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カルタマリナのルールディベロップについて

YUTRIO(ユトリオ)というサークルでボードゲームを制作しています、秋山昂亮です。

幣サークルがデザインした、2人用の協力ゲーム『カルタマリナ』が、アークライト様より2022年5月19日に発売されました!
インディー版(以下「旧版」)からアークライト版(以下「新版」)へと生まれ変わった過程で、主にルールディベロップについて学ばせてばせていただいたことを文章にしたいと思います。

CARTA MARINA(カルタマリナ)とは

旧版パッケージ

『カルタマリナ』はゲームマーケット2021春に同人作品として発売した2人用の協力型ゲームです。
プレイヤーは海賊船クルーの一員となって、クラーケンの猛攻に耐えながらも、沈みゆく船を島までたどり着かせることを目指します。

以下の画像は旧版のルール概要です。

ルール紹介①
ルール紹介②
ルール紹介③
ルール紹介④

ルールディベロップ

基本的なゲームのルールは旧版のままで、おもに以下の3つの課題を解決できるような仕組みを考えていきました。

①リプレイ性の担保
②受動的なプレイ感の改善
③既存ゲームとの差別化

①リプレイ性の担保

『カルタマリナ』のプレイ人数は2人までです。大人数で遊べるゲームに比べると、メンバーを変えることで何度も遊ぶことは少ないかもしれません。(例えば夫婦で2人用のゲームを購入して、そのゲームをメンバーを変えて遊ぶという状況は起こりずらいと思われます。)

同じメンバーに同じゲームを何度もやってもらうには、ゲームの面白さはもちろん、そのゲームで遊ぶ理由が必要です。そこで実装に至ったのが「章立て」「効果同士の組みあわせ」です。

旧版でも「章立て」は実施しており、航路の長さによって4段階のクリア難易度で遊ぶことができ、難易度1から順にプレイするように誘導しています。しかし、難易度1と難易度4で遊ぶことでプレイヤーの体験が大きく異なることはありませんでした。
新版では、プレイヤーに章ごとに異なる体験をしてもらうために、クリア難易度を上げることに加えて、プレイヤーができることが増えていきます。

新版は全部で5章あり、2章以降では「キャラクターの追加能力(5種)」、4章以降では「ゲーム中に一度使えるアイテム(5種)」を好きなように選ぶことができます。毎回のゲームで担当するキャラクターにも固有能力(6種)があるため全部で150通りとなり、選んだ効果の組みあわせによって毎回異なる体験ができるようになりました。

よく言われることですが、ゲーム中にプレイヤーができることが増えることで、負荷が大きくなってしまうことがあります。これはゲームクリアの難易度とは別の、ゲーム中の最適解を導く難易度が上がっているためです。
クリアの難易度と最適化の難易度、この二つの難易度を上げるうえで、章立てという仕組みにすることは非常に相性が良かったと思います。何度か遊ぶことでゲームに慣れ、それに合うように難易度の向上があるならば、多くのプレイヤーにも受け入れてもらえるのではないかと考えました。

章(チャプター)が進むごとにプレイヤーができることが増えていきます。

②受動的なプレイ感の改善

『カルタマリナ』の場合は、ゴールの島まで船を操舵することや、船が沈まないように排水することがプレイヤーの行動の指針となっています。これらはゲームクリアに必須であるため「やらなくてはいけないこと」と言えます。(船を進めないと勝利できず、排水をしないとすぐに敗北してしまいます。)

「やらなくてはいけないこと」を効率良く解決していくのは十分に面白いですが、旧版はそれ以外の側面が少なかったため、受動的で淡々とした印象がありました。そこで新版では「やらなくてもいいがやると得があること」を新要素として追加しました。やってみたい!と思えるような能動的なアクションを用意し、スカッとするようなシーンをつくろうというのが狙いです。

前述のキャラクター能力やアイテムはそれに当たりますが、ほかにも新要素があります。
例えば、航路ボード上に「バケツ」のマスが存在します。「バケツ」のマスに船が進入すると、ボーナスとして、船ボード上のプレイヤーコマがあるエリアの水キューブを自動的に取り除くことができます。

ボーナスマスに船コマが止まったとき、船ボードの水キューブを取り除くことができます。

③既存ゲームとの差別化

『パンデミック』という、ウイルスから世界を守ることを目指す協力ゲームがあります。『パンデミック』をご存じの方には、『カルタマリナ』のゲームシステムやコンポーネントから、二つのゲームが似ているという印象を受ける方も少なくないと思います。(実際に『カルタマリナ』を制作するうえで、『パンデミック』は参考にしたゲームのうちの一つです。)

しかし2つのゲームは「体験」や「フレーバー」という点で異なっていると思っています。『カルタマリナ』のユニークな魅力をより体験できるように、フレーバーに即したゲームシステムを検討していきました。

例えば、アイテム「土嚢」は、船ボード上のエリアとエリアの間に配置することで、水キューブの移動をせき止めることができます。
また、アイテム「大砲」は、使用すると航路ボード上の障害物である岩礁を1つ取り除くことができます。
これらの要素は「カルタマリナならでは」なゲームシステムだと思います。

「土嚢」が配置された線を水キューブが移動しなくなります。

まとめ

ここでは書かなかった細かな修正もいくつかありますが、今回おこなったディベロップの工程は一貫していて、「課題を見つけ出す」「課題を解決する仕組みを考える」という2つのことを突き詰めていきました。

旧版を遊んでいただいた方も、新たなゲームを遊ぶ気持ちで楽しんでいただければ幸いです!

アークライトのスタッフの皆様、制作に携わってくださった方々に改めて感謝申し上げます。


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