東京思い出川柳 その③

なんか病む溜池山王13番

「趣味」って一体なんですか?
そんなもん俺には無いんじゃないか。
もっと厳密に言うと、
「人様に堂々と宣言できる趣味」が無い。
人並み以下だけど本も読む。でもだからといって
「僕の趣味は読書です」
なんて口が裂けても言えないし、近年日課にしている(極めて地味な)筋トレも結局は自分の自己肯定感を高める為にやむを得ず行っているルーティーンであるからして、「趣味」と呼ぶにはどうもおかしい。全然違う。
趣味というものの定義を、
「空き時間にやる自分の専攻(仕事)に関係ない楽しいこと」
とするならばそりゃあ俺だって色んなことしてますよ。もうそれはそれはやってます。
でもそれらの多くはとてもじゃないけどこんなところに書けるものではない。俺にも羞恥心があるからね。
そんな調子で長いこと、
趣味:趣味探し
みたいな感じの自分の数少ない「人様に堂々と宣言できる趣味」がいわゆるクラシック音楽の演奏会へ行くことである。
(これすらも厳密に言えば果たして趣味と呼べるのかどうか微妙なラインだと思っているんですが、それについて書くともういよいよキリがないので割愛。)
まず音楽鑑賞が好きで、コンサートホールや劇場のあの独特の雰囲気が好きで、音楽を生業に選んだ人間達そのものも(全員じゃないけど)好き。ちょっと綺麗めな服で会場にいそいそ向かう時間も好きだし、休憩時間にコーヒーとかビールとかワインをホワイエで飲むのも好き。超つまんないプログラムノートの小難しい解説を脚を組んで読んでる自分も好きだし、その日の演者に知り合いがいる場合手土産にちょっとした菓子折りを買っていくのも好き。もし誰かと一緒に行った日は演奏会後に感想を話しながら飲むのも大好き。
はい。
そうです。
愛してるんです。
演奏会に行くことを、どうしようもなく愛してるんです。
でもそれほどまでに愛している故か、終演後なんかちょっと病む。
一人で行った日は尚更。
美しい時間は終わってしまった。
現実に戻って来なくちゃいけない。
音楽の余韻を纏いつつも皆それぞれの日常に戻るべく家路につく聴衆たちの姿。
同じ時間を共有した同胞たちが東京の夜更けに流れてゆく。
あれ?
え、なんで?
なんでちょっと寂しいの?笑
誰かマジでこの時のこの寂しさに名前付けてくんないかな。
そしてこの症状を僕が一番強く感じる会場が港区は赤坂、サントリーホールである。
ここでコンサートを聴いた後、俺はいつも銀座線に乗るべく溜池山王駅の13番出口に向かうんだけど、この道のりのま〜〜〜寂しいことよ。なんなんだろうねこれ本当に。突きつけられる孤独の破壊力たるや。ハンパないっすよ。
右を向けばインターコンチのレストランで食事を楽しむ高所得者達が見えるし、左を見ればいつも通り確かにそこにそびえ立つ首都高。13番出口から銀座線の改札までの長いコンコースと蛍光灯の色。
なんかそれら全てが「東京」を突き付けてきて、そして「そこでひとりぼっちで生きる自分」を否が応にも認識させられるのだ。
平気な顔して颯爽と歩いていたけれどその実、あの時僕の心を支配していたのは、さっきまで聴いていた美しい音楽に甘やかされた孤独の味。
溜池山王、お前マジなかなかやるわ。
いやもしかするとただ単に、
トーキョーでコドクを感じてるオレ...
に酔いしれていただけかもしれないけど、まぁそれはそれで若者らしくて可愛い、よね?

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