見出し画像

第二回 運動

2021.6.5
第二回

 二回目を書いていきます。前回は左手で文字を書くときに思うことを書こうとしたら、幼少期のストップウォッチ遊びの話をして終わりました。今回も2000文字を目安に書いていきます。これはコンスタントに2000文字を書く練習なので、ほぼ一筆書きで行きます。

 さて、今回は本題に戻って、左手で文字を書くときに思うことについて書いていこうと思う。僕はほぼ毎日、左手で文字を書くことをしている。キッカケは職場で暇な時間が出来て、試しにやってみたら面白かったからである。やり始めて大体4ヶ月くらい経ったかと思う。その間に色々と思うことがあった。だからネタはある。とりあえず思い付くことから書いてみる。

 さっきも書いていた。最近家で書くときは、もっぱら洋書を写している。いま読んでいる、’Vagina: A Re-education by Lynn Enright’ をルーズリーフ一枚分書いている。この本は宇多田ヒカルがインスタグラムで表紙をアップしたことで知って、英語に触れるためにも読んでいるのだが、タイトルがなんとも唐突。内容はタイトル通り女性器の構造から性教育の話やら妊娠の話だったり、主に社会的にタブー視されていることに切り込んで話している。内容自体も今まで知らなかったことだらけだし、普通に生活していたら知らなかった情報だったり価値観に触れられているので満足している。そしてそんな内容を母国語ではない英語で、尚且つ左手で写しているのである。

 これは大変に脳も腕も体も活発に動くのだ。まず、左手で文字を書き始めると、明らかに脳が普段と異なった動きをしているのが分かる。何となく左脳が混乱している感じがする。そして、脳が今行っている動きを理解しようとするのだが、ずっとぼやけたままの状態が続いているといった感じである。

 左手で文字を書くというのは運動にもなって、2、3行文章を書いただけで肩が凝ってくるし、左手首から先の動きだけだと上手く書けないので、右手右腕が力を加えることで良い体勢を作っている。そのまま書き進めると、左よりも右腕に疲労が溜まっていることが分かる。また、腰のあたりにも力が入っているのか、弱い筋肉痛も感じる。これはまさしく運動なのだ。机の上でペンと紙があればすぐに出来る運動なのだ。

 そんでもってルーズリーフ一枚分を書き終わるころには、程よい肉体的疲労とやり切った達成感が生まれ、気持ちが良いのだ。結局はそれのためにやっているようなところがあるのだが、それはこの行為のごく一部の副産物。他にも左手で文字を書く魅力というのは存在する。

 まず、字を書くという行為を、再認識できるという点だ。字を書く行為は小学校高学年の段階でかなり思い通りにできるようになっているはずだ。ましてや成人した大半の人々にとっては、文字を書くことは無意識の行為となって、それ自体に意識を向けることはほぼ無いであろう。しかしながら、いざ利き手とは逆の手で文字を書いてみると、愕然とするのである。全然書けないのだ。一気に小学校低学年の自分に戻るのだ。もう笑ってしまうのである。頭は大人、体は子供、状態である。笑うしかないのだ。簡単に常識が崩れ去るのだ。こんなこと、あまり無いのである。なんの痛みを伴わずに常識が崩れることってあまりない。そういうことが、左手で文字を書くと起きるのだ。

 そして、全然かけないままに文字を書いていくと、次に思うのは右手がすごいことを普段やっているということなのだ。文字を書くことが複雑な運動であることを左手を通して頭が理解していくのである。そして、いままで当たり前だと思って右手で文字を書いていた、その積み重ねが急に愛おしく思えてくるのだ。今まで誰からも注目されずに、人知れず凄いことを右手はやっていたのだと感じ、素直に「今までよくがんばってきました」という気持ちが出てくる。これはすごく良いことであると思う。右手を肯定することが、なんだか自分自身を肯定する感じになってくる。生きてるだけですごいことやってるんだね、体は、みたいな感じになってくる。これは単純に心が気持ち良くなるのでオススメ。

 で、全然力が伝わんなくてへらへらした字を左手で書いて、疲れてきたら右手で書いて、また驚愕する。右手で書く文字がうますぎるのである。左手で10分ぐらい書いていると、脳は左手で文字を書くモードに切り替わっているので、右手で書き始めると驚いてしまうのだ。そのときの脳の利き手は左手だからだ。脳内では、「文字を書くのは難しい」という認識で通っている。その認識の上で右手が文字を書き始めると、右手が自分の体でないような錯覚を起こす。これもまたおかしなことなのだが、そんなことがしょっちゅう起こるが、この「左手で文字を書く」なのだ。

 というわけで第二回はこれで終わり。まだ書けそうなので続きます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?