見出し画像

凄いぜ!『柳生一族の陰謀』

昨日(2020/4/11)、NHKBSにて放映された吉田鋼太郎主演『柳生一族の陰謀』。皆様はご覧になっただろうか。オリジナル版を見たことのある方には懐かしく、初見の方にはとても新鮮に思えたのではないだろうか。
奇抜なシナリオ、ド派手なアクション、俳優もセットも豪華な超大作のおもかげは今回のリメイク版でも大いにのぞかせたと思います。

今回はそんなリメイクされた『柳生一族の陰謀』の魅力と作品の特徴などをご紹介していきたいと思います!オリジナル版との比較も少しだけしていきます。
なお、ネタバレはごくわずかに留め、未見の方にも優しい内容となっております。
・オリジナル版「柳生一族の陰謀」(Prime Video見放題対象)4/12現在
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B012S1475W/ref=atv_dp_share_cu_r

本作の凄い所その1!
1.細かい史実なんて知らん!

本作のあらすじをざっくり説明すると、
「元和8年、二代将軍徳川秀忠が急死した。後継指名がないままでの将軍の死は徳川体制に動揺を与えると、幕閣・大奥の一部で秘密にされ隠蔽された。弟の忠長(荒井敦史)を推す声が高まる中、将軍家剣術指南役の柳生宗矩(吉田鋼太郎)は、剣術の弟子である家光(岡山天音)を将軍の座につかせるべく陰謀を張り巡らす。それは朝廷ばかりか息子の十兵衛(溝端淳平)ら柳生一族をも争いに巻き込む仁義なき戦いの始まりであった…!」(https://www.nhk.jp/p/ts/EW9JPPKR8K/ NHKホームページより引用)

ここで既に史実とはかけ離れていることに注目してほしい。皆様ご存じ2代将軍・秀忠は、自らの嫡男である家光に家督及び征夷大将軍の座を譲ってから死去している。そもそも後継指名しないまま死んでない。他にも崇源院(お江の方)がまだ生きてたりetc…

でも、そんなことはどうでもいいんです!そんな小事は気にしません。全く気にしません。気にしたら負けです。何故なら本作が

「大河大伝奇ロマン」だからね!(伝奇とは怪奇、幻想溢れる物語の事)

だから、時代考証とかどうでもいいんです。史実厨に聞かせてやりたい。
これはあくまで持論ですが、時代劇というのはそもそも「エンターテインメント作品」であって、「伝記」ではありません。オリジナル版を制作した背景にも『仁義なき戦い』や『赤穂城断絶』のようなヤクザやそれに類するような作品があったことが挙げられます。
往年の時代劇に出ていた銀幕のスターも現代劇に出ている当時をときめくスター達も、一切合切ぜーんぶひとまとめにしてドカーンとやってやろう!というのがこの作品です。頭からっぽにして、派手な剣戟と大どんでん返しのシナリオを存分に楽しみましょう!

本作の凄い所その2!
2.めっちゃ豪華な俳優陣!

これはオリジナル版もリメイク版も同じことが言えますが、とにかく出ている俳優が豪華です!
まず、メインキャストで見ていっても
柳生但馬守宗矩・・・萬屋錦之介/吉田鋼太郎
柳生十兵衛三厳・・・千葉真一/溝端淳平
徳川家光・・・松方弘樹/岡山天音
柳生茜・・・志穂美悦子/飯豊まりえ
烏丸文麿・・・成田三樹夫/波岡一喜
小笠原玄信斎・・・丹波哲郎/榎木孝明
徳川義直・・・三船敏郎/高橋克実
お江の方・・・山田五十鈴/斉藤由貴

時代劇を経験したことのある役者もいれば、現代劇で活躍する役者もいるという面ではオリジナル版の意向に忠実に沿ったキャスティングであるということが分かります。アクションや重厚さ、雰囲気はオリジナル版よりはやや劣りますが(バジェット的にも仕方ない)、今できる最大限の努力が込められていると感じる作りこみ具合です。

本作の凄い所その3!
3.迫力の剣戟!

今作の義斗(殺陣)担当は東映剣会の故・上野隆三氏と菅原俊夫氏という殺陣師の大御所です。先述の『仁義なき戦い』や『水戸黄門』シリーズ、あまたの時代劇など数多くの作品でアクションを担当されました。
リメイク版では東映剣会の流れをくむ武士道剣会の清家三彦氏が義斗を担当しました。スローやスピードアップを駆使した現代調の殺陣ではありますが、緩急自在のつけ方をしてあることが見て取れ、リメイク版の本意気度合いが伺い知れます。

大人数でのアクションシーンは言うに及ばず、飛んだり跳ねたり、血しぶきや手足の欠損に至るまで派手に演出しています。リメイク版には出雲阿国がかわりを務めていましたが、個人的には猿若の女形が振るう薙刀捌きは相当のものだったと思います。

義斗そのものに関してはNHKBSプレミアムで放送していた『スローな武士にしてくれ』、『太秦ライムライト』などの映画をご参照ください!

個人的に好きなところ!
・強い悪役公家!

元来、公家というものは武門に優れた人物も輩出している(袴垂で有名な藤原保昌や刀伊に対処した藤原隆家、南朝の北畠顕家と千種忠顕、幕末では姉小路公知など)が、一般的なイメージでは和歌や管弦の遊び、蹴鞠など武芸からは最も遠く、なよなよした「~でおじゃる」など弱弱しい印象が多いと思いますが…

本作の烏丸少将文麿は頭は切れるが、中身はただの公家という印象ですが(成田三樹夫が演じているので中身も絶対硬派だろとは思うけど)、朝廷随一の剣の使い手でもあり、ひらりと狩衣が舞う軽やかな身のこなしと敵を一刀のもとに沈めるパワフルな太刀筋、そして弓の扱いも優れているという超チート級公家です。

凄い魅力的じゃありません?見た目派手でしかも強いってあんまり前例がないんじゃないでしょうか?

余談ですが、ちょっと前にアニメ『ポプテピピック』でパロディされてました。詳しくはこちらをご覧ください。

おわりに

昨今では時代劇はあまり作られなくなって久しくなっています。私の好きな『忠臣蔵』も年末の風物詩とも言われていましたが、今では鳴りを潜めています。『水戸黄門』や『遠山の金さん』、『丹下左膳』、『大岡越前』などもごくまれに続編が作られることもありますが、それでも全盛期に比べれば程遠い人気です。現在、NHKでは数少ない時代劇が現在も制作され、放映中です。大河ドラマなどで「歴史ものに興味がある」「時代劇に興味がある」と少しでも思われた方は新しい作品からでも構いませんので、時代劇の持つエンターテインメント性を少しでも味わっていただきたいと思います。

【画像引用元・参考文献等】
・春日太一(2013)「あかんやつら 東映京都撮影所血風録」文藝春秋
・名作映画『柳生一族の陰謀』が令和の時代によみがえるhttps://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=21269
・武士道剣会 https://bushido-tsurugikai.jp/
・柳生一族の陰謀(トップ画像引用元) https://www.nhk.jp/p/ts/EW9JPPKR8K/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?