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Merry Christmas

クリスマスというのは、楽しい思い出より切なかったり悲しかったりした思い出の方が記憶に残りやすいのは何でなんだろう。
稲葉浩志氏の「いつかのメリークリスマス」とか、あれも凄く悲しい歌だけど。やけにきらきらした街で、着飾ったしあわせそうな人たちを沢山見たりするから、余計にそんな気持ちになるのかな。

わたしの一番古いクリスマスの記憶は、幼稚園くらいのとき夜中に帰ってきた父親と母親が喧嘩して、母が泣きながら窓を開けて雪のなかに結婚記念の時計を捨てたこと。あの頃父母は凄く仲が悪くて毎晩そんな感じだったけど、子供心にもクリスマスの夜にまで夜中に帰ってこなくてもお父さんてば、って、悲しかったことを思い出す。
あとは大学の頃、母方の祖父の看病のために母が実家に帰ってしまったので、代わりに東京から実家に戻ってきて祖父母の食事の世話をしなきゃならなかったときのこと。父方の祖父母は病気でもないのに自分でご飯を準備や家事を絶対にしない人たちだったから、そういうのが当たり前だった。父はいたけど家のことは母任せだったし弟も家事はできないし。でもさすがにあのときは自分の家の状態がものすごく嫌で、クリスマスなのにって、ご飯の後片付けを一人でやりながら泣いた。父はその日も一人でそとで飲んで遅く帰ってきたりしてて、よく考えるとほんとに変な父親だったなあと今になって思う。

その父も難病になってしまい、闘病の末に亡くなった。
亡くなる前もまあ、色々あったけど、姪のことはすごく可愛がってたから、姪が三歳くらいのとき、クリスマスにケーキを食べさせたいって珍しく地元のお菓子やさんで自分で予約してくれたのに、肝心の姪は弟夫婦が買ってたポケモンクリスマスケーキの方がいいって言って、せっかく父が買ってくれたケーキを見もしなかった。わたしはなんだかそのことが凄く悲しくなって、父の前で美味しいねって言いながら無理して全部一人で食べた。それからはどうしても、いちごののったシンプルなクリスマスケーキを見るたびにそのこと思い出して泣きそうになる。

そんな感じだから、今もわたしは、クリスマスは特に特別なことはしない。いろんなことを思い出して泣きそうになるし、なんとなくこの時期はちょっぴり、辛い。そして、わたしみたいな、クリスマスはあんまり好きじゃないなあ、っていう人も、きっと、いっぱいいるだろうなあと思う。

今年は大雪で、それどころじゃない人もいるだろうし。

どうか、そういう人にも、そうじゃない人にも、優しかったり暖かかったり、何かそれぞれに、いいことがありますように。
そんなイブになりますように。