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GO!GO!フランケンファイブ【完全版】その①

【登場人物】

〈九重 真(ここのえ まこと)〉

街中のお店の様々な仕事を掛け持ちする器用貧乏な青年。

〈九重 小鳥(ここのえ ことり)〉

人気スカイアクションゲーム『エースインザスカイ』無敗の高校生プロゲーマー。

〈観月 天馬(みづき てんま)〉

アメリカ訛りの日本語で話しかけてくる生粋の日本人かつソムリエ。

〈中島 二十重(なかじま はたえ)〉

天馬がソムリエを務めるBARのオーナー。そして、街でも評判の占い師。

〈天野 或萬(あまの あるばん)〉

発明や書きかけのメモがうっかり世に出れば世界の常識をも覆えしてしまう天才。

〈稲葉 慶太(いなば けいた)〉

難波にある大学病院で勤務する医者。連続失神事件による被害者の対応している。

〈リンネ〉

真の前に現れた自称幽霊の少女。コロコロ動くし、コロコロ態度も変わるし、コロコロ記憶も曖昧になる。


【あらすじ】

2021年 夏、大阪難波。

街中のお店のさまざまな仕事を掛け持ちしている青年、九重 真は、

唯一の家族である妹、九重 小鳥との生活費の為、日々街を駆け巡っていた。

今、街では『ハーメルンの再来』と呼ばれる都市伝説と

「少年少女が突然意識を失う」という連続失神事件が人々を騒がせている。

ある日、真の前に一人の少女が現れる。

「君の知る隣人に、街を脅かす犯人が潜んでいる…たぶん!」

自称幽霊、リンネとの出会いをきっかけに物語は始まる…。

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▲一幕一場 プロローグ

『12年前、どこかの病院にて…』

〇リンネの中で唯一、ハッキリと``自分の想い出``だと理解している記憶。

 でも、会話の相手が誰なのかは覚えていない。

リンネ「私がホームズで、あなたがずっとワトソンね」

〇それは、顔も姿も思い出せない大切な誰かとの会話。

天馬「僕にワトソン役は荷が重たいよ」

リンネ「えー」

天馬「じゃあ、明日から学校も、街中も、世界もぐるっと探してピッタリのワトソンを見つけてみたら?」

リンネ「でもダメだったらー」

天馬「僕がワトソンになってもいいよ。その時は、僕を探しに来てね」

…ノイズが走る。

〇誰かが言い争っている…。デバイスの中にある彼の記憶。

或萬「困ったとき、面倒なとき、出前を注文したいとき、こいつを使ってくれ」

〇或萬はデバイスを渡そうとするが、天馬は頑なに受け取ろうとしない。

むしろ、彼の娘、リンネをないがしろにしてた、この行動に感情をあらわにしている。

天馬「そうじゃないだろ!あの子は…リンネはどうなるんだよ」

〇これが、この二人が初めての喧嘩した時の記録の一つ。

或萬「大丈夫だ。あの子はいつもそばにいる。またいずれ探しに来るだろう」

…また、ノイズが走る。

▲一幕二場 大阪 難波

『2021年 夏 大阪難波』

〇人だかりが絶えないこの街を日々誰よりも駆け巡る青年がいた。
彼の名前は、九重 真。妹である、九重 小鳥との生活の為、汗水流し生活費を稼ぐ。

早朝から真に電話を掛かる。元気かつ訛りの強い声の主は、街にあるBARのソムリエ、観月 天馬。

天 馬「おはようございマーーーース。今日も朝から元気にお仕事がんばりまショォー」

〇九重兄弟が住むアパート。真は仕事に出る前に準備体操を行う。 彼の片耳にはBluetoothイヤホンが装着されている。

天 馬「まず、6時からマッキー電気の在庫整理。だったねー」

ニュースキャスター「先週から中央区難波にて発生しています連続失神事件ですが。ネットを中心に『ハーメルンの再来』と呼ばれる都市伝説が注目を集めています」

真  「小鳥。ご飯、冷蔵庫にしまってるから。食べたら洗っておくんだぞ。あと、水分取るのも忘れないようにね」

小 鳥「分かってる!」

〇真は仕事のために街に出る。

〇小鳥は真が外に出たことを確認し、ヘッドホンを装着して家を出る。

〇視点は真に戻り、天馬との通話。

天 馬「そういえば小鳥ちゃん。最近ゲームの大会で日本代表に選ばれたんだって?
    でもさ、世界大会の渡航費の為に生活費削るのはよくなよ。仕事終わったらでいいから相談しにきてねー」

〇稲葉慶太からの着信。

慶 太「起きてるか真。今日の15時から私のラボに来ることを忘れてないだろうな。
    ようやく論文がまとめられそうなんだ。それじゃ、15時に私のラボで会おう。マイ、ワトスン」

〇気づけばもうお昼。BARに荷物を届けにやってくる真。

〇BARにはオーナーで占い師、中島 二十重がいた。

…ノイズが走る。

真  「ん?」

〇真のイヤホンにノイズが走った。

二十重「やぁ、真君。今日もご苦労様。その荷物はそこに置いといてくれ

真  「はい!」

二十重「おや、そのメガネ…昔どこかで」

〇真がかけている青い眼鏡が気になる二十重。

真  「これですか。使わないからってこの間、博士から…」

二十重「そうか!昔、或萬がかけていたメガネだ」

真  「そうなんですか」

二十重「ま、その博士に節度ある研究を心がけるよう、伝えておいてくれ」

〇午前で全ての仕事が終える。

『おおよそ、12時頃』

〇博士に呼び出されたラボへ向かう道中…。真の前に突然少女が現れる。

リンネ「私は幽霊だ!…たぶん!!」

真  「……え」

リンネ「君があの人が言ってたワトソン。そうでしょ」

真  「違うよ」

リンネ「君がワトソン君なら、必然、私がホームズ。探偵さ」

真  「探偵…?」

リンネ「みんなは、私をリンネと呼ぶけどね」

真  「じゃあ、リンネじゃん!」

リンネ「見た目は常識人という点でワトソンと共通しているな。でも、君が知識人であるかは別だ…たぶん」

真  「さっきから曖昧なんだよな…」

〇ふと今気づいた、彼女の服装は病院の患者衣そのものだというこに。

真  「その服…君、体は大丈夫なの!?」

リンネ「いたって健康だ!たぶん…」

真  「たぶんかい!」

リンネ「ホームズは読んだことある?」

真  「まぁ、子供の頃にちょっとは…」

リンネ「じゃあ、知識人にカウントしてもいいかな?」

真  「自分で決めなよ。いやしなくていい!!」

リンネ「というわけで君がワトソン君だ!」

真  「だから…」

〇刹那、彼らの目の前で破裂音と共に二人の目の前で一瞬の閃光。目を開けていられない程強い光が二人を包む。

真  「今の、何…」

リンネ「…」

真  「えっ…」


〇真の目の前に、人が倒れている。

真  「!! 大丈夫ですか!…救急車」

〇携帯を取り出し、救急に電話をける真。

真  「君は大丈夫!?」

…ノイズが走る。

真  「こんな時に!?」

リンネ「早く止めないと…」

真  「今、何か言った?」


…ノイズが鳴りやむ。

〇リンネの指し示す先にはVRゴーグル。
〇真がVRゴーグルを恐る恐る手にする。

リンネ「君の知る隣人に、街を脅かす犯人が潜んでいる……たぶん!!!」

〇二人の出会い、事件との遭遇により物語は大きく前に進み始める!


▲一幕三場

BAR。オーナーは中島二十重。ソムリエを務めるのはアメリカで単身武者修行にも挑んだ、観月天馬。 

『14時半頃』

二十重「なるほど、ⅤRゴーグルか。やはり『ハーメルンの再来』と似ているな」 

リンネ「ハーメルンの再来?」

真  「噂で名前だけは聞いたことはあります」

リンネ「えー。それでもワトソン君なの?」


二十重「元々はオカルトマニアの間で有名な都市伝説でね。ホラーゲーム好きが集まる、とある掲示板サイトに、『ハーメルンの再来』という面白そうなゲームを手に入れたからやってみないか。というスレッドが立てられた。なんでも個人制作らしく、マルチプレイで遊ぶVRのホラーな脱出ゲーム。スレッドの投稿主を中心に数人が集まりゲームをプレイしたのだが、全員、現実とゲームの境が分からなくなる。という感想を書き残して、掲示板に現れなくなってしまった。数日後、路上でVRゴーグルをつけて餓死した遺体が発見されたとか、されなかったとか…」

真  「…」

二十重「更にこのゲームの制作者は自殺で亡くなっていることから、幽霊の呪いだとも言われている」

リンネ「中々…面白そうな…話ね」

真  「詳しくご存じなんですね」

二十重「これも仕事の内だからね。じゃ、私はやることがあるので失礼するよ。気が紛れるまでゆっくり、くつろぐといい」

〇二十重は店の外にへと出て行く。

リンネ「あの人の仕事って何なの?」

真  「占い師。最近、テレビ出演のオファーも届いたんだよ」

リンネ「へー」


真  「君の姿って僕以外に見えてないんだね」

リンネ「今の所、真だけだね見えてるのは」

真  「本当に幽霊なんだ」

リンネ「実は妖精かも…」

真  「頭でも打ったのか」

リンネ「幽霊は信じて妖精は信じないっておかしくない!」

真  「……。じゃあホントに…」

リンネ「ははは。ホント何言ってんの。私は幽霊でーす!あ、これ何?」

〇店の中でひときは異色な銀色の物体を指さすリンネ。

真  「急だな…。それは昔、或萬博士が作った無線通信のデバイスだよ」

リンネ「これが!?」


〇見た目は古代の遺跡から出土した感じのデザイン。形状に似つかわしい銀色。これをデバイスと思うほうがおかしい。

〇天馬が慌ただしく真達のまえに現れる。

天 馬「なーに勝手に触ってるんデスか!」

真  「天馬さん」

天 馬「電話のノイズが酷いんデス。真君、触らないで下サイ」

真  「何もしてませんよ」


天 馬「ソーですか。ついさっきからお店の通信が使い物にナラナクなりました。こいつの寿命カモネ。メイビー。20年モノだからショーがないけど、悲しいねー」

リンネ「…喋り方ウザくない」

真  「こういう人だから」

リンネ「この人、帰国子女とかなの」

真  「日本人だよ」 

リンネ「は」

真  「確か、15年前のソムリエ留学で染みついた英語訛りが抜けない、だっけ」

天 馬「違いマース。昔、交換留学生とよくアメコミについて語り合っていたら自然とこうなりました」


真  「こういう感じで、毎回違う理由を喋るんだ。他にもアメリカ人の友達と魂が共鳴した説とか、やむを得なく魔法少女に変身した時の後遺症説とか」

リンネ「サイコパス」

天 馬「今はそんな事はいいんです!」

真  「また、博士に修理を頼むのはどうですか」

天 馬「はー、そーやすやすと渡して、変な改造されて返されたあの夏の悲しみを忘れてしまったんですか、真クンは」


真  「今でも通用するスペックに改良してもらっただけですよ」

天 馬「それヨリ。朝、電話で話しましたヨネ。君の妹の小鳥ちゃんの件。デ、どうするのヨサ」


真  「…。どうするも何も、世界大会に出場するのが小鳥の夢です。
    それを叶えるんだったら、僕の生活費ぐらい削ったていいです」


〇堂々と宣言する真。その言動には嘘の欠片もない。

天 馬「ボンビーな癖に頑固なのほんとメンドクセ。そんな事だろうと思って、一つ提案をもって来ました」

真  「提案ですか?」

天 馬「ここに小切手が一枚」

〇天馬、ズボンポケットから小切手を取り出す。リンネが覗き込む。

リンネ「30万円!!」

真  「へ、30万円!?」


天 馬「どうして分かったんですか。真君もついに金の亡者に」

真  「あ…。う、裏から見えてましたよ」


天 馬「言い訳無用です!! ……(チラッ)あ、ホントだ」

〇真、小切手を取ろうとする。

天 馬「働かざる者食うべからず!」


真  「もしかして仕事の依頼ですか?」

天 馬「うるさいわい。話の主導権は私が握ってるんじゃい。アンダスタンドゥ?」

リンネ「殴っていい?いいよね?」


天 馬「心の準備はおけ?「ハーメルンの再来」だとと噂されている連続失神事件を、調べてくれーです」

真  「はい!?」

リンネ「お、来ました!」


天 馬「巷では、やれ組織の実験だの超能力だの、果てには心霊現象だと噂されています。そこで、この都市伝説と連続失神事件の関係を調べて欲しいんです」

真  「そういうのは二十重さんの仕事…」

天 馬「今は、君が一番暇なんです」

真  「お断りします」


リンネ「えー」

天 馬「えー」

真  「僕だって暇じゃないんです。それと、そのお金どこから出てきたんですか」


天 馬「ソムリエコンクールで優勝した時の賞金がまだ残っているんデースけどナニカ~」

真  「今日もこれから用事があるので行きますね」

〇席を立ち、BARを去ろうと真は動き出す。

リンネ「逆に、逆に、気にならない!?」

天 馬「ホ、ホントはこの店、いや街中の店が営業できなくなる危機が迫っているんです」

真  「!どういうことですか」

天 馬「ついさっき組合長さんから電話で、これ以上、都市伝説の現象が続くなら、街中の店全てをを営業停止にすると言い出したんです。『ニーハオ、ミスター天馬。元気シテタ―?』」

真  「そういうのいらないので、手短にして下さい」


天 馬「…。ケッ。一番に私のお店にかけてきて、他の店舗にも連絡を回すようにとお願いされました。その後から、急にお店の通信がおかしくなったんです」

真  「ん?ホントに一番にかかってきたんですか?」

天 馬「ほんとです!『信頼するユーの店ダカラ♪』って」


真  「それ、おかしくないですか。この街の組合の加盟店は223店舗あります。天馬さんのBARの売り上げですが、先月は10万円。全体から見れば、一番下。二十重さんに補填して貰って、やっとギリギリ営業できている状態です。この経営状態で、真っ先に天馬さんへ電話がかかってくることも、信頼している店というのもおかしいですよね」

天 馬「ほんと…ほんとなんです。私達は、お互いに信頼して…」

真  「組合長の名前覚えてますか?」

天 馬「…チョモランマ・小林…」

リンネ「プロレスラーか!」


真  「違います。キリマンジャロ・シェンイ―です」

天 馬「アー、山違いか」

リンネ「本当に中国人だった!!」


天 馬「真君。悔しいけど、君に頼んでザッツライト」

真  「僕受けるとは…」

天 馬「ショーマストゴーオン!!」

リンネ「君の知る隣人に、街を脅かす犯人が潜んでいる…たぶん…タブン…タブン…」

真  「…」

〇真は痛い子を見る目でリンネを見る。

リンネ「じゃあなに?金額に不満があるの?」

真  「お金じゃないよ」

天 馬「金の亡者め。もうちょっと報酬を上げられるか相談してくるネー」


〇自分の銀行残高を確認しに出てゆく天馬。

リンネ「ねぇ、君の大事な人も巻き込まれるかもしれないんだよ!」

真  「でも…」


〇過去回想。大事な人…。その言葉で母親を失った記憶が過ぎる。

母声   「小鳥をお願いね…」

〇心拍音…そして、心停止を知らせる心電図のコール音がコダマする。

〇突然、ニュースキャスターの声が流れ始め、意識が現実に戻った真。

ニュースキャスター「本日12時頃、中央区難波にて、20代男性が突然、意識不明に陥り病院に搬送されました。同様の事件が一週間から多発しています」

〇今、BARには真とリンネだけであり、当然、真はリモコンには触れていない。リンネは移動さえしていない…

真  「テレビ、君が付けたの!?」

リンネ「うん」


真  「幽霊って便利なんだね…」

ニュースキャスター「さて、稲葉慶太医師の論文と天野或萬氏の論文とでは、内容が少し異なっているみたいですね」


真  「博士の論文だ」

大学の偉い人「はい。通称、或萬論文の場合、思春期から青年期にかけてが被害に遭いやすい傾向にあるそうです」


真  「思春期から青年期って、小鳥も!?」

リンネ「どうする?」

真  「…分かった。この仕事受けるよ。これ以上、犠牲者も出したくないからね」


リンネ「よし!!これでコンビも一歩前進だなワトソン君!!」

真  「…。一度、小鳥に電話してみるか」

〇万が一…と心配な真は小鳥に電話をかける。

電話小鳥「何、真…」

真  「ふぅ…。あぁいや、起きたかなって」

電話小鳥「もう起きてるから…用がないなら切るよ」

〇通話が切れると同時に二十重が帰ってくる。

二十重「重度のシスコンだな…」

リンネ「あれ?さっきのウザい人が電話のノイズが酷いんです!って言ってなかった?」

真  「そういえば、今の電話はちゃんと聞こえてた」

〇真な電話がかかってくる。

真  「ハイ、真で…」

電話慶太「真君、今何時だと思ってる」

真  「(スマホの時計で確認する)あっ…」

慶 太「あっ、じゃない。仕事は早目に切り上げろといっただろ。急いで来るんだ!!」

〇通話が切れる。そして、真は閃いた。

真  「そうだ!博士にデバイスをみてもらおう。二十重さんお借りします!」

〇真はデバイスをかっさらいBARを後にする。

リンネ「お借りします!」

〇リンネも真の後を追う。

…ノイズが走る。

二十重「頼んだよ。真君」

〇入れ違いで天馬が帰ってくる。

天 馬「お財布と相談してきたよ。31、31万でどうでしょ。あれ、誰もいない…デバイスもない…」

二十重「はぁ…」

その②へ続く…

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