【BL小説】Finder #8
★推奨BGM
音小さめでかけながら読んでもらえると
なんとなくせつない感じが合うかなって。
#8
あれからしばらくは、見える世界がキラキラしていた。
あんなにもつまらなかった大学にも
今なら気分よく通えそうなのに
今は夏休み真っ只中で
行くところはバイト先だけだ。
バイト先でも機嫌がよかったらしく、
最近笑顔が増えたねと、店長にも言われた。
我ながら、気分にムラがあるなと思う。
もうすぐまた蓮と会える。
そう思うと、あとしばらくは気分よくいられそうな気がした。
そうだ、
せっかく花火見るなら浴衣着るのもいいな。
さっそくLINEしてみる。
「花火の日さぁ、せっかくだから浴衣着ない?
神社に屋台いっぱい出るらしいんよ!」
「いいけど、、着方がわかんねー。
持ってくから、柊の家で着せてくれるなら…」
「オッケー、まかせとけ!」
浴衣で縁日なんて、
デートみたいだなとも思ったけど、
ま、別に変じゃないよね??
蓮は浴衣も似合いそうだよな…
気が早いよなと思いつつ、
その日の夜、浴衣を引っ張り出してきた。
久しぶりだから試しに着てみたりして。
これ、洗っといた方がいいかもな…
深夜に洗濯機を回すのは気が引けるので、コインランドリーに行くことにした。
特に何もない住宅街に現れる、そこだけ明るい夜中のコインランドリーがなんとなく好きだった。
たいがい誰もいない。
暗黒の世界からここだけが切り離されているような感覚。
この中だけは安全地帯な気がしてなんだかほっとする。
待っている間、すぐ外に置かれていた灰皿の前でタバコを吸った。
わかりやすく浮かれているのは自分でもわかってる。
いつまでも子供っぽい自分。
大人になれない自分。
…そもそも大人ってなんなんだ?
大人とは何かがわからないのに
年をとれば自動的にものわかりのいい大人になるんだろうか?
ものわかりがいいのが大人なのだとしたら、
別に大人になんかならなくてもいいとすら思った。
洗い上がった浴衣を持って帰ってハンガーにかける。
着るの楽しみだな。
縁日には何があるんだろ?
かき氷と、たこ焼きと、焼きそば、、それから…
遠足前日の小学生みたいだなと気づいて苦笑した。
しかも、花火は明日ですらない。
あまりにも子供っぽい自分に呆れ果ててベッドに寝そべる。
いつからこんな風になってしまったんだろう?
考え始めたらそのことしか頭が回らないし
都合が悪くなると黙るし
そのくせ顔には全部出るし…
子供の頃の方がよっぽど大人だったな…
あの頃はまわりばっかり見て
まるで、自分の本心を知られたら殺されるゲームでもしているかのように
誰にも本音が言えなかった。
閉ざすことで何かを守ろうとしていたのかもしれない。
それも今となってはわからない。
もっと蓮のことが知りたいと思った。
だいたい同じ期間生きてるのに
なんであいつはいつもあんなに落ち着いてるんだろう?
何をどう感じて
どんな風に考えるのか
もっともっと、知りたいと思った。
…to be continued
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読んでいただいてありがとうございました。
気が向いたら更新していきます。
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では、また。