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フリーランスが質問できない横浜市長の記者会見

 2021年8月8日、横浜市長選挙が告示され、過去最多の8人が立候補した。8月22日、投開票が行われる。

 横浜市長選挙は、IR(カジノを含む統合型リゾート)誘致や新型コロナウイルス対策が争点となっているうえ、衆議院神奈川県第2区(横浜市西区、南区、港南区)を選挙区とする菅義偉首相のお膝元の選挙であり、全国的な関心事だ。

 選挙後、新市長の就任記者会見には、地元の記者以外も参加を希望するであろう。

 ところが、従前、横浜市長の記者会見では、「横浜市政記者会」(記者クラブ)加盟の新聞社やテレビ局などの記者しか質問できない。フリーランスや雑誌記者などには、「傍聴」が許可されるのみなのだ。

 その理由を取材するため、8月10日、私は横浜市役所(画像)へ出向いた。

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 政策局秘書課報道担当の部屋は9階にある。エレベーターで9階へ行くと、受付電話が設置されており、「ご用件のある部署へお電話ください」との指示があった。9階には政策局の各課や市民局の広報課、広聴相談課が入り、市政記者室(記者クラブ)と記者会見室が置かれている。

 報道担当へ電話して用件を伝えると、その場で待つよう言われた。まもなく男性が現れ、9階の共用会議室へ案内した。

 私が名刺を差し出すと、男性は「名刺を持っていない」と言った。フリーランスは公務員から軽く見られているので、名刺をもらえないことがよくある。いつもなら、「名刺は交換するものなので」と言い、自分の名刺をしまうのだが、本稿の執筆と今後の連絡のため、相手の名刺があったほうが便利なので、「持ってきてください」と言った。男性は共用会議室から出ていった。

 男性が戻ると、名刺交換。男性は大嶌裕介(おおしま・ゆうすけ)報道担当係長だった。

 私が「横浜市長の記者会見でフリーランスが質問できない理由は?」と尋ねると、大嶌係長は「理由…。なんでしょう…」と言葉に詰まった。

 そこで、私が「フリーランスは質問できないと規定する文書が見たい」と言うと、大嶌係長は「そういう文書は見たことがない」と答えた。

 さらに、私が「ここで待っているので、理由を調べてきてほしい」と要求すると、大嶌係長は「今日は上司が休みで…」と時間を稼ごうとした。そうは問屋がおろさないので、私は「古参職員に聞くなりして、調べてきてください」と重ねて要求し、大嶌係長は共用会議室から出ていった。

 私が共用会議室近くの自動販売機でミネラルウォーターを購入して飲みながら待っていると、大嶌係長は1人の男性を連れて戻ってきた。名刺交換すると、男性は山下和宏報道担当課長、つまり、大嶌係長の上司だった。

 フリーランスは公務員から軽く見られているので、居留守を使われることがよくある。それがバレたとき、私はいつもニヤニヤするだけなので、今回もそうした。

 山下課長は「記者会見の時間が限られているので、横浜市政記者会の記者に限って質問してもらっている」と言った。

 私が「時間に余裕があるときや横浜市政記者会の記者から質問がないときは、フリーランスが質問してもかまわないのではないか」と尋ねると、山下課長は「スムーズに記者会見を行うため、こういうルールで行っている」と答えた。

 しかし、私が「そのルールの文書が見たい」と言うと、山下課長は「文書はない」と言った。

 以上が、横浜市長の記者会見でフリーランスが質問できない理由を取材した顛末だ。読者は、横浜市民は、横浜市長選挙の候補者8人は納得できたであろうか。

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