ヒースロー空港の清掃係の人になりたいと思った話 #未来のためにできること
昨年の暮れ、念願のイギリス、ロンドンへ旅行に行った。
ここ数年、いや数十年、海外なんていけなかったが、退職を機に決心した。
関空発、韓国の仁川空港乗り継ぎで、ロンドンヒースロー空港へ。
初めての長期フライトは遅れをとり、15時間超の空路を後に現地時間は夜の19時。
日本時間は朝の11時。当然寝れるわけもなく、へとへとの日本人が重いスーツケースをひきながらヒースロー空港を歩いていた。
ホテルはロンドンの中心部。
エリザベスラインというもので向かうのだが、まずは切符を買わなければいけない。
19時過ぎ、目の前にある券売機らしきものは柵に囲われ使用できなくなっていた。
英語の張り紙があるが読めない。
読めないがなんとなく本能が、やばいと言っていた。
そうこうしているうちに清掃係の人がこちらに近づいてきた。
会話をせずにこちらに来いと手招きしてくる。
スーツケースもギリギリの細い道を抜け、ここで切符を買えとジェスチャー。
目の前には柵に囲われていない現役であろう券売機があった。
カタコトに「サンキュー」と言うと、彼は何も言わず去っていった。
20時過ぎ、無事、ホテルにつき窓から景色を眺める。
眺めると言っても、写真で見るような景色ではなく、ホテルの中庭のような小さなスペースと向かいのホテルの室外機。
これから1週間、どんな人に出会えるだろうか。
あっという間の滞在時間。帰る日が近づくにつれ、もうここに住んでもいいのではという想いが頭を巡っていた。
スマホさえあれば会話はできる。
困った時は、アプリでなんとかなるものだ。
ホテルのロビー、慣れた手つきで翻訳しチェックアウトを終える。
来た時よりも重いスーツケースを抱えながら2度目のエリザベスラインへ。
この景色は次はいつ見れるのだろうと思いにふけた。
ヒースロー空港に到着し、時間を見る。
搭乗までまだ時間がある。
ふと、横目にあの券売機を見た。
私はなぜか周りを見渡す。
いるわけないか。
そう思った時、重いリュックを背負った外国人と話している彼を見た。
ふと会話をしながら彼はこちらを見る。
私は無意識に頭を下げた。
彼は二度私を見て、また話に戻った。
アプリがなくとも、会話がなくとも、
人の優しさは伝わってきた。
イギリスはいい街だ。
次は会話ができたらいいな、そんな気持ちを胸にしまい帰国した。