多視点に立つということ

こんにちは。しんみょーです。

今回、一緒に考えたいのは「多視点に立つということ」です。
このテーマについて話していきます。


0. 多視点性について考えたきっかけ

今日読んでいた本で、教授でもあり武道家でもある内田樹さんがこのようにおっしゃっていました。

中国の新華社からのメールでのインタ ビューのやり取りが採録されていました。そこで尋ねられたことの一つが「日本人は明治維新をどのように評価しているのか」ということでした。例えば、日本人は黒船来襲を全体として非常に肯定的に評価しているように見えるのだが、それはおかしくないかと。植民地主義的な米国が開国を迫ってやってきたこと。これをあたかも近代化の契機として非常に歓迎しているような 感じの記述を多く見るんだけども、あなたがたは「悔しい」という感情はなかったのか、と訊かれました。そう言えばそうかもしれないなと思ったのです。
黒船来襲のときのリアルタイムの日本人の感情はよくわかりませんが、そ れから150年経ったあとの現代の日本人の歴史の見方はわかります。それは 現在の対米関係に大きく影響されています。今は日米同盟が外交の基軸に なっていますから、黒船来航も、1945年に原爆を二つ落とされて敗戦した ことも、日米同盟の基礎をつくった事件として、今では肯定的な文脈で受け 入れられている。黒船のおかげで近代化できた、敗戦のおかげで民主化でき た。多くの日本人はたぶんそう思っている。でも、そういう歴史解釈には現代の日米関係がそっくり投影している。日本は「米国の恩恵」という文脈で、 これらの歴史的な出来事を記憶しようとしているのかもしれない。だとすれ ば、それは中国人から見るとまったく理解できないということもあるのかも しれない。そうお答えしました。

内田樹 (2023) 「多視点性と成熟」

ここで言われてるのはつまり、歴史の意味や善悪というものは当時の解釈ではなく、「今」の解釈であるということです。時が経つと、その発生した事件が最終的に良かったのか悪かったのかは「今」生きる人達の価値観に依るところがあります。

そして、重要なのは、「今の解釈」は人によって違うということです。ここに多視点性の必要性が垣間見られます。なぜか。

それは簡単。人とコミュニケーションする際、必要となるのは共通の基盤です。それがないと話が噛み合わないことがあったり、理解し合えないことがある(としても、必ず理解し合うことが必要かどうかの議論はある)。その際、視点を多くもつことで完全な合意は得られなくても、相手を少しでも理解しようと試みることができる。この「理解試行可能性」(造語)が大事なんだと思います。この理解試行可能性は多視点性からしか生まれません。だから、多視点性が必要なのです。

1 ソクラテスの「無知の知」

私は、人同士の争いや国同士の争いは、相手のことが理解できないから起きると思っています。相手を知ろうとする動機はそこに生まれるとも思っています。なので、完全に分かり合うことは不可能ですが、ある程度なら分かりあえます。ソクラテスの有名な言葉に、メタ認知の起源となった「無知の知」(自分が何もわかっていないという事実を知る)という言葉があるのは皆さんご存知だと思いますが、これには(実は)続きがあります。そして、この続きこそがソクラテスの言いたかったことなのです(多分)。それは、さっきの文と合わせると


自分が何も分からないということを知ろう。
(続き→だから、対話を通じて相手のことを知ろう


です。この後半が一番大事なんです。ソクラテスも「理解試行」の大切さを問うているのですね。先ほど、「理解試行」を行うために多視点性がいると言いました。しかし、この多視点性はどう養うのか。
これは、もう読者の方もお気づきかと思います。(ありきたりな言葉ですが重要なので書きます)それは、

自分たちの生活圏から抜け出して新しい世界を知ること、体験してみること
色んな文献、人物が語る歴史や考えを知ること
偉くならず、謙虚に何事からも誰からも「教えられる側」=「学ぼうという姿勢」でいること

本当にこれに尽きると思います。

実体験としては、ホームレスの方への支援をされている団体を知って、そこでのボランティアの中で自分とは全く異なる生き方で生きている人たちのことを私は知りました。そして、今まで勝手に持っていたバイアスみたいなのは、たった一回の経験でまったくそんなことなかったんだって思わされました。

人間は、容量無限のメモリなんて持っていないし、どんな視点にも立てるように必要な経験や知識を入れるための膨大な時間なんてありません。
ので、何かしら人と分かりあえないことは必ずあります。

でも、そんなときに、謙虚に知ろうとする、理解しようとする姿勢こそが
分かり合うことの第一歩であると私は信じています



ここまで読んでいただき、どうもありがとうございました (◍ ´꒳` ◍

もしよければ、コメント等頂けるとありがたいです。(エラソーに言ってるけどここの論理おかしいんじゃね等でもいいです。いや、やっぱり肯定的な方が良いです。)


参考文献
内田樹 (2023) 「多視点性と成熟」→個人的におすすめ


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