Libraについて論じる際に意識しておきたい2つの論点と、スマコンプラットフォーム機能が果たす役割

Libraについて解説記事やツイートを見ていく中で、Libraについての論評は下記2つの論点に分けて理解を試みるとスッキリ整理される気がしてきたので共有します。

その2つの論点とは下記の通りです。

・ステーブルコインとしてのLibra
・スマコンプラットフォームとしてのLibra

それぞれの論点について順番に説明していきます。

ステーブルコインとしてのLibra

多くの有識者が論じているLibraの性質は、この1つ目の「ステーブルコインとしてのLibra」になります。

FB経済圏やコンソーシアム参加企業の経済圏で利用可能な通貨だったり、Fiatへの対抗馬となるグローバル通貨になり得るという主張は、この「ステーブルコインとしてのLibra」の性質について論じたものになります。

BTCとの比較論についても同様です。「BTCのSoVとしての機能の重要性が相対的に高まっていくであろう」という主張は、このステーブルコインとしてのLibraの性質について着目したものです。

また、ステーブルコインとしてのLibraは、XRPや、JPモルガンや三菱東京UFJなどが発行する銀行発行のプライベートチェーン通貨とも比較をされたりします。

通貨バスケット制のリザーブの信頼性や、証券性の該当性、STOを絡めたビジネスモデル等もステーブルコインとしてのLibraについて着目した時の評価と見なすことが出来ます。

スマコンプラットフォームとしてのLibra

Libraについて論じる際に意識しておきたい2つ目の論点は「スマコンプラットフォームとしてのLibra」です。

既存のスマコンプラットフォームとして注目されているETHやEOS、Cosmos、Difinity等との比較論は、スマコンプラットフォームとしてのLibraに着目した際の評価になります。

「既存のブロックチェーン関連アプリやICO/STOが今後Libraプラットフォームに移る可能性がある」という主張もスマコンプラットフォームとしてのLibraについて着目した時の論評であると言えるでしょう。

プログラミング言語Moveについてや、コンセンサスアルゴリズムBFTについても他のスマコンプラットフォームとの比較論のなかで評価されていくことになるでしょう。

Libraがステーブルコインの基盤チェーンにスマコンプラットフォーム機能を付けた理由

ステーブルコインとしてのLibraについての価値に注目する人のなかには、Libraが持つスマコンプラットフォームとしての機能に疑問を持つ人がいます。

なぜなら、Libraがステーブルコインとしての価値にフォーカスするべきであるという立場側では、スマコンプラットフォームとしての機能のために必要になるコンセンサスアルゴリズムBFTはスケーラビリティの面で大きなマイナス要素になるからです。(BFTはノード数が増えるとエクスポネーシャルに通信量が増えるため処理速度が遅くなるから。)

LibraがFB経済圏やコンソーシアム参加企業経済圏内で利用可能なグローバルステーブルコインとしての機能にのみ特化するべきだと考えているのであれば、確かにスマコンプラットフォームとしての機能は付けるべきではないと言えるでしょう。

ただ、Libraはステーブルコインとしての機能だけではなく、スマコンプラットフォームとしての機能も有しています。

それではなぜ、Libraはスケーラビリティのリスクをとってスマコンプラットフォーム機能も付けることにしたのでしょうか。

その理由は、Libraが掲げるビジョンに目を通せば理解することが出来る、と筆者は考えます。

例えばLibraが掲げるビジョンの1つである「人には合法的な労働の成果を自分でコントロールする生まれながらの権利がある、と私たちは考えます。」は、Libraが単なるステーブルコインとしての役割だけを果たすのではなく、スマコンプラットフォームとしての機能も有している必要性を感じさせてくれます。

合法的な労働の成果を自分でコントロールする権利を世界中の人々に与えられるようなサービスは、単にステーブルコインとしてLibraを発行するだけでは提供することが出来ません。しかし、Libraというスマコンプラットフォームで動く分散型アプリなら、このビジョンを実現させる一助になれるかもしれません。

その他にもLibraが掲げる下記ビジョンのなかには、実現するためにステーブルコイン機能だけではなくスマコンプラットフォーム機能が必要だと感じさせてくれるものが含まれています。

・もっと多くの人が金融サービスや安価な資本を利用できるようにする必要がある、と私たちは考えます。
・人には合法的な労働の成果を自分でコントロールする生まれながらの権利がある、と私たちは考えます。
・グローバルに、オープンに、瞬時に、かつ低コストで資金を移動できるようになれば、世界中で多大な経済機会が生まれ、商取引が増える、と私たちは考えます。
・人びとは次第に分散型ガバナンスを信頼するようになる、と私たちは考えます。
・グローバル通貨と金融インフラは公共財としてデザインされ統治されるべきである、と私たちは考えます。
・私たちには全体として、金融包摂を推進し、倫理的な行為者を支援し、エコシステムを絶え間なく擁護する責任がある、と私たちは考えます。
(出典:Libra White Paper

つまり、Libraは、単にFB経済圏やコンソーシアム参加企業の経済圏で利用可能なステーブルコインというショボい発想ではなく、Global Financial Systemというビックビジョンを実現するために、スマコンプラットフォーム機能を付けていると解釈することが出来るのです。

最後になりますが筆者は、Libraが有する各機能について評価する時には、「Libraが掲げるビジョンを実現するための手段になっているか?」という観点から思考すると理解が深まるのでは、という仮説を持っています。

認識違い等がありましたらご指摘いただけると嬉しく思います。


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