新卒看護師がコロナになって感じたこと

 看護師として入職3日目、人生で初めてコロナになった。5,6年ぶりに発熱(コロナワクチン副反応以外では)して、自宅の自室で隔離生活を送っている。療養している患者さんの気持ちが、今になって分かって、ものすごく勉強になっている気がするので、自分が感じたことを忘れないように書いておく。

 緩和ケア病棟の実習ででよく耳にした「身の置き所がない」という表現、身をもって「これか」と実感した。
 熱が出てから一番辛かったのは全身の筋肉痛のような痛み(特に腰・両下肢)で、横になっているのが本当に辛く、大人なのに痛くて泣いた。どの体位でも体が痛く、5分おきに寝返りを打つが、本当に辛かった。誰か助けてほしい、助けてほしいと思い、布団にくるまり泣いていた。コロナなのか、インフルなのか、数日前に受けた子宮頸がん検査から感染してしまったのか、はたまた膠原病か、血液の病気か、色々ぐるぐる考え、終わりが見えず、とにかく不安で、時間が流れるのがすごく長かった。

 発熱外来を受診したが、体が痛く待合室で座って待っていることが辛く、涙が出た。うずくまっていた。早く看護師さんが来てほしいという気持ちしかなかった。

 傾聴してもらことも体験できた。発熱外来で看護師さんが来て、第一声、「体が痛くて寝ていられなくてつらいです」と言った。心の叫びだった。看護師さんは私の目を見て「そっか、それはつらいね。お薬飲んだ?家にお薬あるの?今は持ってる?先生にお薬出してもらって、それ飲んだらよくなるからね。体痛いね。寒い?湯たんぽもってこようか?」と言ってくださった。
 私が今、体が痛くてつらいということを分かってくださった。ホッとしたし、体は変わらず痛いけど、少し楽になった。もう大丈夫なんだと安心できた。私がいま痛みで苦しいということを、プロが分かってくれるというだけでものすごく安心できた。本当に、もう大丈夫なんだと思えた。終わりの見えないトンネルの中にいたが、トンネルの外に出られた気分だった。

 検査の結果、コロナ陽性で、自分自身の状態を知って、これもとても安心した。自分の症状の原因がわかる、自分の身体の状態がわかる安心感を知った。ああ、コロナだからこんなにつらいんだ、と。患者さんが自分の身体の状態を正しく理解することの大切さが分かった気がした。

 その後は、自宅ベッドで療養をしている。最初はなかった咽頭痛が突然出現したり、蕁麻疹が出たり、症状がさまざま出ている。しかし薬によって1番辛かった下肢の痛みが和らぎ、食事ができ、安心して横になることができでいる。本当によかった。

 痛みのコントロールはとても重要(当たり前)。
痛みがあるだけで心もつらい。マイナスなことしか考えられない。希望などもてない。早く解放してほしい、助けてほしいという気持ちだった。「薬を飲んだら楽になるから」と声をかけてもらえて、希望がもてた。
 薬で痛みが緩和され、髪を梳かしたり、おかゆを食べたりすることかできた。それが何より嬉しかった。

 発熱してから一度も歯磨き・洗顔・入浴をしていなかった。発汗でとても気持ち悪い。口の中は最悪。痛みが緩和されたのでゆっくりであるが動けるようになり、今さっき、歯磨き・洗顔をすることができた。とてもスッキリした。歯磨き洗顔をしたあと、なぜか、療養期間で本を読んでみようかな、と思えたし、部屋が散らかっているなーと思えたし、友人からの心配のLINEの返信もできた。口腔ケアや洗顔はただ清潔にすることだけでなく、心にもよい影響があった。目線が上に上がったように思った。清潔ケアの意義を体験できた気がする。清潔ケアの意義は、看護学校で学ぶ超基本的なことなのに。あと、この文章を書きながら耳かきもした。スッキリした。

 自分のことを気にかけてくれている人がいること。私は幸せなことに同居人がいて、同居人が買い物をしてくれている。自室にこもっているが、たまに部屋を覗きに来て「大丈夫かー」「なんか買ってくるもんあるかー」「熱はどうなんだー」と声をかけてくれ、それがありがたく、嬉しく、泣いた。これが一人暮らしだったら、何もできなかったし、精神的にすごく辛かったと思う。自分が看護をする側になったら、患者さんのところにこまめに顔を出して声をかけようと思った。患者さんの顔見知り、知っている看護師さん、話を聞いてくれる看護師さんになろうと思った。

 換気をしようとがんばって自室の窓を開けると、桜の木が見えた。今日より咲いてるな、と思って、嬉しかった。外の空気を吸うだけで、なんだか前向きになれた。外遊びをしている近所の子どもの声が嬉しかった。
 病室のベッドでずっと同じ天井を見ている患者さんのことを考えた。離床して、車椅子に乗って、または歩いて、外に出て、季節を感じて、風を感じて、綺麗なものを見てもらう。そういうことができる看護師になりたいと思った。
  

 全て看護学校で習うことで、当たり前すぎることですが、それを自分自身が体験できたことで、より、これから看護師として何ができるかを考えることができたと思います。

 入職3日目でコロナになってしまい、病棟のみなさんや人事のみなさん、同期たちにはたくさんご迷惑とご心配をおかけしてしまいました。
 でも、患者さんと接触する前の研修期間の発病でよかった、と思うようにしています。そして、コロナではありますが、病気で療養する、ということを体験できたことは、経験したくてもできない経験だったと思います。
 このように前向きに捉えるようにしないと、周りの方への申し訳なさや、遅れを取った後の復帰の不安から、心が潰れそうなのです。

 ここまで読んでくださった方がいらっしゃいましたら、ありがとうございました。下手な文章でごめんなさい。もし私の先輩方がご覧になっていましたら、見なかったことにして下さい。新人の分際で感染症になり、このような偉そうな文章をインターネットにアップロードしていることが恥ずかしいです。1日でも早く戦力になれるように、遅れを取った分、復帰後は一生懸命がんばります。そのためにも、今はとにかく、療養に努めます。

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