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元関東連合リーダーの石元太一受刑者が再審請求

【2022年2月21日の記事「緊急かつ重大なお知らせとお願い」もあわせてお読みください】

 元関東連合リーダーで、六本木襲撃事件で懲役15年の刑が確定し、服役中の石元太一受刑者(38歳)が、2020年6月23日、東京高裁に再審請求を行った(タイトル画像は、同日、記者会見を開いた石元受刑者の弁護団)。

 石元受刑者は弁護団を通じて、「ついにこの日を迎えることが出来ました。思ってた以上に時間はかかりましたが、それだけやるべきこと、調べることが残されていたということ。前向きに捉えています」などとするコメントを発表した。

 筆者は、2015年7月から石元被告(当時)と文通を始めた。同年8月9日付の石元被告からの手紙には、以下の記述がある。

「被害者の遺族から何を言われ責められても、それらは全て真摯に受け取(ママ)めるつもりでもあります。しかし、証拠の改ざん・隠ぺいまでした上で、臆測・推認だけで罪を形成し片付けられる事だけは到底納得する事も出来なければ、憤りすら感じます。私には何年、何十年でも闘い続ける覚悟があるので、寺澤さんからのアドバイス通り、根気強くあきらめずに主張し続けていきたいと思います」

 当時、石元被告は上告中。筆者は「最高裁で事実審理を行うことはまれなので、再審請求を視野に入れておいたほうがいい」とアドバイスしていた。

 実際、2016年6月15日に最高裁第1小法廷(櫻井龍子裁判長)は「刑事訴訟法の上告理由(憲法違反など)に当たらない」として上告を棄却。その4年後に今次の再審請求が行われたわけだ。

石元受刑者と事件とのかかわり

 六本木襲撃事件は、2012年9月2日午前3時40分すぎ、見立真一容疑者(41歳。指名手配中)ら元関東連合メンバーなど9人が、六本木のロアビルのクラブ「フラワー」に侵入し、金属バットなどで男性客(当時31歳)を殴打して死亡させたというもの。しかし、男性客は見立容疑者らと対立するAと人違いで襲撃されたのであった。

指名手配(見立 真一)

 石元氏は、2013年1月10日に凶器準備集合の疑いで逮捕された。さらに、1月31日に凶器準備集合の罪で起訴された直後、建造物侵入と殺人(殺意あり)の疑いで再逮捕される。ただし、2月21日に追起訴されたときは、建造物侵入と傷害致死(殺意なし)の罪だった。

 同年12月9日、東京地裁(鬼澤友直裁判長)で裁判員裁判が始まる。石元被告(当時)の弁護人は次のように述べた。

「石元さんの主張は、(1)傷害致死、建造物侵入につき、実行犯との間で暴行や建造物侵入の共謀がないため、無罪であり、(2)凶器準備集合につき、集合した際に凶器が用意されていたことをまったく知らず、加害の目的もなかったため、無罪というものです」

 そして、石元被告と事件とのかかわりについて、時系列で説明していった(以下、カッコ内は筆者の補足)。

「石元さんは顔が広いこともあり、見立から、A(裁判では実名)の情報が入ったら教えてほしいと言われていました。平成24年(2012年)8月27日ころ、石元さんは、フラワーの店員に、Aの身体的特徴、右足に怪我している、色黒などを伝え、似た人物が来店したら連絡してほしいと伝えました」

「9月2日午前1時27分ころ、フラワーの店員から自宅にいた石元さんのところに電話がありました。その内容は、前に聞いた特徴とよく似ている人が来店しているというものでした。その店員からの電話後、石元さんは見立に電話したものの、つながらなかったため、見立とより親しい百井茂(38歳。実行犯として懲役13年の刑が確定)に電話しました。その際、石元さんは、不確実な情報であることから注意を促すため、百井に対し、『本当に本人かどうかわからないよ』と述べました」

「石元さんから電話があった後、百井はすぐに見立に連絡し、フラワーにAに似た人物が来ていることや、本人か確認させるために誰かフラワーに行かせることを伝えました」

「百井は見に行かせる人物を選んだ後、フラワーの店員と親しい石元さんに電話し、栗原(克一。34歳。実行犯として懲役11年の刑が確定)らを行かせるので、フラワーの店員に伝えてくれと述べました。その電話を受け、石元さんはフラワーの店員に電話し、栗原らが行くので、フラワーに行ったら案内してくれるよう頼みました。その後、石元さんと百井は、栗原らがいる場所やいつ着くかについて何度かやりとりし、石元さんはそれをフラワーの店員に伝えました」

「午前3時ころ、石元さんは、自分が予約した友人の誕生日会の2次会に向かうために、タクシーを呼びました。六本木ヒルズから芋洗坂を通って、六本木交差点付近の2次会に向かおうと思い、乗車してすぐに目的地を『六本木ヒルズ』と告げました」

「そのタクシーの中で2次会に参加しているB(裁判では実名)に電話したところ、百井がそこにいないことを聞きました。そこで、Bに百井の居場所を聞いたところ、フラワーの横に行っており、見立もそこにいることを聞きました。先輩である見立がフラワーの横に来ていることがわかり、見立に挨拶するため、石元さんは、急遽、目的地を変更して、鳥居坂のフラワーの横に向かいました」

「午前3時15分ころ、石元さんがタクシーから降車したところ、フラワーの横にキャデラック、黒色アルファード、シルバーのアルファードの車両が3台並んでいました。石元さんが、黒色アルファードに近づいたところ、百井から、前のキャデラックに見立がいることを教えられました。そこで、すぐにキャデラックに乗り込み、見立に挨拶しました。キャデラックに乗車後、石元さんは、見立から、金城(勇志。38歳。実行犯ではなく、凶器準備集合の罪のみで、懲役1年6月、執行猶予4年の刑が確定)が見に行ったものの、暗くてAかどうかわからなかったことを聞きました」

「キャデラック内で、フラワー店内に入ってAらしき客を連れ出すという話になった際、石元さんはそれにかかわることはしたくないと思い、見立に対し、『自分はメディアに出ているし、今後、芸能活動をやっていきたいので、かかわるのは勘弁してください』と頼みました。それに対し、見立は了承し、『この車で帰っていいよ』とキャデラックで現場を去ることの了承もしてくれました」

「その後、石元さんは、見立から、『あ、もっかい(もう1回)電話だけしてみてくんない?』と言われました。石元さんは、1人だけかかわらないことを許してもらえた負い目もあって、午前3時37分ころ、見立に言われるままフラワーの店員に電話し、これからその客を店の外に連れ出してよいかと連絡しました。しかし、フラワーの店員から『それは困る』と断られ、その内容を見立に伝えました。店員の意向を伝えたものの、午前3時40分ころ、結局、見立と國田(正春。42歳。実行犯として、懲役10年の刑が確定)がキャデラックを出て、フラワーに向かうことになりました」

「その後、見立や國田がキャデラックを降車してから、マグライトやバットを持った百井らがキャデラックの脇の歩道を通ってフラワーに向かいました(キャデラック内に凶器はなかった)。しかし、石元さんは、芸能活動に反対していた先輩の小池(幹士。42歳。実行犯として、懲役8年の刑が確定)に1人残っていることが見つかったら、小池が見立をあおり、自分も参加させられてしまうと心配しました。そこで、小池に見つかることを恐れる気持ちから、後ろに反り返って外から人影が見えないよう隠れました。石元さんは、運転手の東江(力也。31歳。実行犯ではなく、凶器準備集合の罪のみで、懲役1年6月、執行猶予4年の刑が確定)に『みんなもう行ったか』と確認した後、すぐに車を発進させ、その場を離れました。石元さんはそのまま当初の目的地であった知人の誕生日会の2次会の場所に向かい、その後、自宅に戻っています」

「以上の経緯で述べたように、午前3時40分までの時点において、あくまでもAかどうか確認するために連れ出すという話が出ただけであり、連れ出して暴行するという話は一切ありませんでした。大勢の人がいる店内で、ましてや人違いなのに暴行するなど想像できるはずもありません」

東京地裁は求刑の半分の判決

 一方、検察官は、2013年12月16日、「(被告人は)自らの目的達成のため、百井らを利用。見立を焚きつけ、百井らを操り、もっとも事件発生に影響を与えた張本人」と結論づけて、石元被告に懲役22年を求刑する。

 12月19日、東京地裁は石元被告に懲役11年の判決を言い渡した。その理由は以下のとおり。

「(見立容疑者らが)目標としている人物がAであること、これまでの関東連合とAグループとの抗争の歴史などから、被告人は、こうしたロアビル東側路上に集合した者らは金属バットなど何らかの凶器を準備していることは推測していたと認められる」

「その後被告人はキャデラック内で見立がフラワー店内に入ってAらしき人物を連れ出すと決めたことを聞いた。この段階で、被告人は、これまでのAグループとの抗争状況、Aらしき人物が複数でフラワーに来店していること、ロアビル東側路上には百井ら複数のメンバーが集まっていたことから、見立が、集団で暴力をふるってでもAらしき人物を連れ出そうとしていることを知った。そして、被告人は、見立の指示を受け、午前3時37分ころ、フラワー従業員に電話をかけ、Aらしき人物を連れ出したい旨伝えた」

「午前3時40分ころ、見立の合図をきっかけに実行犯らが続々と車から降り、それぞれ金属バット等の凶器を持ってフラワー店内に向かったが、被告人が乗車していたキャデラックは、実行犯がフラワー店内に向かった後もしばらく同所で待機しており、被告人は、実行犯らがフラワー店内に向かう様子を目撃していたと認められる」

「上記事実関係によれば、被告人が共謀関係に入っていたことは明らかであって、被告人が店内に入らなかったという事情は共謀の成立を妨げるものではない」

「他方、検察官は、被告人の果たした役割について、『自らの目的達成のため、百井らを利用。見立を焚きつけ、百井らを操り、もっとも事件発生に影響を与えた張本人』であると指弾するが、当裁判所は、被告人の果たした役割をそこまでの黒幕と位置づけることはできない」

「見立は被告人にロアビル横に来るように伝えてもいない。被告人が見立及び百井がロアビル横にいることを知ったのはタクシーで自宅を出て、タクシー内でBと会話をして知ったのが初めてである。そして、キャデラック内で見立がフラワー店内に入ってAらしき人物を連れ出すと言った際に、被告人がこれに参加しないことを見立があっさり許可しているという事実も考慮して考えると、見立としては、この段階で、同期である小池、國田に加え、百井を筆頭とするグループによりAらしき人物に対して行動を起こすことを考えており、被告人に対しては、フラワー従業員との連絡以上のことを期待していなかった、と考えるのが自然である。そうすると、本件の首謀者はあくまで見立であり、犯行に向けた人集めや変装用具の準備といった具体的な行動は、見立及び見立の指示を受けた百井が中心となって行っていたものであり、被告人の関与が積極的とはいっても、検察官が主張するように被告人が見立及び百井の背後を操っているとまで評価するのは言い過ぎである」

「本件は、被害者と同席していた人物が実行犯らの方向に歩いてきたのを、見立が殴ったことをきっかけとして、百井らが被害者を本当にAであると思い込み、同人に集中的かつ強度の暴行を加えて死亡させたもので、いわば突発的出来事をきっかけに怒濤のように実行した事件である。しかし、被告人自身はこの状況を目の当たりにして、現場で協力しているわけではない。被告人は、たしかに、Aらしき人物に対し、金属バット等を利用した暴行事件に発展する可能性は考えていたとは認められるが、本件のように、突発的にこれほどまで過激な死亡事件が起こると具体的に予測していたとは認められない。したがって、被告人の行為はそれなりに重要であるものの、現実に被害者に対して暴行に及んだ共犯者を超える責任があるとは認められない」

 この判決に対して、石元被告は改めて無罪、検察官は量刑不当を主張して控訴した。

実行犯より重い判決が確定

 2014年12月18日、東京高裁(河合健司裁判長)は原判決(東京地裁の懲役11年の判決)を破棄し、石元被告に懲役15年の判決を言い渡した。その理由は以下のとおり。

「原判決の認定判断は、関係各所の防犯カメラに録画されたビデオ映像等から明らかな本件の外形的な事実経過や、客観的な通話履歴によって裏付けられている関係者間の電話連絡状況等を踏まえた合理的なものであり、関係者らの供述を含めた全ての証拠に照らしてみても、正当として是認できる」

「関係証拠によれば、見立に率いられた百井やその後輩ら実働部隊は、あらかじめ服をジャージに着替え、靴を運動靴に履き替え、目出し帽で覆面するなどの準備をした上、凶器の金属バット等を携行してフラワー店内に侵入するや、見立が被害者の同伴者を殴打したのを契機として被害者の頭部、顔面等を凶器の金属バット等で多数回殴打するなどの暴行を加え、短時間のうちに襲撃を終えると、店内に侵入した9名全員で速やかに店外に逃走し、付近の路上で待機していた自動車2台に分乗して同所を走り去ったことなどが認められるのである。原判決が説示するように、被害者に対し集団で暴行に及んだ百井らの行動が突発的出来事をきっかけとしたものであるとして、本件における偶発的要素を過度に重視するのは、本件の計画性を不当に軽視する不合理なもので、その評価、判断には誤りがあるというほかない」

「原判決は、被告人が建造物侵入、傷害致死の実行行為に加わっていないことを過度に重視し、本件の組織性、計画性やその中で被告人が果たした役割の重要性を不当に軽視していることがうかがわれるところである。むしろ、被告人が、自らタクシーで集合場所に赴いて見立らと合流し、集合場所に停車中の自動車内に20分間以上留まり、その間、フラワー従業員に電話をかけて被害者を連れ出す旨伝えていること、自らはフラワー店内に行くことを嫌がり、その旨見立の了解を得ていること、そして、見立が百井らを率いてロアビルに向かうのを見届けた上で同所を後にしていることなど、証拠上明らかな一連の経過等に照らせば、被告人は、見立と意思を相通じて、本件の襲撃行為を遂行するのを見立らに委ねたものとみるのが合理的である」

「以上検討したところによれば、被告人を懲役11年に処した原判決の量刑は、被告人が本件各犯行の中でも特に建造物侵入、傷害致死の共謀共同正犯として負うべき責任の重さについての評価、判断を誤った結果、共犯者との刑の均衡を著しく欠いた、軽きに失する刑を量定したものといわざるを得ないから、原判決は、量刑不当により破棄を免れない」

 当時、実行犯らは懲役8年から懲役13年の刑が確定していた。その誰よりも重い判決を石元被告は言い渡されたわけだ。石元被告の憤まんやるかたない気持ちは、2015年11月6日付の筆者宛の手紙からもうかがえる。

「見立世代のいざこざに、周囲まで巻き込んでやっている」

 そして、前述のように、2016年6月15日、最高裁は石元被告の上告を棄却し、懲役15年の刑が確定した。

検察官の証拠隠し

 石元受刑者の弁護団は再審請求書の冒頭で「検察官の不当な意図が背景にあった」と指摘する。

「本件は、検察官が請求人を『首謀者』に仕立てあげた事案である。一審判決も認定するとおり、本件の『首謀者はあくまで見立』であるが、検察官は、見立を逮捕、検挙できなかったことから、見立にかわって請求人を『首謀者』に仕立てあげたのが本件である。すなわち、本件は広く報道されて社会の注目を集めた事案であり、首謀者である見立が海外逃亡したといわれるなか、検察官は、本件事件の責任を負う者として社会的注目に見合うだけの見立のかわりを求めていた。その中で『関東連合元リーダー』として、芸能活動を開始し、社会的に最も目立っていた請求人が目をつけられたのである。従って、検察官にとって、請求人を有罪とすることのみならず、請求人を『首謀者』とした重い判決の言渡しを得ることが至上の課題であった」

 再審請求には、新証拠が必要だ。弁護団は、石元受刑者の知人の陳述書を提出している。それによると、事件後、石元受刑者に電話すると、「(友人の誕生日会の2次会から)タクシー乗って、今、家帰っているところです。現場にも行っていないし、事件にも関係していないので大丈夫です。もともとロアビルに行くつもりはなかったが、見立君に挨拶するために行った。でもフラワーには行っていない。かかわらないでよかった」などと話していたという。

 これに関連して、弁護団は検察官に証拠の開示を求めている。再審請求書から引用する。

「請求人が帰宅するために乗車したタクシーを捉えた防犯カメラの映像と当該タクシーの車内の様子を撮影したドライブレコーダーについては、請求人の主張が真実であることを証明する重要な客観証拠であるにもかかわらず、検察官から証拠開示がなされていない(請求人の行きのタクシーのドライブレコーダーは押収されており、検察官の請求証拠として法廷に提出されている)。検察官がこれらの証拠を開示しない理由は、請求人を『首謀者』に仕立てあげ、重く処罰するためには、これらの証拠の存在が不都合であったからとしか考えられず、上記のような検察官の不当な意図に基づく証拠の隠蔽は、適正手続きに著しく反するものであって、到底容認できない。そこで、弁護人はこのドライブレコーダーの開示を強く求めるものであって、関連する証拠と共に、別途証拠開示請求を行う」

 弁護団の記者会見で、筆者は「見立容疑者が真実を明かす陳述書を提出すれば、新証拠として有力ではないか」と質問した。しかし、弁護団は「見立容疑者とは連絡がとれない」と答えた。

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