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30歳のカミングアウト

約4ヶ月前の2月28日、30歳の誕生日に自身のセクシャリティをカミングアウトするという体験をしました。
「みんなからどんな反応があるかわからない」という不安から、とりあえずInstagramのみに投稿をしたのですが、自身の友人知人に留まらず多くの方からポジティブな反応をいただき、この体験は想像以上のとても素晴らしいものになりました。


知らない方も多いかもしれないですが、6月は「プライド月間」。
カミングアウトした身として、まずはInstagramに投稿した内容をnoteに掲載しようと思いました。
以下そのまま掲載しますので、お暇なときに読んでいただけたら嬉しいです。


<Instagram画像内の文章>

30歳の誕生日を迎えました!
ここまで元気に充実した日々を過ごせてきたのは、いつも近くにいてくださる友達や家族、親族、お世話になっているみなさんのおかげです。
本当にありがとうございます。

とまぁ有り体なお礼の言葉は短めにしておいて…。
1月下旬から2月の頭頃、僕はこの30歳の節目を迎えるタイミングで、自分の殻をやぶって綴ろうと決めていたことがひとつありました。
まぁそれなりに覚悟をして書くことなので、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
(人によっては不快に感じる内容かもしれないですが…)

ということで結論から話をすると、僕は現代において「セクシャル・マイノリティ」とカテゴライズされている側の人間の1人です。

LGBTQ+という表現の中で言うと、“G”にあたります(昔はBかQだったかもしれないですが…)。
この時点で「まじか!」や「まぁなんとなくわかっていたけどね」などなど、いろんなリアクションが想像できますが、とりあえずそういうことなんです。

まず、この場で初めて知った大切な友人や知人の皆さん、直接伝えることができなくてすみませんでした。
言い訳ですが、ときにセクシャル・マイノリティに対して風当たりが強い世の中で、セクシャリティを表明することを「怖い」と感じる部分がありました。

それでも決意したきっかけは、とある大事な友人でもある後輩が言ってくれた言葉です。
昨年末ごろ、僕はその友人に直接カミングアウトをしました。すると、「言ってくれなかったことに腹が立っていた。人として好きだからそれでも友達として仲良くしたいし、仮に僕がそれで離れる友達ならそれは友達じゃない」と言ってくれたんです。
(※伝わりやすいように過程も言葉もコンパクトに編集しています)

これまでカミングアウトしてきた他の友人も言ってくれた言葉ではありますが、その友人から言われた言葉が一番嬉しくて安心できて、そのときのことを1,2ヶ月のあいだ反芻するうちに、徐々に言えるような心持ちになっていった気がしています。

このタイミングについては、「まぁ30歳になるタイミングだしキリもいいか」くらいのほほんとした理由です。笑

そして理由はもうひとつ。一旦皆さんに質問をしますが、ニュースを見ていて自分が傷つく経験をしたことはありますか?
僕はあります。

最近も話題になっていますが、心ない政治家の不用意な発言が取り上げられたりすると、「なんでそんなふうに言われないといけないんだろう」、「日本の社会って実は全然前に進んでいないのかもしれない」と思わされます。

「何も悪いことはしていないし、誠実であろうと生きてきたのになぁ」と思うと自然と涙が出るときもありました。

他にも生きてるだけで悲しくなることや怒りたくなることはありますが、その話は今回はさて置いて…もうひとつの理由はそんな状況を自分の生活する範囲の中だけでもいいから変えたいと思ったからです。

当事者やアライ(※当事者に寄り添うストレートの人のこと)の方々は「カミングアウトなんてしなくてもいい未来が理想」と言ってくれます。
それはたしかに理想的かもしれないですが、ではその未来はいつ、誰が引き寄せてくれるんだろうかといつも思います。
これまでも矢面に立って行動してくれる人々がいたから未来は変わってきたはずだし、それはこれから先も変わらないはず。
権利を主張するようなことを行うつもりはないけれど、待ってるだけなんて自分は嫌だから、もっとちゃんと知ってもらえるきっかけになりたい。
そう考えていました。

自分は同じセクシャリティの人たちから見ても「絶滅危惧種」「超レアもの」と揶揄されるようなタイプらしく、いわゆる2丁目というエリアの経験は本当に少ないし、同じセクシャリティの友達も大していません。

どちらかというとストレートの友達と一緒にいる方が心地がよいタイプで、
スポーツやアスリートにも関わっているので、「周りの人に誤解を与えるようなことがあってはならない」ということと、「いつカミングアウトをしても信頼してもらえる人であろう」と、気をつけながら生きてきました。
(※スポーツやアスリートに関わっているのは、過去に命を救ってもらった恩がスポーツにあるからです )

で、実は一番苦しんでる当事者のケースのひとつは、こういう自分みたいな人間なんじゃないかと思っているんです。
周りの人やコミュニティが大好きで、大切だからこそ、自分を隠しながら生活することを選んでいる人。あるいはそう生活しなければいけない環境にいる人。つまり日常のコミュニティにもその外にも、打ち明けられる場所や人がいない当事者。

なので、このカミングアウトをきっかけに身近にそういう人がいるということ/いるかもしれないという可能性を、僕が繋がってる皆さんには知ってほしいなと思っていました。

「いない」のではなく、「言えない」が正しいし、「いない」のではなく、「いないことに自分でしてる」んです。

数年前、ある競技で現役としてプレーする当事者の選手から、「そのことについては自分自身でも触れたくない」と言われ、「受け入れてもらいやすい状況だったらどれだけ違ったんだろう」と今でも考えます。

日本はセクシャル・マイノリティに対する制度も遅れている国で、「家族」と線引きされる中に同性のパートナーが対象に含まれないことなんてざらです。
コロナ禍で入場制限がかかる中、仮に「家族までなら呼んでもいい」と言われた試合があってもセクシャル・マイノリティの人は大切なパートナーも呼べない状況でした。
そんな状況も理解のある人が増えたら変わるかもしれない。

メディアによって形作られたセクシャル・マイノリティ像についての知識は
あんまり提供できないかもしれないけれど、自分のような過程を辿ってきた人のことはたぶんよくわかるし、自分だからこそ話せることがあるかもしれない。
当事者のことを知りたいと思ってくれる人がいるなら自分の経験談をいくらでも話すし、「自分は当事者かも…」と悩む人がいるならいくらでも寄り添いたいと思っています。

少し話が逸れてしまいましたが、そんなこともずっと考えていたので、
きっかけやタイミングもありカミングアウトするに至りました。

ちなみに...カミングアウトをする前と後で僕の人格は何にも変わりません。

このセクシャリティによって人が怖くてしょうがなかった時期を超え、今が幸せだと思えるのは間違いなく仲良くしてくれている皆さんがいるからです。

ストレートの友達と分かり合って、信頼してもらって、仲良く居続けられる未来をこれからも信じていきたいですし、これまでどおり仲良くしてもらえるのであればそれが何よりも嬉しいことです。
(これは心の底から思っていることなので、書いてるだけで涙が出そうになります笑)

直接お会いしたことのある方で、もしこれまでの僕の行いを踏まえても「信じられない」「それでも無理だ」と思われる場合は傷つきたくないので何も言わずにそっと距離をおいてください。笑

正直、このことについてはどうしたって弱くなってしまう自分がいます。
どれだけ信頼している相手だとしても、ブレない芯を持って「大丈夫」と思える自信はないし、これまでの人生をそれなりに誠実に生きてきたとしても、セクシャル・マイノリティという側面だけで「No」と言われ切り捨てられる残酷さに向き合う痛みは計り知れないものです。

そういう方にはせめて大切な友人や家族、自分の子どもがそうだったときに受け入れる心構えくらいはしてほしいなと思います。

そして最後に、僕の直接のカミングアウトを受け入れてくれ、ここにメンションをつける相談にも快諾してくれたシトウレイさん、ケリー隆介さん、立石諒さん、森田洋介さん、稲橋良太さん、田中美里さん、青木蘭さん、喜連航平さん、木村貴大さん、猪又範行さん、富井可南子さん、本当にありがとうございました。
(もちろん、ここに掲載していないこれまでにカミングアウトを聞いてくれた皆さんも!)

皆さんからの温かい言葉をもらったおかげで、この全世界発信という怖すぎるSNSの場にカミングアウトすることができました…😂

カミングアウトする側はギリギリまで受け入れてもらえるか拒否されるかわからない怖さを抱えたまま、勇気を出して話します。
「僕の周りだけでもこういう人たちが受け入れてくれるよ」ということを示すためにメンションをつけることを相談させてもらいました。
(僕の周りで悩んでいる方がもしいたら皆さんのことも頼ってください〜✌️✨)

まだまだ言いたいことも説明したいことも山ほどあるけど一旦ここまで。
長文すみませんでした!
言ってしまったからには明日からハラハラドキドキの期間が始まりますが、30歳も元気に頑張ります!

ということで改めてこれからもよろしくお願いします!

Instagramより

<Instagramのキャプション>

おかげさまで2月28日で30歳になりました!

ということで、この30歳のタイミングで皆さんにお伝えしようと思っていたことがあり、だいたい3,000〜4,000文字くらいになってしまいましたが書きました(Instagramの限界を超えたので画像にしてます笑)。
スライドして最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

この内容を出すことである意味0歳の自分がスタートするような気分ですが、31年目を「改めてよろしくお願いします!」と言える皆さんとすごしていきたいなと思っています。

いろいろと書いてはいますが、言いたいことは「本当に身近にいるんだよ」ということ。そして、「言えない状況を作ることに加担しているのはもしかしたらあなたもかもしれないよ」ということ。

何気ない発言のひとつひとつが、冗談でやっているつもりのノリが、誰かの心の蓋をどんどん重くしているかもしれない。さらに言えば、傷つけたり、未来を諦めさせているかもしれない。

そんな可能性を考えてほしいし、いろんな経験をして大人になった今だからこそ、気づいて変われることもたくさんあるはずだと信じてます。

もちろんモラルのない人もいます。世間ではやっぱりノイズの方が大きく聞こえるし、迷惑をかける人の方が目立つし、そのせいで誤解されてしまうことも多々あります。

でも、その反面誠実な人だってちゃんといます。そしてその人はもしかしたら身近にいるかもしれません。そういう人こそ、いつも周りにいる人を大切に想いながら、自分の在り方を憂いて葛藤しているんじゃないかと思います。

少しでも偏見と自身のセクシャリティを十字架として背負う人が減るようにという願い、そして優しい世界が広がっていくようにと願って🤝

ということで30歳もよろしくお願いします!

Instagramより


この投稿には100件ほどのコメントの他、DMやLINEで多くの連絡をいただきました。コメントや連絡をいただけたこと自体とても嬉しかったのですが、ラグビーの現日本代表の中村亮土さんはじめ多くのアスリートがコメントやいいねをしてくれたこと、そして同性の友人知人からのコメントが多かったことは本当に嬉しく、救われる気持ちでした(今コメントを読み返しても気を抜くと泣きそうになるなど)。

そしてこのカミングアウトから約4ヶ月が経ち、これまでの友人や初めましての方、いろいろな人に会い、話しました。

同性のアスリートの友人(ストレートでいわゆる"ゲイ受け"をするタイプ)からは、SNSのDMや銭湯でのモラルのない当事者の行動の話を聞いたりもしました。それもかなりドン引きな内容。
でも、「ゲイのことを昔は嫌いだったけど大人になった今はそう思わない」と言ってくれたことや、「結婚したいとかは思わないの?」と質問してくれたこと、僕自身の経験談を楽しそうに聞いてくれたことがとても嬉しかった。
カミングアウトする前はストレート男性同士が日常的にする恋愛や結婚などの会話に本心で参加できない葛藤があったし、いつかそういう話をセクシャリティ関係なくできる日が来ることを願っていたから。

男性パートナー同士で海外で子育てをしている方や、FTM(Female to Maleの意)のトランスジェンダーの方との出会いは自身の考えや世界の見え方の幅を広げてくれました。

仲のいいラグビー選手のファンの方は「あの投稿の馬場さんですよね?」と、ラグビーの試合やイベントの会場で声をかけてくれるようになりました。

10個ほど年齢が下の後輩と飲んでいるときには、セクシャリティの違いに対する考え方が僕たちのそれよりも遥かに寛容なんだと驚かされたり…。

カミングアウトをしなかったら知らないままだった友人の考え方や世界がたくさん現れました。「過去の自分は友人の考え方や世界の在り方をこんなにも知らなかったのか、もっと話せることがたくさんあったんだ」と、「もっと信じてよかったんだ」と気付かされる日々です。


<カミングアウトをしてから気づいたことや感じていること>

そしてカミングアウトをしたことで、徐々に忘れ、失っていくものが一つできました。それは「カミングアウトをする前の自分の気持ちや葛藤」です。
今、悩んでいる人の多くはカミングアウトをする前の自分と近い状態か、それ以上に悩んでいるはずです。その気持ちに寄り添いたいと思いつつも、カミングアウトとトレードオフのような形で、時間が経てば経つほど昔の自分の記憶が断片的になっていく状態になりました。なぜなら、カミングアウトをする前の悩みはもう感じられないから

カミングアウトをする前、「カミングアウトをした方が楽だよ」という意見も聞きました。でもそれって、「カミングアウトをした結果、それが丸になった人だから言えることじゃない?」と思っていました。

カミングアウトをすることで楽になるかどうかなんて状況によって人それぞれ。
「親に勘当されるかもしれない」
「大事な友達が離れていくかもしれない」
僕もそんな不安を抱えていました。

例えばそんな不安が現実になったときに、「その程度の人だったんだよ」というアドバイスを外野からするのはある意味簡単です。でも、言う側がそう思えても当事者がそう思えるかどうかは相手がどれだけ大切な人だったかに依存するのだから、まったくの別物です。

悩んでいる人に対して「カミングアウトをした方が楽になれるよ」なんていろんなステップをすっ飛ばしたアドバイスをしない人間でいられるためにどうすればいいのかを考え、昔の自分の悩みや違和感を大切なものとしてできるだけ長く抱えていきたいと感じています。


もうひとつ自分が感じていること。
それはセクシャリティに対する言葉の違和感です。
今は「LGBTQ+」という言葉以外に、たくさんのセクシャリティを表す言葉があります。それそのものはとても素晴らしいことです。

でも、言葉があるからといって他者が誰かをラベリングする風潮は違うなと。曖昧でもいいと思うんです。
僕は「自分がゲイだ」とカミングアウトをしましたが、セクシャリティを表す言葉は「自分が何者なのかを知ることで安心を感じたり、自信が持てる人のためにある」と個人的に思っています。
(この違和感を的確に表してくれている編集者の今野さんのツイートがこちら。是非読んでみてください)

そして、「曖昧」という状態も一つのアイデンティティだし、その答えを人生の中で出し切る必要はないのではないでしょうか。

例えば、「自分はストレートだ」と思っているからといって、「ストレートのままで生きていかなきゃいけないのか?」と問われたら「No」だと僕は思います。「バイセクシャルで異性のことも選べるから結婚を目指した方がいいのか」と問われたらそれも「No」。
どんな出会いや別れがあるかわからない人生の中で、一生剥がせないラベリングをする必要はないし、自身の内面の変化だってきっとあります。

そして自身のセクシャリティが曖昧なときこそたくさん悩むし、曖昧だからこそ表現も難しい。理解してくれる人の数も少ないから言いにくくなります。そう思うから、セクシャリティが曖昧であることに対して自分はリスペクトを持って生きていきたい。悩んだ末にどんな選択をしても、その過程で葛藤を経ないものってきっとないはずだから、人それぞれの生き方をを尊重できる人間でありたいと感じています。


なんだか取り止めのない内容になっている気もしますが、どうにか主張したいことが伝わってくれると嬉しいです…。
とりあえず今悩んでいる人に伝えたいことは

いつか悩んでいる方にこのnoteが届く日が来るならば、それがこの記事を書いてからたとえ何年後でも、僕はいつでも話を聞くよということ。
そして、そのときのために今よりもっと寛容で、いろんな在り方を受け止められる器を作っていきたい。たくさんのことを理解できるように、毎日少しでも考えていきたい。

ということです。


Instagramのカミングアウトの文章だけでも4,000文字になってしまい長くて申し訳なく思っていたのに、このnoteは7,000字越え…。


ヘテロセクシャル(=ストレート)含むすべての人が、しがらみなく生きていける未来がくることを願って、何かテーマが思いついたときにはまたSNSでちょこちょこ発信していこうかなと思っています。


とにもかくにも、こんな長い文章を読んでいただいた皆さん、ありがとうございました!
初めて読んだよという方は改めてよろしくお願いします!

👋