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浅田真央さんのファンで良かったと「存在」に感謝する/サンクスツアー

一緒にやって来たメンバーからのメッセージ。公演中泣きそうになるのを、演技の所作ひとつも見逃したくなくて、我慢した。なのに、号泣である。

この世に「推しの存在」がいることの幸せが涙に混じる。浅田真央と言う存在だけに向けた涙ではない。一緒にやっていたメンバーのこれまでの変化まで蘇ってきての、涙である。

前例のないことをする凄さ

3年間続いていた浅田真央サンクスツアーの最終公演が昨日あった。横浜である。私はライブ配信を選んだ。

浅田真央さんは現役引退後、スケートをやめようとしていたが、半年後、全国のファンからの「まだ生で観れていない。観たかった」の声に応えてアイスショーを行うことを決めた。内容が発表されて、私は驚きと歓喜。Twitter上で見る他のファンの方の反応も同じような意見が多かった。その異例な内容とは。

全国の既存のアイスリンクを使う。

→氷をあたらめて作る費用を削る。アイスリンクの経営にもプラスになる。さらに、当初ほぼ毎回アイスリンクで「スケート教室」を開いた。小さなスケーターたちの夢はきっと広がっただろう。

格安のチケットで県民民優先制度を設ける。

→小さな子どももOKの珍しいショー。ファミリーでの来場も多く、生のアイスショーを観ることで「フェイギュアスケート」をやりたいという気持ちを持った子どもたちも。競技のファンと選手の裾野を広げたと考えている。

長期公演である。

→当初は、期間は決められていなかった。1年目の場所10箇所がわかっている、というだけ。途中でメンバーの入れ替えがあり、使う曲目は変わったが、基本的に同じ曲を使用した。世界でも基本的に、長期で行われる公演はない。トップスケーターたちが出演し、それぞれのソロ曲+グループナンバーで独自色を出す。予定では2020年の9月で最終公演を迎える予定だったが、新型コロナウイルスの影響で公演の延期があり、半年間延びた。それを考えても、長期であるのは間違い。

タイトルに「アイス」がついていない

これは蛇足になるが、アイスショーでアイスが使わないのは異例だったりする。高橋大輔選手が出る「luxe」もうそうだが、去年と一昨年は「氷艶(ヒョウエン)」だった。これは、ビートたけしさんがテレビ番組で浅田真央さんにタイトルを相談されて「アイスショーってつけなくていい。浅田真央ってあるだけでアイスしょーだってのは分かるんだから」と言ったことが反映されている。全国のファンに感謝の気持ちを届けたい、で「サンクスツアー」だ。

当初は、真央さんの現役時代から続くスポンサーが名を連ねていたが、心配の声も上がっていた。格安チケットに、グッズも安い価格に抑えられていて、メンバーへの報酬なども払うことを考えると真央ちゃんのギャラはあるのか、と。

そのツイートを見て、私も勝手に初年度は持ち出しだろうなと憶測していた。公演が始まると、出演する地方のローカル局に出る。ご当地のものを食べる姿が映ると、即、その食べ物が完売した。サンクスツアーは回を追うごとに、ローカル局での露出が増え、半日密着という形式も増えた。地方の公演単発でのスポンサーも徐々に増え、2年目の公演が発表される。

私は経営者なので、事業としての側面もチェックし続けていた。「浅田真央」という大きな存在があると言っても、様子を見ながら賛同していくものなのだというのがよくわかる。

スポンサーが増えると、衣装をより自分の理想のものに換えたり、照明を変えたり、と演出を変えていく。1年半経つ頃には、浅田真央さん自身のスポンサーも増えてくる。「技術を落とさない」むしろ上げていこうとする貪欲な「アスリート」としての側面だけでなく「総合演出を行うプロデューサー」や「メンバーの技術が上がっていく育成者」としての側面が評価されてのことだろう。さらに「有言実行」する姿。言葉にすると質実剛健である。そんな考えが浮かぶ度に、「浅田真央」のファンということだけで誇らしく感じつる。ひとまわり年下なのに、人としての在り方を示してもらっている気持ちにすらなる。

もちろん、元々持つ人間的な魅力が選ばれていることに間違いはない。女性としても30歳を迎え「たおやか」になりつつ「無邪気さ」を失わない、「愛されキャラ」だ。

ハードな面とソフトな面、両方の魅力を兼ね備えた稀有な存在なのだ。

浅田真央は天才ではない

浅田真央は、資質に富んだ選手だ。かつてのコーチに「真央はフェイギュアスケートに必要なものを全て持っている」「フィギュアスケートの神様に愛されている」と言わしめたのは、さすがだと思うし、間違いない。

アジア人として考えると、小さな頃から顔が小さくバランスの取れた身体。音をその足元から奏でることができるような軽やかさ。身長が高くなっても高く飛ぶことのできる筋力。小さな頃から姉に追いつきたい、同じことができるようになりたいという気持ちで努力を続けられるストイックさ。どれも間違いなく素晴らしい。鬼のような練習をこなしても壊れにくい体は、元々の筋肉の質もしなやかで良いものだったのだろうと推察している。

それでも、誤解を恐れずに書くと、彼女は天才ではないと思う。ただのファンとしての発言で、身体を動かすプロでもなんでもないけれど。一般的な天才のイメージがやりたいとイメージしたことをすぐに再現することだとしたら、だ。

最初に彼女をテレビで観たのは、まだ彼女が10代前半の頃。最初は「こんなに高難度のことをやってのけるなんて、天才過ぎる!」と思っていた。けれど、大きくなるにつれて、女子選手特有の身体の成長に伴う感覚のずれに直面した彼女のインタビューや、その後の選手生活を見ていて、けして要領が良かったり、強いメンタルの持ち主でないように感じていた。資質にプラスして、人の倍努力して手に入れたスケートだったのだと私は思っていた。

(その後、彼女の現役最後の佐藤コーチは、「彼女は努力の天才」と語っている。実際に、どんなにいい筋肉、音感を持っていても、何かできない時に続けられなくなってしまう選手は多くいる。資質を持ち、表現することができるのが天才だとしたら、もちろん天才なのだ。矛盾するようだが、パッとやってできるようになるのが、天才だと思っている人が多いのを前提として書くと、そうではないと書きたい)

メンバーの意識も変えてしまう指揮者

そんな努力の人だからこそ、サンクスツアーのメンバーの技術もグッと押し上げた。サンクスツアーが始まった2018年、11月2日広島公演を見に行った。

テレビで観ていたから「ようやく見れた」が当日の感想だった。その11ヶ月後、私はブログにこんなふうに記している。

全体的に見て素人目でわかるぐらい全員のスケーティング技術が格段に上がっていました!
前へ進む際の上下運動が殆ど無く、スパイラルが美しく。
それが群舞で揃ってる感を作っていてクオリティが格段に上がりました!
もちろんそれだけじゃ無く、フリーレッグや体の角度などを合わせる努力もしていると思います。
また、姿勢も良くなって、身体もぐっと締まっていました!
スピンも本当に軸が決まっていて、美しくなっていた。

レベルの違う選手が集まってショーを作り上げていた初年度。それぞれがレベルを上げて、見どころがちょっとづつメンバーに分配されていった2年目。そして群舞でありながら、氷についていない方の足の角度など、甘い部分があったのが、綺麗に揃っていた2年目。スピンも軸の位置が回っている間にずれていたのが、細く綺麗な軸に。さらにその4ヶ月後の2020年1月の大阪公演。

横の並びも、兵庫以上に揃っていましたし、円の状態も綺麗でした。
そして、年末年始を越えたのに、ぐっと絞られた身体✨
キレキレの動き。
ゆっくりした動きの揃い方。どんどん、合わせることへの意識が
研ぎ澄まされている感じがしました。
今回の公演で印象的だったのは、林渚ちゃんのキレキレ感といつも通りの席に目線を送って笑顔。
りさちゃんは途中で顔にベールをかぶった状態になっていましたが、動じる事なく演技を続けていた所。
無良崇人さんの大きな連続ジャンプの迫力
誠也君の煽り
エルニ君の繊細な動き
星君も、連続ジャンプを決めていたし、今井遥ちゃんは、いつものスピードに加えて、スケートが軽やかになっていて、所々真央ちゃん並みに氷の音がしてなくて!(遥姫はあんなに華奢なのに実は結構スピード出して迫力のあるスケートをするのです)
マラルちゃんの姿勢とスタイルがさらに良くなっていたし、まりちゃんは演技が大きくなったように感じました。

たった4ヶ月後なのに、また素人目で見てもわかる違い。これは、指導者としての浅田真央さんの才能をひしひしと感じる違いでした。一緒に滑ってその「プロ意識」を見せることで、メンバー全員の意識も変えてしまう。指導者というより、指揮者がしっくりする気がしている。

1年目と2年目の間の公演がなかった期間にスキルが落ちたり、動きが鈍くなった、というような映像が出てきていたのに、2年目3年目の年越しでは、全くスキルが落ちていない。それどころかブラッシュアップしている。

メンバーの意識も変えてしまうのは、「浅田真央」さんのカリスマ性もあるかもしれない。でも、凡人だと感じる経営者にも真似できる部分があると思う。

スキルアップしていく美学

そしてこの3年間、浅田真央さんは自分のスキルアップにも努めていた。私の記憶では、連続ジャンプで最高、3回転−2回転−2回転−2回転−2回転−2回転という6連続ジャンプを決めていた。また、最初はバテバテだと言っていた90分公演の3分の2の時間滑っている。これは、長時間練習をしていてついた基礎体力の賜物でもあると思う。それでも、彼女は現役選手ではない。1日にできる練習量も限られている。真夜中や早朝の練習で昼と夕方に行われる公演に体を合わせていくのは、とても大変なはずだ。

そこを「この日を楽しみに来てくださるお客様のために」良いものを見せたいという美学で実現していく。この3年の間ブラッシュアップしていくアイデアがどんどん浮かんでいくようだった。きつい練習も、メンバーもいるからできた。一人ではできないと、折に触れて語っていた。

間違っても、失敗しても、ちょっと困らせてくれたっていいのだ。それでもファンでい続けようと思う存在なのだ。それなのに、そんなことは全くしてくれない。いつも美学を持って努力し、できるようになったことを無邪気に喜び、メンバーがいることとお客様、関係者に感謝する。それがこの3年間の浅田真央だった。宗教のような言葉になってしまうが、その存在がありがたい。

号泣していたら、中学1年生の次女に心配されたが、もう実は前を向いている。

新しく何かをしたい人の一歩進むお手伝いをして、その変化に対する対価をしっかりといただいて、何年先になるかわからないけれど、浅田真央さんが作るスケートリンク建設の手伝いか、建設後の運営で役に建てる人材になっていたいというのが、当面の私の夢である。

数ヶ月前に開設したYoutubeでもその夢を明言している。あくまで個人的な夢で、その機会があるかどうかはわからない。でも、その時のために私は私のブラッシュアップをしていく。

千秋楽を見終わった変なテンションのまま、書き上げた。最初に「浅田真央は天才ではない」というタイトルにしようと思って、変えた。私が伝えたいのは「浅田真央」さんの尊さと、「推し」が存在していることの人生での充実度だ。

プライベートでは最初は夫婦で、その後は家族でアイスショーに行き、共通の話題で盛り上がった。フィギュアスケートに興味を持たなくても、音楽や演出、生の臨場感、衣装の作りや素材に興味を持ってくれてばいいと思っている。

仕事では、その「在り方」や、事業がうまくいく過程を見て参考にしてきた。また、先日記事に書いたが、他の方の開業サポートをするにあたって、考え方や必要なことを言語化するのに、浅田真央さんや高橋大輔選手の言動が役に立っている。

浅田真央さんは「ファンで良かった」と思わせてくれる存在だ。


ところどころあえて「敬称」を抜いている部分があります。ご了承ください。そして5000字に渡るファン語りを最後まで読んでくださり、ありがとうございます。



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