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美しさと凶暴さが表裏一体の世界

2024/01/19 AM9:00 ハワイ・ノースショア。世界最高といわれるサーフポイント、バックドアとパイプラインに入ってきた。水中サーフィン撮影をしてみた感想です。

スイートスポットを見つける

ビーチ付近のカレント(潮流)を見ながらどこに行きたいかポイントを見定める。カレントを上手く利用しつつ泳いでポジションへ。

ビーチからの入水時、波はじゃんじゃん押し寄せてくれど、ビーチから20〜25m沖までは浅瀬(砂とリーフが混在)で歩いて行けるので、ほぼ難なく沖まで出ることができた。

さまざまなフォトグラファーの写真や映像を見てて、波の影響を受けないスイートスポットがあることは知っていた。そこは、波が来ても強く回避行動を取らなくてよい場所で、波の端っこみたいなところだ。
反対にスイートスポットを外れると、迫力のある写真は撮れないし、波に飲まれる可能性もある。

下の写真もかなりやばそうなとこにいるように見えるが、スイートスポットなので回避行動は最低限で大丈夫。最小限といっても波の進行方向逆側には常に泳いでいないといけない。

スイートスポットから撮影

さすが世界的なサーフポイント。知っている有名なサーフフォトグラファーがたくさんいた。私は新参者なので皆さんに軽く挨拶をした。「おねしゃす!」

手前4人は全員フォトグラファー

波が割れるスピードが速いのと、その分パワーも強いので、とにかく飲まれないように、だけどサーファーが自分の目の前を通る場所を見定める。スイートスポット内ではほかのフォトグラファーの動きを真似しつつも、最初なのであまり出しゃばらないようにした。

バックドアとパイプライン

今回入ったのはバックドアとパイプライン。この2つのポイントは1つの波なのだが、サーファー目線に立ったときに、右(レギュラー)に抜けるか、左(グーフィー)に抜けるかで呼び名が変わる。

サーファー目線で
右へ→バックドア
左へ→パイプライン

どちらに抜けるかで名前が異なる

まずはバックドアで撮影を開始。とにかく誰彼かまわずテイクオフした人はすべて撮った。
自分の位置と、サーファーの位置を探りながら、サーファーの邪魔にならないように、一方で沖合の波にも注意を払い、飲まれないようにする。なんだかんだ注意を払っていれば大丈夫そうだと思い、次はなるべく日本人サーファーを撮りたいなと考えていた。

その矢先、プロサーファーの佐藤魁くんがレギュラー方向にテイクオフしてきた。きたー!と思いカメラを向ける。撮る。そこまではよかった。でも撮るのを優先したために回避行動が間に合わず波に飲まれて海中へ引きずり込まれた。

波うずまく海の中

地獄の海中へ

その時のパワーたるや、トラックに追突された感じ(追突されたことはない)。どうあがいても人間の筋肉じゃ敵わない。きっとオリンピック水泳選手でも逆らうことができないパワーだったと思う。とにかく身体が水に浮いた木の葉のように波に持ってかれる。

意図せずカメラハウジングも握っていられなくなり放してしまう。ハウジングには流れ止めをつけていたので無くすことはなかったが、浅い海底のリーフにあたって壊してしまう可能性もあった。手放したときは内心やばいと思ったが、カメラの心配より自身の身体を海面に浮き上げるのに必死だった。
※幸い、ハウジングもカメラも問題はなかった。

ものの1秒でとにかく海中に引き込まれた。もろにくらった波が過ぎ去って海面に上がろうとするけど、どっちが上かもわからない。コンタクトをつけているので目が開けられないからだ。

海面では波は通りすぎたようだけど、海中では四方から波のパワーが押し寄せて、なかなか上に上がらせてもらえない。この時は本当に怖かった。腕も脚ももがいてもがいてやっと海面に出れたと思ったら次の波がもうすぐそこ。

わずか3〜4秒ほどで息を整えつつ、とにかく肺に空気を入れる。潜る。でも、またしても波に身体が持っていかれる。息が続く限りもがいてもがいて海面に出る。この時点でほとんど酸欠状態。一旦セットは過ぎたかのようだったが、ここはまだモンスターの腹の中。小山のような波はまだまだ来る。

どうする?

波の影響を受けない沖へ戻るか、ビーチに戻るか。一瞬考えたけど、さすがにこれから沖に行って脚が攣ったりでもしたら大変だと思い一旦ビーチへ。

自分が今どの辺にいるのか把握

といっても戻るのも大変。下は浅いリーフ、ビーチに向かおうとすると後ろから凶暴な波がやってくる。白波の中は四方から残波があり、なかなかビーチに戻らせてくれない。

私がいたところからビーチは20mぐらいだったが、この距離が途方もなく長く感じた。泳いでも泳いでもビーチに着かない。

あー、きっつーぅ!

そんなことを思いながらひたすら腕と脚を使って泳いでいた。

あー、きっつーぅ!

と思ってたら、知らぬ間に浅瀬へ辿り着いていたようで、足が砂地につく。はぁ助かったぁと心の底から感じた。

バックドアでの反省

20分ほど休憩をした。その間になにが原因で波に飲まれたのか考えた。考えると、写真を撮ることを優先して、回避行動が遅れたから。仮に回避行動をしていればその後も撮影を続けられた。では、なぜ回避行動が遅れたか?それは、それまでの数十分でなんとなくスイートスポットでの立ち回りを覚えて、(回避行動の度合いで)これぐらいなら大丈夫だろうという感覚が形成されたと同時に、それが慢心への変化したこと。

「これぐらいなら大丈夫」という感覚は全く大丈夫ではなかった。
常に危険と隣合わせであることを再認識した上で、2ラウンド目は念願のパイプラインへ。

念願のパイプライン

パイプラインは憧れの場所の一つだった。なぜか?それはさかのぼること2019年。RVCAのイベントが渋谷で開催された際にサーフフォトグラファーとして活躍するZak Noyle氏が自身のキャリアや作品を紹介する講演を実施した。世界中の海でサーファーを撮ってきた彼だが、主戦場とするのがハワイ・ノースショアであり、パイプラインであった。

↓Zak Noyle氏のインスタグラム

そのイベントで、彼の作品がポスターとして参加者にプレゼントされ、私も一枚もらった。そのポスターがまさにパイプラインの写真であった。本人のサイン入りの一枚は家に飾っている。

この波見てみたい、撮ってみたいという思いが、パイプラインへの導火線に火をつけた。

自宅に大事に飾ってある

そんなこんなでパイプラインに来たわけだが、20分前に死にそうになったのに懲りずに入水する。我ながら馬鹿だなと思う。でも今度は慢心せず、ちゃんと自分の位置を確かめること、沖合の波をチェックすること、危ないと思ったら迷わず回避すること、この辺を意識して入った。

上記の意識と恐怖心を持ちながらも、憧れのパイプラインを撮影できていることひとてつもない幸せと喜びを感じた。美しさと凶暴さが表裏一体の世界。思い憧れた場所に来れたことに感謝した。

さらにSNSやテレビでしか見たことのない世界トップの選手を誰よりも間近で撮影できている。このことにま感謝しながら、パイプラインには45分ほど入っていた。結構脚が攣りそうだったのです。

美しい弧を描くパイプライン

とはいってもまだ1回目。1500枚ほど撮ったけど、納得のいく写真は全然撮れていない。腕試しで入った1回目だから、そんなに攻めなくてよいと思っているけど、あとで写真を見返すと、ここもうちょっとこうできたな~という思い、反省点がでてきて悔しさを感じてる。

今回考えた反省点を意識しつつ、今は次の機会を狙っている。

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