比較社会のなかで自分らしく生きるために

新卒で入社した人材の会社は比較の連続だった。まず入社の段階で学歴や面接の出来からランクがつけられ、全体の研修では何を基準にかわからないが、様々なランク付けをされ配属が決まり、部門の研修ではテレアポ数や訪問数がカウントされるようになった。部門に配属されたあとは毎月営業成績で順位が付けられ、営業成績が悪い人間は「最近入った新人よりも無能だ」とか「うだつが上がらない」など直接や陰で言われていた。
一方で営業成績上位の人は表彰され、「仕事ができる」とおだてられ、まるで他の人達とは人間のランク自体が異なるように接されることも多々あった。中には成績の低い人に対してパワハラのようなことをする人たちもいた。比較と競争が促進され、そのなかで生まれる格差を待遇の違いが人から自尊心を奪い、逆に傲慢さを与える。

これはひとつの会社の事例だけれど、転職した先のベンチャー企業でも、また思い返すと学生時代の部活や塾、大学のなかにも同じような場面があり、社会のなかでこのような比較による人間性が失われる状況が多く存在している。そんななかでどうやって自分らしく生きるのだろう。比較され、できるできないで評価され、そういう自己認識をする。他者の評価に依存する環境で誰が自分らしくいれるのだろうか。

では逆にそんな社会のなかでどうすれば自分らしくいられるのだろう。ぼくが思うにまず自分に対しても他者に対しても「見えない部分があり、その見えない部分全体でその人が構成されている」という前提を持つことだと思う。イギリスの人気オーディション番組Britain Got Tarentで一躍有名になったスーザン・ボイルが初めてのオーディションで年齢を聞かれ、58歳(くらいだった思う)と答えた。オーディエンスは少しシニカルな目を向け、それに気づいた彼女は「It`s one side of me」と答え、堂々と頷くシーンがあった。彼女にとって年齢は一部分であり、誰にとっても見えている部分や一事実はその人のワンサイドでしかない。もちろん自分であっても。その前提を持つことで安易に他者や自分を評価しなくなるんだと思う。

そしてもうひとつ大切なことが自分にとっても他者にとっても比較されにくい自分であることだと思う。具体的には好きなことを増やし、趣味を増やし、話せる言語を増やすなど視点を増やすことに時間を使うこと、また仕事や部活など比較が生じやすいものについては社内外での副業や別の時間を使って複数のことに取り組むことだと思う。自分でも他者においても複数の側面に気づきやすい状況を作ることで、一部分を見た安易な比較を避けることができると思う。




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