし、まるっきり噺が入ってこない。

何しろ私は字を読むのが苦手で漢字が読めない位でいわゆる国語能力は極めて低いのです。

しからば一番短目の『怪談牡丹灯籠』を昭和の名人師匠の録音から聴いてみました。さすが名人です、私を安らかな眠りに誘ってくれます。

それから全集の『怪談牡丹灯籠』をなんとか読んでみると普段夏場によく演じられている【牡丹灯籠】は噺の一部分だという事に初めて気がついたのでした。そこで、独演会で怪談牡丹灯籠を普段演じられない部分も含めて全編通してやる企画を出そうと思ったのでした。

ダメ元でした。申請の仕方も面倒くさくて、自分一人でよく出せたと思うぐらいの形で締め切りギリギリでなんとか提出したのでした。この時点で私の思いは既に終わっていたのでした。

ところが申請したことすら忘れていた頃に申請通過の通知が届いたのでした。

さあ大変だ⁉️…

もう一つ大変なのが集客です。お客様には前半を6月後半を12月に行う続き物なのでセットでのチケット購入をお願いしてみました。 コロナ禍でもあり、ある意味特殊な会ですし、滑稽噺がお好みの方は毛嫌いするしで…6月の本番当日はいつも暗いのですが、より客席を暗くしました。

その中には助成金の偵察部隊の方も来ておりまして『コロナ禍でこんな事を申し上げるの変なのですが、もう少し告知の仕方を考えてはいいかがでしょうか?もったいないです。』とのアドバイスを頂きました。

そんな訳で2021年12月12日日曜日国立演芸場にて18:30開演です。

圓朝が22日かけて語ったであろう22席の噺を構成し直して

一席目【刀屋】〜【お露新三郎】〜【平左衛門と孝助】〜【新三郎の夢】

二席目【お國の悪事と計略】〜【相川新伍兵衛の願い】〜【源次郎の計略と孝助の結納】

三席目【お露とお米の幽霊】〜【伴蔵とおみね】〜【お札はがし】〜【新三郎の死】

四席目【無くなった百両】〜【孝助の槍】〜【平左衛門の死と孝助の婚礼】〜【仇討出立】

五席目【栗橋宿おみね殺し】〜【関口屋のゆすり】

六席目【平左衛門の一周忌】〜【母との再会】〜【いざ宇都宮へ】〜【大願成就】

にまとめて、6月に前半三席を申し上げて12月に後半三席を申し上げます。普段語られない部分も含めての『怪談牡丹灯籠』をお楽しみ頂ければと思います。

6月の収録音源を配信しております。予習復習にご利用いただければ幸いです。https://www.digigi.jp/bin/showprod?a=67386&c=2048634800007

12月のチケットは自由席・前売り¥2500です。三遊亭遊馬のLINE公式アカウントからご予約頂けると助かります。https://lin.ee/CnuBd55

感染リスクお避けるために基本的にチケット郵送代金振込みになります。

皆様のご連絡をお待ちしております。



#わたしの舞台裏

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