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比叡山延暦寺へ ─『法華経』へのあれこれとともに─(前編)

高野山の宿坊巡りから2年

2019年10月、「奥之院萬燈会」と宿坊の朝勤を目当てに高野山へ。

宿坊は、趣の異なるところに泊まりたいと思い、無量光院、一乗院、三宝院を選んだ。法話が英訳付きの宿坊もあれば、仄暗い部屋の片隅で一人密かに同席させてもらっているような宿坊もあり、寺院によってまったく違った。

ああ、高野山にあるすべての宿坊に泊まりたい。

そして、次は比叡山、と決めてから2年。
今年やり残したこと…と、延暦寺へ行くことに決める。

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「思想としての法華経展」@京都佛立ミュージアム

─ 12/8(水)─
延暦寺へ行く前に、京都佛立ミュージアム「思想としての法華経展」へ向かう。ちょうど『法華経』のレポートを書いていたこともあり、気になる展示だった。

監修は、NHK「100分de名著」の法華経回で解説されていた植木雅俊先生。充実の内容に違いない。延暦寺に向けて気分を高めよう。

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【展示内容】
第一章 オープニングムービー
第二章 植木雅俊先生のご紹介
第三章 仏教ってなに? 
第四章 法華経ってなに?
第五章 信仰としての法華経へ 日蓮

まず、<思想としての法華経>で仏教や法華経の中心思想についてのパネルが並び、そのあと<信仰としての法華経>で日蓮聖人が紹介される。

第三章「仏教ってなに?」は、釈尊の生涯、仏教の中心思想(差別の否定や八正道)、釈尊入滅後の教団の分裂と経典の成立について。
第四章「法華経ってなに?」は、全体が<仏教の基本思想>→<上座部仏教>→<大乗仏教>→<法華経の思想>の流れ・比較で構成されていて、法華経成立の背景や、法華経独自の思想がわかりやすくまとまっていた。

そのほか、長谷川等伯の「絵曼荼羅」や「善女龍王図」、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」手帳の展示もあり、シンプルで満足感のある内容。

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図録も迷わず購入。展示内容がほぼそのまま掲載されており、植木先生の講演記録も収録されている。植木先生の仏教や法華経との出会いに触れることもできて嬉しい。

バックナンバーも置いてあり、「宮沢賢治と日蓮展」をここぞとばかりに買ったが、一番ほしかった「宮沢賢治と法華経展」は完売とのことで断念。

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『法華経』に抱く負のイメージと文学に見える影響

もともと『法華経』は、気になる存在だった。

小学生の頃。修学旅行でお寺に入らない友だちがいた。その子たちは、登校拒否になった子のことを「お題目を唱えなかったからバチが当たった」と言った。わたしは心底驚き、気持ちわるさを覚えた。そしてそこに、新興宗教と法華経というお経が関係しているらしいことを知った。

学生時代に読んだ『源氏物語』では、「法華八講」という法要の場面が登場し、『枕草子』では、清少納言が「経は、法華経さらなり(お経といえば法華経、言うまでもない)」と断言。

そして、法華経の存在が一気に大きくなったきっかけは、敬愛する宮沢賢治が法華経の熱烈な信者であると知ったことだった。熱心な浄土真宗の家庭で育った賢治は法華経と出会い傾倒していく。「雨ニモマケズ」の最後には文字曼荼羅を書いている。この手帳を見ると、文字から立ち上がる賢治の想いとエネルギーに、何とも言えない感情が湧き少し怖くなる。

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──『法華経』に何が書かれているのか、知りたい。文学に限らず、日本画家など多くの芸術家が法華経に影響を受けて作品を残している。何がそんなにすごいのか。どこに惹かれるのか──

触れがたい宗教臭がする、でも、好きな作家の信仰する経典。それが法華経だった。

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思想はどのように信仰につながるのか

今夏、通信の大学で法華経の講義を受け、概要と中心思想について学んだ。

・法華経の中心思想は、「一仏乗」と「久遠実成の仏」の思想。
・部派仏教と大乗仏教の対立を乗り越えるべく、真の平等思想として「一仏乗」の思想を説くために編纂された。
・歴史上に実在した釈迦は、実は永遠に生き続ける久遠仏であり、今も人々を導き続けている(入滅は方便だった)。
・法華七喩と呼ばれる巧みな喩えが使われたり、天文学的な時間や空間を用いた場面があるなど、物語性が強い。

一乗思想については、その背景を知り素晴らしいと思った。部派仏教と大乗仏教の対立を止揚するための新たな思想。この平等思想が多くの人の信仰につながったのだろう。

でも、何もわかった気がしなかった。思想も物語性もとても興味深い。けれど、それほど多くの人の心をそこまで強く捉えるものだろうか。その先は自分で読んでみないと気づけない。まずは、植木先生の『サンスクリット原典現代語訳 法華経』を読み進めてみようと手元に置くことにした。

ただ、法華経を読むことはできても、聴く機会がない。そこで最近、「テンプルモーニングラジオ」「音の巡礼」)で『法華経』を聴いている。同じ「如来寿量品第十六」でも、お坊さんによって訓読だったり、スピードが違ったり、おりんのタイミングが違ったりとおもしろい。読むのと聴くのは別もの。声は何かが乗っかる。身体に入ってくる感覚がある。

読経しているお坊さんは、何を思って唱えているんだろう。少なからず法華経を信仰しているのだろうか。影響を受けているのだろうか。この教えを知ってほしいと思っているのだろうか。

明日の延暦寺のお朝事では、きっと法華経が読まれるだろう。
もし読経したお坊さんと話ができたら、法華経の何がすごいのか、好きな場所はあるか聴いてみたい。

(後編へ)

【付記】苺パフェ@Kitano Lab

京都佛立ミュージアムのそばに、「Kitano Lab」という美味しそうなカフェを見つけ、帰りに立ち寄る。ケーキを食べる予定が、メニューを見ると逃れられない誘惑の苺パフェ。

国産フルーツを使ったコンフィチュールの専門店だそうで、コンフィチュールも自家製ソフトも幸せな味。透明な苺のジュレもさっぱりぷるぷるでとっても美味しかった。ごちそうさまでした。

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