見出し画像

【読書】サーベイ・フィードバック入門

エンゲージメントサーベイ、パルスサーベイ、ストレスチェック等、最近は組織のコンディションを測るなんらかのサーベイを実施している会社がとても増えました。

サーベイはその役割として「体重測定」や「健康診断」にたとえられることがしばしばありますが、”体重が増えてきていて、このままだと生活習慣病のリスクがありますよ”とか、”血圧高めなので気を付けてくださいね”といったような組織に関してのアラートを出してくれます。

これまでは経営状態を可視化するといえば財務諸表のみが主流でしたが、サーベイによって無形資産である組織の状態についても可視化させることが一般的になってきたと言えます。

ただ、サーベイを測った結果を経営陣が確認し、打ち手を(経営陣が)考える会社、あるいは結果を公表して各部署に対応を依頼する会社まではあっても、結果をもとにチーム対話を行い、改善策を現場主体で進めていくところまでしっかり実施している会社にはめったにお目にかからないというのが実感です。

実際のところ、サーベイをとって現場に結果を返すだけでは組織はまず変わりません。体重測定しても実際にダイエットを進めないかぎり意味がないのです。往々にしてダイエットは、やり方がわからない、やる必要性がわからないという知識、スキルが足りないという課題ではなく、実際に行動に移し、やり続けるという習慣を身に着けるといった適応課題であるというのが特徴です。

ですから、サーベイからみえた課題の解決は、本人がダイエットスキルを身に着けるというような個人の人材開発に設定するとうまくいかないのです。そうではなく、組織の体質を変革していくプロセスであり、適応課題だと捉えて解決をはかっていくことが必要だと考えられます。

本書では、組織変革は「見える化」「ガチ対話」「未来づくり」の3STEPだと述べていますが、サーベイの役割は、この最初のSTEP、「見える化」に位置づけられます。

この見える化をした後に、なぜこの数値が低いのか?なぜこの役職層は他のところと違うのか?など結果に対して対話をすることが適応課題に向き合っていく重要なアプローチになります。それが本書でいうところの「サーベイ・フィードバック」であると考えています。

これは、結果を経営陣が分析し、こうすべきと解を伝えるのではありません。当事者が数値を見ながら結果に対する解釈を対話するのです。これは社会構成主義というアプローチで、人は自分の見方、捉え方を語ることで現実を捉え、理解していく生き物だからという背景があります。

結果について現場主体で対話をすると、人からこうしろと伝えられた解と違い、自分の腹落ちができていきます。ダイエットすべきことは頭では分かっている。だけど一向にダイエットをするという行動に移せない、、、そんなことはよくあります。

しかし、なぜこれほど体重が増えてしまっているのだろうか。このまま放置するとどのようなリスクがあるだろうか。自分たちができることはなんだろうか。難しさを乗り越えるためにどのようなフォローがあるとよいだろうか、、、サーベイフィードバックを受けて現場で喧々諤々の本音の対話をすることで、適応課題に対処していくことができます。

ただ、これがやはり非常に心理的ハードルが高いことになります。組織課題に向き合うことは相手に耳の痛いフィードバックをすることが伴います。人間関係の不満を相手に伝えるということは、とても難しいことなのです。自分が思いを語っても、メンバーも同じ問題意識をもって対話してくれるだろうか。反発されて衝突してしまい、人間関係が壊れてしまうのではないだろうか。そうした気持ちが現場での対話を避けてしまう要因となります。

その結果、前述のように、サーベイ結果を現場に返したとしても、現場はそれをなかったこととして、やり過ごしてしまうのです。

本書は、このようなハードルをどのように超えていくとよいか、サーベイフィードバックの手順、対話の手順をわかりやすく提示しています。先行きが見えにくい現代の経営環境において、現場主体で組織の解を見つけていくことは喫緊のテーマと言えます。非常に意義深い、経営の教科書となる良書だと感じています。

是非手に取ってみてください。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?