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不登校についての考え方

みなさまこんにちは。

NPO法人ゆとりある理事長・久下沼です。


なんだか最近不登校にまつわることでSNSが大騒ぎになっている気がします。

どこの誰のこととか、そういうことをここで言うことは避けますし、

批判するだけは簡単なことなので、それは避けたいです。

でも、内心すごく腹が立ったり、もどかしい気持ちにもなります。


今回はあらためて、私たちゆとりあるの考え方をここで示しておきます。

ご一読いただければ幸いです。


不登校は問題行動ではない


まず最初にはっきり記しておきます。

不登校、つまり子どもが学校に通えていないという事象は、決して問題行動ではありません。


この前提があるとないとでは、不登校に対する認識が大きく変わってきます。


子どもが学校に通えなくなる理由は様々です。

いじめ被害者、教員との関係、発達障害あるいはグレーゾーンと言われる子たち、

それ以外にも様々な理由があるでしょう。


私自身も不登校経験者ですが、

正直はっきりとした理由があると言うよりは、

「学校での居心地の悪さ」「発達の課題」などが複合的に絡み、

「感性」的なもので学校に通えなくなったと振り返ります。


子ども・保護者・教員に全く課題がないかと言えばそういうわけではなく、

先ほど取り上げた、子どもの発達の課題や、貧困等の家庭環境、教員を取り巻く労働の問題など、

それぞれに抱えているものがある可能性は、もちろん否定できません。

しかしそれらを「子どものせい」「親のせい」「学校(教員)のせい」と、安易に結び付けてしまうのは危険です。


私たちは、不登校というものが問題だとするならば、

それは『社会問題』だと考えます。


だからこそ、子ども自身や保護者などの当事者が、

「私のせいなんだ」

「私が悪いんだ」

と思う必要は全くないと思いますし、

そういった考え方ひとつで、少しでも楽になれる人がいればと考えています。



子どもと保護者に『寄り添う』


私たちがとても大切にしていることは、

当事者の子どもと保護者に『寄り添う』ことです。


子育てには正解はありません。

とはいえ、「それはどうなの?」というような育て方やしつけの方法もあったりします。

子どもと親の間にすれ違いが生まれる時もあります。

実際にそういった家庭も数多く見てきています。


そんな時に、

「それは間違っている」「こうした方がいい」

というようなアドバイスをする事は簡単です。


しかしそれよりも、

まずは保護者さんの『話を聞く』ことの方が大切だと思っています。

そこから信頼関係が生まれれば、徐々にお互いに本音で話すことが出来るようになるかもしれません。


子どもたちとの関わり方も同じです。

突然とんでもない事を言い出したり、

なんでそんなこと?というようなこともあります。

大人と比べて圧倒的に経験値が少ないわけですから、

その分、一見無意味だと思われるようなことや、好奇心での行動が多く表れます。


それらを否定したり、行動を止めることもやはり簡単ですが、

そういったことをしたくはありません。

子どもたちの子どもたちらしい感覚や感性は捨てるべきではないと考えます。


そもそも、不登校の子どもや保護者は、

『困った子・保護者』ではありません。

『困っている子』であり『困っている親』なんです。


そこを間違って接してしまうと、どうしても上から目線のアドバイスや支援になってしまいます。

いわゆる『当事者団体』の私たちだからこそ、そこは間違ってはいけないと強く感じています。


なにかアドバイスするにしても、具体的な支援に入るとしても、

まずは子どもにも保護者にも寄り添うこと。

そこからスタートする事が重要だと私たちは考えます。


『期待』ではなく『願い』


私たちが子どもたちと接するとき、彼らに過度な期待をすることはありません。

簡単に言ってしまえば、

『○○が出来るようになってほしい』

『こういう子に育って欲しい』

という具体的なものは、全くないんです。

とだけ書くと冷たい印象を抱いてしまうかもしれませんが、、、


私たちの願いはただひとつ。

『その子らしく成長して欲しい』

ただそれだけです。


ゆとりあるのスローガンは、

『ありのままを あたりまえに』


子どもは必ず成長します。伸びしろたっぷりなんです。

出来るだけ今の姿や活動を尊重して、成長を見守りたい・寄り添いたいという願いだけがあります。


ですので、学校に早く復帰して欲しいとは全く思わないですし、

一方で本人の判断で学校に行ってみると言うなら尊重し応援します。


テストでいい点数取って欲しいとも、世界で活躍する人材になって欲しいとも思わない。

でも、きっとどんな可能性だって無限に存在する。


だからこそ、その子らしい成長が出来るお手伝いを、私たちが出来ればそれほど嬉しいことはないと思っています。

そういった願いを抱きながら、日々の活動をしています。


社会問題と向き合う


ここまでは私たちの考えを記してきました。

しかし、考えているだけでは現状は変わりません。

不登校は社会問題、というからには、

社会を少しでも動かしていく必要があります。


さらに、なかなか難しい現状である今このときも、

悩んでいる子たちや大人はたくさんいます。


今すぐ社会は変わらなくても、応急処置的なことも必要です。


私たちのような小さな団体に出来ることは限られているかもしれません。

それでもこの課題から逃げることはしたくありません。


そんな中で、まずひとつ現状として行動しているのととして、

『不登校の子どもたちの居場所づくり』があります。


現在居場所システムのリニューアルに向けて動いているので、詳細はまた別の機会に記すとして、

ひとつ選択肢をプラスするという意味でとても大切な活動だと自負しています。


子どもが学校に通えなくなると、一気に生活の幅が狭まります。

教育支援センターや色々なフリースクールも含めて0ではありませんが、決して多くはない状況です。

それなら、私たちの理念や考え方を最大限活かした形で場所を作りたい。

そういう想いで開設してから1年半が経ちました。


数ある居場所の中のひとつ、と言われれば否定できませんが、

それでも選択肢がひとつ増えることだけでも、意味はあるのだと思います。


まだまだ開設にあたっての課題は山積みですが、

今後も活動の柱として続けていきます。



そして、中長期的な視点で見た時に、

やはり社会を変えていく必要があります。


学校第一主義の社会には、もう限界が来ていると思うからです。


私たちは決して学校に対して批判的な立場ではありませんが、

教員の方の労働環境なども含めて、

色々と見直す必要があるのだと思います。


『学校に来ないと何も出来ない(してあげられない)』

というのが現状の学校側の認識です。


その現状を変えていかないと、パンク寸前の環境が更に悪化してしまうのではないでしょうか。


そのために、多様な学び方であり、選択肢を広めていく活動を進めていきたいです。

私自身、今この記事を書いているように、発信することが苦手なわけではありません。

様々な場所での講演の機会もいただき、非常に有難い限りなのですが、

今後もそういった活動は続けていきます。


私自身も、団体自体もまだまだ未熟なのですが、

当事者団体としての役割を最大限活かせるように努力していきます。



さいごに


この記事を書いた1つの理由は、

最初にも取り上げたように、ネット上で取り上げられた記事・話題に触れたことがキッカケです。

ただの批判だけでは意味が無いと考えて、これを機にもう一度ゆとりあるの理念などについて述べさせていただきました。

今回非常に長い文章になってしまい申し訳ないのですが、

少しでも私たちの考えを届けることが出来たなら嬉しいです。


今後もnoteを通して色々な発信をしていく予定ですので、よろしくお願いします。


特定非営利活動法人ゆとりある
理事長  久下沼 諒